せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

2007-03-26 10:11:47 | 小説
星になった男


あたいの友人にねえ、星になった男が居るんでェ。


普通の意味じゃあ死んだってことになるんだろォが、あいつは別に死んでやしねェと思うんだよ。

そいつァな、一生で一回だけ、馬鹿な恋をしやがった。そうさね。夜空に輝く星に恋をしたんでィ。
あたいに満面の笑みを浮かべては「俺ァ、星になるんでぇ」ってねえ。毎日毎日、星になるためだとか言ってさァ、変な形の物ォ作っては、崖から身投げみてェなことしてたァな。

んでな、そいつァある晩こっきり姿を消しちまった。

捜索隊まで組んでよォ。ったく、迷惑かけてくんなァな。いつもの崖に行ったって、そいつの姿ァ無くてよォ、谷を覗いて見たって、そいつが作ってた変な物は無かったよ。
毎日毎日探しつづけてもよォ、手掛かりさえ見つかりゃァしねェ。そうしたら誰かがポツリと言ったんでさァ。

「あいつァ、星になったんじゃねェかな」

みんな疲れててよォ、もう本音は止めたかったんでェ。でもよォ、みんなそれも我慢できるくらい、そいつが好きだったんでさァ。
あいつァ、不思議な男だ。今も念願の夢だった星になれて、喜んでるんじゃぁねェかなァ。

-(とりあえず一区切り、続きは反転)

は?あたいがなんだって?

お嬢ちゃん、大人をからかっちゃぁいけねェな。あたいは確かにあいつのことが大好きだったがよォ、んなこたァねェ。あいつァ自分の夢を叶えたんでェ。地上の夢もなぁんもねェあたいは、そんなこたァしていいハズがねェんだ。
・・でもよォ、まァ、悲しいのは事実さァ。あたいもよォ、その馬鹿な恋をしてたんでェ。
あたいは、本当に、心の底から、あいつが好きだったさァ。

でもよォ、泣くなんてのは、許されねェこった。



さァて、この話は終わりでェ。次は何の話をして欲しいかィ。



(星になった男)

語り部の江戸っ子女って格好良いなーと思って(何