ちょいとそこ行くお方、俺の話を聞いてくれよ。
ありがとよ、優しいお方。
俺ァは旅の傭兵さ。名前か?名前なんてのはとっくの昔においてきちまってなァ。生憎だが持ち合わせてないんでェ。
嗚呼、今日はいい桜日和さなァ。だがちぃと咲くのが早過ぎたみてェだ。
んじゃあよ、あんたも折角止まってくれたしよ、そろそろ話し出そうか。
あるところにな、病気の女が居たんでェ。
そいつにゃ2人の兄とひとりの弟が居てなァ。2人の兄はァ、その国の戦争に借り出されてさァ、看病どころか顔も見せられやしなくてよ。ひとりの弟はァ、まだ子供でな。女の面倒どころか自分の面倒も見られやしねェ年だったんだ。
案の定、弟は死んじまった。女はァ動かねェ足を引きずってよ、動かねェ弟を抱き上げて、そりゃあ涙で洪水ができるくらい泣いたんでェ。
そしてな、2人の兄のうち、ひとりは戦争で死んじまってなァ。もうひとりの兄はよォ、それを見て、さっさと戦争なんざ終わらせてェと思ったわけさァ。
んでな、そいつァ敵味方区別無くよォ、切り捨て続けたんでェ。最早無敵さァ。そいつがよォ、気付いた時にゃ、周りには原型も止めねェくらいの死体が山のように転がっててなァ。そいつァ、指名手配になっちまったんでェ。
女だがよォ、その兄が行ったときにゃ、もう死んでたんでェ。
病かって?いいや違ェ。指名手配の兄の親類ってこって、切り捨てられてたんでェ。埋められることもなくよォ、地面に転がっててなァ。そいつァ女を埋めてなァ、旅に出たよ。女の仇を見つけるためになァ、その憤りをぶつける為になァ、傭兵になったんでェ。
千年近く経った今もよォ、そいつァ千年桜の近くの岩に座ってよ、道行く人にこの話を聞かせてはァ、雇ってもらうのを待ってるのさァ。
ッハハ、そんな顔しねェでおくんなせェ。
でもよォ、俺の座ってる岩の上が、かの有名な千年桜さァ。・・さァてな、この話を信じるか信じねェかはあんたの自由さァ。
・・あんだって?俺がその傭兵?・・・ッハハハハ!こりゃあおもしれェ人に出会ったもんでェ!今まで百と四十六人に話してきたが、んなこたぁ言ったのァあんたがはじめてだ!
俺ァしがない旅の傭兵さ。名前なんてのはとっくの昔においてきちまってなァ。生憎だが持ち合わせてないんでェ。
嗚呼、今日はいい桜日和さなァ。だがちぃと咲くのが早過ぎたみてェだ。
俺ァもう誰が憎いのかもわからねェ、ただの狂戦士さ。
(千年桜)
ありがち(何!!
口調が定まらないなー・・。