『里見八犬伝』のドラマ化、小さい頃からのファンであるため、期待したがやっぱり凡作だった。
特に後編がよくなかった。ショッカーのような玉梓の手下どもや、管領軍との冗長な戦いのせいで原作のテイストが損なわれ、前編とのバランスも悪い。とってつけたようなセリフで、登場人物たちにテーマを説明させるよりも、原作のもつ勧善懲悪・因果応報という古臭いパターンにこだわったほうがよかったように思う。
八犬士それぞれのキャスティングまで文句をつけてもしようがないが、八人が勢ぞろいするシーンも格別感慨がない。あれだけの大長編なので、すれちがい、離合集散を繰り返した果ての勢ぞろいというストーリーはたかだか5時間程度のドラマの中におさめることは難しかったようだ。
目をひいたのは、菅野美穂の玉梓。これはよかった。処刑シーンは特に。かつて全国のこどもたちを恐れさせた人形劇の「玉梓が怨霊」以来だろう。スターウォーズがアナキン・スカイウォーカーの物語であったように、全体のつくりも玉梓の物語として受け取られよう。その分、軽くなってしまったのが伏姫の存在である。やはり、姫と犬(八房)との獣婚ははずしてほしくなかった。あれがないだけで、もはや「八犬伝」ではない。
ちょっと気になった原作との主な違い
牡丹の痣・・・原作では伏姫の愛犬八房のからだに散らされたブチ。ドラマでは里見家の紋章に。
浜路姫・・・原作では大塚村の浜路とは別人で里見家の五の姫。ドラマでは里見家の二の姫。
ぬい・・・小文吾の妹だが原作ではドラマ以上に重要な存在(なんせ、ある犬士の産みの親だから)
礼の玉・・・・原作ではもっと悲劇的な化け猫事件。礼の玉はドラマで赤岩一角の頭蓋骨から飛び出したが、原作では犬村大角の許婚者が玉を世に出すきっかけをつくる。
船虫・・・ドラマでは道節のもと家臣姥雪世四郎の娘で、怨霊の罠におちて悪女と化すが、原作では徹頭徹尾、犬士たちを苦しめる悪女。
籠山逸東太・・・珍しい武田鉄矢の悪役。ドラマ同様、原作でもけっこう動き回る。龍山免太夫(籠山・・・の一部を流用している)という名も持つ。
個人的にはずしてほしくなかった原作の場面は、
里見義実が八房に言い含めて安西景連を討つシーン
八房と伏姫の獣婚とその死
犬坂毛野が犬田小文吾を背負って対牛楼から綱渡りで脱出するシーン
犬村大角と雛衣の悲恋
犬江新兵衛の蟇田素藤退治
里見水軍と管領軍の船いくさ
活字で読むのであれば、岩波文庫などの原作本か、コレ。
『南総里見八犬伝』〈第1の物語〉妖刀村雨丸
『南総里見八犬伝』〈2〉五犬士走る
『南総里見八犬伝』〈3〉妖婦三人
『南総里見八犬伝』〈4〉八百比丘尼
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『南総里見八犬伝』 全10冊