せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

差出人不明 宛先君へ

2007-09-03 22:57:30 | その他
授業中、なんとなく握り締めていた携帯が震えた。
机の上に乗せていた足を組みなおしてから、携帯を開く。


差出人:
宛先:海藤 さくら
題名:
本文:
 お元気ですか、さくらさん。
 今こちらは晴天で、とても気分が良いです。
 獄寺氏によると並盛も晴天だそうで、何より。
 では今日も、良い一日を。

  2017/9.3


頭がおかしいのだと思った。差出人不明、題名無名、本文は意味不明、だ。だって窓の外はどんよりとした曇。大体獄寺だって今は授業中だろうし、良い一日をったって、もう正午間近。あげくの果ては送信時間が10年後ときた。
ありえない、と思って閉じようとして、止めた。相手が誰なのか、確かめたくなってきたから。


差出人:海藤 さくら
宛先:
題名:誰かさんへ
本文:
 どうも。ちっとも元気じゃないけど。
 ここは元気だって言っとくところなの?
 っていうかあんた誰?宛名不明なんてありえない。
 題名くらいつけなさいよね。
 あと訂正。今は2007年。
 キミの携帯、おかしいよ。

  2007/9.3


そうして一分も掛からないうちに、問題のメールは帰ってきた。今度は、題名付きで。


差出人:
宛先:海藤 さくら
題名:こんにちは
本文:
 いえ、これで正しいですよ。
 はじめまして、十年前のさくらさん。
 突然のことで驚かれているかもしれませんが。
 仕組みは・・十年前のオレに訊いてください。

 普通に教えるのではつまらないので、問題にしましょう。
 住んでいる場所はピンポイント過ぎるので秘密です。
 そうですね・・、泣き虫、でしょうか。

  2017/9.3


正しい?ありえない。っていうか、十年前の私って何?十年前のオレ?誰だって聞いてんだけど。答えになってないし。

「・・意味わかんない」

そう言って前の奴の座席を蹴っ飛ばすと、先公に睨まれた。うざったい。いつもと変わらない日常。なにかが変わったりしたらいいのに、と思う。


差出人:海藤 さくら
宛先:
題名:泣き虫って何?
本文:
 泣き虫・・って、もっとわかりやすいのないの?
 雰囲気とか容姿とか、年齢・・なんでもいいし。
 泣き虫なんてたくさん居るでしょ?口癖くらい教えてよ。

  2007/9.3


半ばイライラしながら送信する。どうしてこんなに執着するのかわからなかった。いつもならすぐにキレて、無視するのに。ぼんやりと窓の外を見ると、何か黒いものが傘を持って走ってきていた。・・・・蟻?(多分違う)


差出人:
宛先:海藤 さくら
題名:性格、でしょうか
本文:
 容姿、は黒髪で黒目ですかね。
 年齢は当時5歳。角が生えてるので、すぐわかりますよ。
 よく並盛に侵入していたらしいので・・。
 いつか、必然的に会えるかもしれませんね。

 十年後のオレは、目の斜め下にマークがありますよ。

  2017/9.3


十年後の情報なんて知りたくもない!
やはり一分もせずに帰ってきたメールにそう叫びそうになりなった。それを必死にこらえて、記憶の引き出しをひっくり返す。でも、そんな変態は知り合いに居ない。角?牛じゃないんだから!
そう思いながら、携帯を開く。


差出人:海藤 さくら
宛先:
題名:未来の
本文:
 っつーか、もうなんでもいいから、十年後の誰かさん。
 時を越えたメールなんてできるなら簡単でしょ?
 退屈なこの毎日をどうにかしてよ!

  2007/9.3


一分経っても、何故かメールは帰ってこなかった。

「なによ、なによなによなに・・!」
「うわあああああ!!」
「なに?!」

そう言った瞬間、開いていたドアの目の前で何か黒いものが泣いていた。その頭には、角。(うそ。そんな・・まさか)そうしてそれは自分に向かってバズーカ砲を当てた。(何して・・!)
ぼふん、という音と共に、教室内が煙に包まれた。ふざけんな、と思ったとき、ふいに腕を引かれて倒れこんだ。(もうなに?!今度はなに!!)


「海藤さくらさん、ですよね」


「はっ・・?」
「やっと会えた」

何で私の名前、と言う前に、抱きしめられた。信じられなくてぐるぐるしていると、メール、と言われて、はたと思い当たる。

「未来の、誰かさん」
「ランボです。・・十年後の今日、貴方に一目惚れしたんですよ」
「はぁ?!」

誰だよ、といいかけて、止めた。どこか懐かしい匂いがした。肩に入っていた力が自然に抜けて、紅茶みたいな匂いに包まれた。ちょっと、すきかも。

「結局、連れてって、くれるの」
「・・・無理ですけど」
「・・ふーん・・・」
「こうして傍に居ることは、できます」

恥ずかしい野郎め、と言いかけて、はじめの煙が消えてないのに、また煙が立ち込めた。そして気付けば、胸のあたりに子供がくっついている。さっきの、角のガキだ。

「・・誰お前」
「・・・・、ランボさんお前キライ!怖い!」
「・・・!!」


訂正。くたばれ。


―――
(置き去りクライガール)

全然クライ(Cry)じゃないけどね(笑
くたばれとか超バリバリ元気だけどね。
書き直しするつもりです。疲れたヨ。




おメモ("お"いらない

『私から言おうと思ってたんだけどまあいいや。そうしよう』

送信ボタンを押してから、ばちん、と乱暴に携帯のディスプレイを閉めた。反動で、横の席で寝ていた野球部のエース君(名前忘れた)がおきて、周りを見回していた。その拍子にばっちり目が合って、何よ、と文句を込めて睨むと、笑顔で返された。(何アイツ!)