「月が遠い」
頬を撫でる感覚に秋の臭いを感じて、思わずそう呟けば、そりゃあな、となんてことなしに傍で聞こえる。ぼんやりと月を眺めながら冷たい風を吸い込むのが好き。このまま冷凍して、止まりそうな心臓がずっと在ってくれる気がする、から。
「・・そーいや」
「うん」
「今日さ、」
「うん」
「お前の、余命の最終日、だったよなぁ」
そうかもね、と呟けば、そうだったよ、と聞こえた。多分、と付け足したその声がやけに低かったからかもしれない。わたしはまたぼんやりと呟く。銀、はさ。
「わたしのこと、忘れない?」
「・・たりめーだろ」
すこし鼻を啜った音が聞こえた。これは、期待してもいいのだろう、か。でもちょっと遅すぎたなあ。心の中で呟きながら、口では、なら安心だね、と呟く。何が、とは返らなかった。
「わたしのこと忘れないでね。わたし、わたしが、生きていたこと、忘れない、でね」
「・・おー」
心地良くその声を聞きながら、ゆっくりと目を閉じる。二度と目覚めることはないけど、こんなおしまいなら安心して眠れるかもしれない。
最後にわたしの名前を呼ぶ声がした気がした。
―――
(Good night.Good Dream.)
どうか安らかに。どうか永遠に。
名前変換にもなれない可哀相なお話たち。
え、これ、何て呼ぶの?二次創作だよね?
ドリー夢なんて名乗る資格なくね?アレ?