弟よ。

私には10歳年の離れた弟がいる。
心根がまっすぐで、繊細で敏感。女性や動物にやさしく、弱いものに心配りのできる本当に心優しい弟だ。
彼が生まれたとき10歳だった私は、よく彼の面倒をみていた。あやしかたがうまくなくてよく泣かれ、母が帰ってくるまで一緒になってわんわん泣いていたこともある。だから、今でも保護者気分が抜けず、かわいいし、心配で仕方がない。彼の長所でもあるけど、短所でもある。優しすぎるのだ。（あ、自分の心配しろって？）

今、同じ関東圏内に住んでいるけれど、なかなか会えない。大学が合わずに、今はもうすっぱりやめて、アルバイトをして食べている。
昨日久々に電話が来て、
「お姉ちゃん、昨日で大きい仕事が終わったから仕事やめたよ。」という。
「あ、よかったね。」そう私は答えた。彼には学歴があるわけではないけれど、もっと向いているやりがいのある仕事についてもらいたいとずっと思っていた。サービス業なんかについて、こつこつ仕事をしたら、いい仕事をすると思うんだよね。先輩や上司にもかわいがられるに違いないし。
「今度は、長く続けられる仕事を探すんだ。」そうはっきりいう彼の口調にはもう何年か前の自信のない弱弱しさはなくて、思わず電話口でうるっと来た。
今度一緒に食事をしながらお互いのこれからのことを話すことにした。

とても若いときに、あんなに心を痛めた分だけ、傷ついた分だけ、悲しい思いをした分だけ彼には温かく豊かな人生を送る権利がある。
これからの長い彼の人生がどうかどうかとても幸せなものでありますように。