セツの 日々つれづれ日記

猫たちの様子や感動した景色など、日々のささいな出来事をアップしています。

紅葉の吉野山 (3/4)

2012-11-21 07:00:00 | 吉野山
夢のような西行庵。

いつまでも見ていたいけれど、帰らなければならない。

考えないようにしていた(今来た道を戻るのか……)という気持ちと、向き合わなければなりません。

西行庵のすぐ前から、急で高い斜面が見えていて、ずっと背中がぞわぞわしっぱなしです。

見上げると、さっき歩いてきた道。







はあ、とため息をついていると。

「あの、あちらの道はどこにつづいているんですかね」

「ああ、あっちも帰り道です」

「えー、そうなんですか」

「ええ、あちらのほうが少し遠回りですが歩きやすいですよ。景色もまた違いますしね」


ダンボになっていた耳が、こんな会話をキャッチした。


……、いいこと聞いた。

西行庵からのびる、もう一本の道。

それは、左に上る元の道ではなくまっすく進んで別の斜面を行く道だった。

何人かの人たちが、ゆっくり上がっていくのが見える。



歩きやすいというその言葉に飛びついて、さっそく歩き出した。

いろんな色のもみじ。




子供の頃ならいっぱい持って帰っただろうな。

自然がくれる、人の手では作り出せない贈り物。

きれいです。


先を歩いている人に続いて、新しい道を歩いていきます。

ううう、下は見ない。見ない。

前だけ向いて進んでいこう。

やがて、曲がり角がきて。

見えるものが変わります。

と。

ものすごい、谷。




なかなか見れない、山の上のほうの景色。

いつもの私なら、「きゃー、すごーい!」とはしゃいでいるでしょう。

しかし。




足場が、狭い。柵がない。

そして何より、てすりがない!!!

ああああああ、こわいいいいい~~~!(もう泣いてます)


足場がせまいということは、こんなにも不安な気持ちにさせるんだ、と、分かりました。

『歩きやすい』。確かに。

足元が土なので、さっきのボコボコした石の道よりも安定感がある。

しかしそれは、柵なんて必要のない人たちのための言葉だったのだ。

もう、戻ることもできない。



前から人が来たので、すれ違う幅なんてないし、私、左側の斜面にぺったりと貼り付く。

ええ、こうして待っていますとも。

少しでも低いところで。

やってきたお兄さん、すいません、と恐縮してか小走り。

走らなくていいです! こんなところで気を遣わないで下さい……!

見てるだけでゾクゾクする。

よく普通に歩けるなぁ。

やっぱ私が怖がり過ぎなのかもねん……。


また、一歩、一歩と進んでいきます。

ものすごく怖い。姿勢はすでに、バレーボールの構え並みに低い中腰。

ついに一回、しゃがみこんでしまった。


右側の景色が見れない。

こんなに絶景なのに見れない。

悔しいので、カメラだけ右に向けて。

液晶を見ながらぱしゃ。




紅葉と渓谷。すごく絵になるなぁ。

左側の杉も美しいなぁ。ぱしゃ。





ええい動け。私の足。

ぎぎぎぎぎ、と立ち上がります。

足も腰も、こわばりきって自分の体じゃないみたい。

一歩、また一歩。

あのピークまで行けるのかしら。私。

あそこに立てるのかしら。






ついにピークにたどり着きました。

なんとかなる。なんとか。

そう自分を励ましながら進んでいくと、行く先に、少し広いところが見えてきた。

せまい道の終わりだぁ~~~~! やった~~~!


とおちゃ~~~く!




すっごくきれい~~~~~!

なにこれ、ご褒美かなぁ。







空が青すぎる。

すごい。

そして、改めてあの渓谷を見に行きます。






広いスペースがあれば、そんなに怖くないんだな。

ずっと見てても平常心でいれて、だけどぎりぎりまで行って身を乗り出すことは到底できない。

つまりはそういうことなんだ。この怖さっていうのは。




ここがこんなに難所じゃなければ。

こんなところに住みたいよ~~~。




いっぱい写真を撮って、後ろ髪を引かれるようにその場を後にしました。





ここから先は、あんなに怖い道もなく。

日が傾いてきたせいで更に薄暗くなった道を抜け。

倒木をくぐり。




たまに差し込む光に心を躍らせて。




予定していたよりずっと時間がかかってしまったのが気掛かりで、いつのまにか小走りになっていました。



案内板を発見。

このあたり一帯は宝塔院跡と呼ばれていて、かつては大小の寺院が点在していたそうです。

宝塔院というのは、もしかしたらあの素晴らしい場所にあったのかもしれません。

あの眺めだもの。きっと。



やっと、元の道に、帰ってきましたよ~~~!




はああ、良かった~~~疲れた~~~。

ここまでたったの2キロなのに、右のふくらはぎがつりました。

アップダウン、過酷だったなぁ、運動不足の体には。


もう一度、あの素晴らしい眺めを目に焼き付けて。




奥千本のバス停まで、てこてこ下りていきました。



つづく。