骨董と偶像

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小栗虫太郎「方子と末起」

2004-10-30 15:31:21 | 
大野加奈子@現代視覚文化研究会いわく、「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!」

ならば、逆もまた真なり、「レズが嫌いな男子なんかいません!?」

「お姉さま、慕わしい、うつくしいお姉さま。末起は、お姉さまの永遠に、お腰元ですわ」
「末起ちゃん、御免なさいね。あたくしの、可愛くって可愛くって嚥みこんでしまいたいあなたに、あんなことをさせて・・・・・・」

・・・こんな書簡体小説に魅かれるあなたであれば、小栗虫太郎のこの掌編を気に入るのではないか、と思う。分量にして20ページちょっとなので、立ち読みできてしまう。しかし、本当に気に入った人間ならば、この掌編を『小栗虫太郎集』というパッケージごと、わが手の所有に帰したいと思うはずだ。ちなみに『小栗虫太郎集』は本来、怪奇探偵小説名作選のラインナップには入れる予定はなかったらしいが、社会思想社倒産によってテクストの入手が困難な状況になることを危惧した編者日下三蔵によって世に出ることになった。

ふたりが出会ったのは、おきまりの「女学校」。方子が四年生、末起が二年生の時だった。方子はその後、療養所生活に(もちろん高原のサナトリウムに違いない)入り、離れ離れになって手紙を交換する境遇となった。そこにおこった末起の母おゆうの殺害事件。今度は末起の命が危ないとする方子は手紙で危険を知らせるのだが・・・・・・

 それに何故、女が女を愛してはいけないというのだろうか。此処でふたりの少女が、永遠の童貞を誓うのに・・・・・・。
 方子は、口をとがらせ、うっとりと抗議を呟いた。腹んばいの、したからは土壌の息吹きが、起伏が、末起の胸のように乳首に触れる。回春も近い。方子は自分の呼吸にむっと獣臭さを感じた。(ちくま文庫版『小栗虫太郎集6』所収「方子と末起」)

「自分の呼吸にむっと獣臭さを感じた」という部分がたまらなくエロティックである。


怪奇探偵小説名作選 6 小栗虫太郎集(ちくま文庫)
日下三蔵編

出版社 筑摩書房
発売日 2003.05
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  4480038337
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