雪解けの後に咲き出す早春の花「雪割草」。野草のうちではセツブンソウと同じくらいに早く咲き出すので、この花のニュースを聞くとソワソワする。品種改良でさまざまな色が作りだされ、八重のものもあって多様な花を楽しめる。ミスミソウという名前はコミックと映画で有名になったが、現実のミスミソウは和やかな美しい花である。名前がきれいなので俳句でも好まれる。雪の降るうちから雪割草を夢見たのが次の句「しんしんと雪割草を恋ふるかな 青柳志解樹」。
(2021年早春 南高尾)
■高尾の花
雪割草の基本情報
学名:Hepatica nobilis var. japonica
和名:ユキワリソウ(雪割草) その他の名前:オオミスミソウ、ミスミソウ、スハマソウ、ケスハマソウ、地桜花、雪割り草
科名 / 属名:キンポウゲ科 / ミスミソウ属
特徴
雪国の春を彩る雪割草(ユキワリソウ)は、ほかの花に先駆けて色とりどりの花を開くことから、多くの人に親しまれています。一般に「雪割草」と呼ばれるものには、オオミスミソウ、ミスミソウ、スハマソウ、違う変種のケスハマソウがあり、それぞれ自生地が異なります。
ここでは、最もよく親しまれているオオミスミソウ(Hepatica nobilis var. japonica f. magna)を紹介しましょう。北陸地方以北の本州日本海側に分布し、里山の雑木林の斜面や山地の林床に自生します。
早春に開いた花弁のように見える部分は萼片で、花弁はありません。花色は白や桃色、赤や紫と、野生植物には珍しく多彩です。花後、地際に3裂する葉を一度に数枚展開し、そのまま常緑となって1年を過ごします。タネはそう果で金平糖のように固まります。葉は一年中ありますが、「春植物」に近い性質をもち、目に見える成長は春で完成して、その後は翌年の開花までじっくりと芽や根を充実させます。
八重咲きなどの変化花も多く見いだされ、多くの先人により変異の仕組みもある程度解明されています。それにより園芸的育種も盛んで、近年では新しい園芸植物としてマニアの注目を集めています。
基本データ
園芸分類 山野草
形態 多年草 原産地 北陸地方、東北地方の日本海側
草丈/樹高 10~20cm 開花期 2月下旬~5月上旬
花色 白,ピンク,赤,紫,複色 栽培難易度(1~5)
耐寒性 普通 耐暑性 普通
特性・用途 常緑性
雪割草
あどけなき丈を束ねし雪割草 山田弘子 こぶし坂
しんしんと雪割草を恋ふるかな 青柳志解樹
ふるさとや雪割草のかすかなる 古澤千枝子
まだ萼に隠れし花や雪割草 石田波郷
みんな夢雪割草が咲いたのね 三橋鷹女(1899-1972)
ものの影まだ地になくて洲浜草 永方裕子
よきことはいつか来るもの雪割草 鈴木伊都子
一と鉢の雪割草の野を買ひぬ 蔦三郎
一鉢の雪割草の野を買ひぬ 蔦三郎
傘雫振るや雪割草の濃く 増田萌子
図書室のこの窓が好き雪割草 行方克巳
奥能登の蕎麦屋に売れる雪割草 坂部尚子
小屋に春呼んで雪割草ひと鉢 石川桂郎 高蘆
峡の日のまなこに痛き雪割草 宇咲冬男
思ひ出すことも供養の雪割草 気田妙子
息止め見る雪割草に雪降るを 加藤知世子 花寂び
指を組む闇に雪割草の花 堀越胡流
控へ目に雪割草は地をわりぬ 松浦ミヤ子
旅信ばかり呉るる友あり雪割草 石田波郷
日に飢ゑし雪割草と灯をわかち 軽部烏頭子
洲浜草鞍馬はけふも雪降ると 後藤比奈夫
異倭(ことやまと)の子らも育ちぬ雪割草 水野真由美
空腹に雪割草の花ふたつ 宮坂静生 春の鹿
義士まつり雪割草を照らし売る 大西八洲雄
花日記雪割草に始りし 秋葉美流子
花終へし雪割草を地にかへす 軽部烏頭子
起伏みな雪割草の占める岬 中村青峯
逆修の板碑しんしん雪割草 望月精光
雪を割り雪を纏はず三角草 稲畑汀子
雪を割る力は見えず雪割草 竹下陶子
雪割草に跼むや兄も妹も 山田みづえ
雪割草佐渡がもつとも純なとき 中嶋秀子
雪割草古き落葉のかげに咲く 山口青邨
雪割草咲き出て峡の日章旗 唐橋秀子
雪割草咲く墓山に忌を修す 青柳はじめ
雪割草垂水の滝は巌つたふ 山口草堂
雪割草氷河の水に根を濯ぐ 依田明倫
雪割草海無き国は父の国 成瀬櫻桃子
雪割草裟婆捨て峠越えてより 青木和枝
雪割草谷間の風にたじろがず 設楽隆夫
雪割草通りやんせとは怖き唄 鈴木伸一
雪割草雲千切れとぶ国上山 朝妻 力
雪割草風透き通るこの辺り 高澤良一 宿好