骨董と偶像

好きなもの&気になるものリスト

『百年の孤独』

2004-10-25 23:08:45 | 
あれほど文学の閉塞状況にノボ・ムンドを提供したラテンアメリカ文学であるが、今では「百年の孤独」などと言っても焼酎の銘柄という答えがかえってくるケースも一笑にふすことはできないのではあるまいか。

G・ガルシア=マルケスの年代記風の長編小説は、ノーベル文学賞という勲章をひっさげてあらわれた。上のカバーは改訳前のもの。膨大な人名、繰り返しあらわれる同名異人を処理すべく、系図をこしらえながら読んだ方も多いのではないかと思う。先日ひさしぶりにページを繰ったところ、中からレポート用紙にエンピツで書かれた稚拙な「ブエンディーア家系図」が出てきた。

これが改訳新装版となるとそのあたりが親切設計。もはや昔の読者ほどに系図づくりに精を出さなくてもよいようだ。しかし、「かんりにん」は改訳版を読んでいないため、これに対する言及は避ける。

ずいぶん人に薦めた本だが、残念ながら「面白かった!」という反応がかえってきた記憶がない。そういう意味では、「かんりにん」の布教の力は同書の売れ行きにさほど貢献していないはずである。面白いと思った人間は、すでに『百年の孤独』を知っていたからだ。
それは、すでにマルケスが創造した幻の町マコンドの住民登録が済んでいることを示す。
同じくマコンドを舞台にした短編集『ママ・グランデの葬儀』もあわせて読みたいものである。

しばらくぶりでマルケスの名を聞いた。
「G・マルケス氏、海賊版に一矢?=出版直前に最終章書き換え」という配信記事である。

「百年の孤独」などで知られるメキシコ在住のノーベル賞作家、ガルシア・マルケス氏(77)がこのほど10年ぶりに発表した新作「メモリア・デ・ミス・プータス・トリステス」。これは、1950年代を舞台に、コロンビア人の老人が愛の遍歴を述懐する内容で、27日に出版予定だったが、母国コロンビアで印刷所から流出したとみられる海賊版が広く出回ってしまった。
マルケスは対抗措置として、発売日を1週間早め、さらに最終章を書き換えたと発表した。
マルケスはいまだにマコンドに近い土地で、ネオリアリズムの魔法を操っているようだ。


百年の孤独
G・ガルシア=マルケス〔著〕・鼓直訳

出版社 新潮社
発売日 1999.08
価格  ¥ 2,940(¥ 2,800)
ISBN  4105090089
マコンド村の創設から100年、はじめて愛によって生を授かった者が出現したとき、メルキアデスの羊皮紙の謎が解読され、ブエンディア一族の波瀾に満ちた歴史が終わる…。1972年刊の改訳、新装版。 [bk1の内容紹介]

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1