花弁の下唇の紅紫色の斑点が特徴の「カキドオシ」。昔から薬草に使われ、「疳取草(かんとりそう)」とも呼ばれた。カキドオシという名前は、茎が地面を這って垣根も超えるからだという。似た種類の花も多いが、春先にはこうした薄紫の花をよくみかける。
(2021年春 裏高尾)
■高尾の花
「カタクリ」(高尾の花 21-01)
「雪割草」(高尾の花 21-02)
「リュウキンカ」(高尾の花 21-03)
「ショウジョウバカマ」(高尾の花 21-04)
「キクザキイチゲ」(高尾の花 21-05)
「タツタソウ」(高尾の花 21-06)
「キバナセツブンソウ」(高尾の花 21-06)
「ハナネコノメ」(高尾の花 21-07)
「ヨゴレネコノメ」(高尾の花 21-08)
「ムラサキケマン」(高尾の花 21-09)
「アミガサユリ」(高尾の花 21-10)
「ミヤマカタバミ」(高尾の花 21-11)
「タカオスミレ」(高尾の花 21-12)
「ヒトリシズカ」(高尾の花 21-13)
「ナガバノスミレサイシン」(高尾の花 21-14)
「イカリソウ」(高尾の花 21-15)
「セントウソウ」(高尾の花 21-16)
「マルバコンロンソウ」(高尾の花 21-17)
「ニリンソウ」(高尾の花 21-18)
「アマナ」(高尾の花 21-19)
「ヒメリュウキンカ」(高尾の花 21-20)
「ユリワサビ」(高尾の花 21-21)
「キケマン」(高尾の花 21-22)
「ジュウニヒトエ」(高尾の花 21-23)
「トキワイカリソウ」(高尾の花 21-24)
「マルバスミレ」(高尾の花 21-25)
「アカフタチツボスミレ」(高尾の花 21-26)
「ヤブニンジン」(高尾の花 21-27)
「ミミガタテンナンショウ」(高尾の花 21-28)
「クサノオウ」(高尾の花 21-29)
「ヤマエンゴサク」(高尾の花 21-30)
「オドリコソウ」(高尾の花 21-31)
「エイザンスミレ」(高尾の花 21-32)
「ネコノメソウ」(高尾の花 21-33)
「シロヤブケマン」(高尾の花 21-34)
「セリバヒエンソウ」(高尾の花 21-35)
「ツルカノコソウ」(高尾の花 21-36)
「シラユキゲシ」(高尾の花 21-37)
「エビネ」(高尾の花 21-38)
「クワガタソウ」(高尾の花 21-39)
「ヤマブキソウ」(高尾の花 21-40)
「ウワミズザクラ」(高尾の花 21-41)
カキドオシ
Glechoma hederacea var. grandis (シソ科)
カキドオシはヨーロッパ及びアジア原産で、北米を含む世界各地の温帯地方に帰化しており、森の周辺や歩道わきや垣根の周辺に見られます。多年生の蔓性草本で、高さ15 cm程の茎は初め直立し、開花後、長い走出茎は伸びて地面を這い、垣根を通り抜けるほど伸長することから、「垣根通し」と呼ばれ、後に「垣通し」となりました。葉は腎臓形で葉縁に鈍い鋸歯がありますが、これを丸みを帯びた「銭」に見立て、葉が茎に連統してついていることから、別名の連銭草(れんせんそう)の名が付いたそうです。青紫色の花が輪生し、下唇に紅紫色の斑点を生じます。花期の茎や葉の生育が十分となる4~5月に株元から採取し、陰干しにしたものが生薬「連銭草(れんせんそう)」です。
煎液は腎臓病や糖尿病、腎臓結石、膀胱結石、小児の疳に用います。湿疹には濃い煎じ液を患部に塗布します。また、カキドオシには胆汁分泌促進や血糖降下作用があり、胃炎や酸性消化不良などの消化器系疾患にも有効であると言われています。その他、カキドオシは壊血病の予防と強壮薬として用いられ、水虫やたむしには生の葉を何回も擦り込むと良いようです。
上記の「小児の疳を取る」ことができることから、別名「疳取草(かんとりそう)」とも言われています。英名の「Japanese Grand Ivy又はJapanese Gill-over the Ground」は地を這うキズタを意味します。中国名は「活血丹」ですが、金銭草と呼ばれることもあり、中国では日本とほぼ同様に使用されているようです。学名Glechomaはハッカの一種(Mentha pulegium)に付けられた古代ギリシヤ名「glechon」に由来し、hederaceaは「キズタ属Hedera」に似ていること、grandisは「大型の、偉大な」にちなんでいます。
イギリスの一部ではエール(ale、ビールの一種)というアングロサクソンの伝統的なドリンクに香料及び浄化を目的としてカキドオシが使われていたため「エールフーフ(alefoof、エールの足)」とも言われています。中世期には解熱、慢性の咳や耳鳴りの治療に用いられた優れた薬であったようです。
(高松 智、磯田 進)