腐った世の中は身を生じない



落語;志村、後ろ!のあらすじ【修正版】

七人の子はなすとも女に肌を許すな、と云う古い諺があるが、肌を許すなとは、つまり、気を許してはいけないと云うこと。女ぐらい始末の悪いものはない。少し煽てりゃ増長し、小言を言やァ膨れッ面をする、理屈に詰まればメソメソ泣くし、ぶてば引っ掻く、殺せば化けて出る。殺したら、よーく頭を潰しておかないと、早く化けたがる。って、そんなに悪く言わなくてもいいものだけれども…。
加藤が帰宅すると、男の影。誰か来てイヤガル。門口に立って聴き耳を立てていると、今夜は帰る帰らないの問答の最中。「今日は、ゆっくりしてけば…?」「いや、やっぱ、帰るわ…。」さてはやりやがったな?畜生め!如何するか?見てやがれ!ってんで、入り口に在ったゴルフクラブ一本、引っこ抜いて。リビングの志村は背中を向けている。勢いと云うものは恐ろしいもので、扉をガラッと空ける、眼を血走らせ、「コノヤローーーーー!!!!!!!」ってんで、ひっぱたいて、弾みと云うものは誠に恐ろしいもので、前へのめって微動だにしない。勢力を拡大し続ける血ダマリ。「…志村、後ろ!」と、言ってくれる者は誰もいなかった。やったぜ?加トちゃん!
「オイ!綾菜ァァァァァァ!!!!!!!!テメエもタダじゃおかねぇぞゴラァァァァァ!!!!」その声に驚き絶叫綾菜、鳴り響く悲鳴、「キャーーーーーー!!!!!!!何ィィィィィーーーーー????あんた、志村さんよ!なんてことをするのよ?」「え?」介抱したが、それきり息を吹き返さない。段々と冷たくなって、「一体全体、何のつもりでこんなことをしたのよ????????」「いや、あの、また間男かと…。」「間男って何よ?言ってる意味、全然、判んないし!」「いや、あの、浮気男のことを間男って…。」「だから、何よ??????」「・・・・・・。」「志村さんがうちに初めて来てくれたのに、なんてことしてくれるのよ?まごまごしていると首がなくなるよ??????」「いやだァ、歩くのに見当がつかなくなるのやだやだやだやだやだやだやだやだよォォォォォォォ!!!!!!!!」
そこへ折り悪く、上島がやって来、共犯に仕立て上げる覚悟で上がらせる。加藤と上島。奇妙な取り合わせではあるが、志村を師匠と慕う上島は、数十年ぶりに家を訪れ加藤とその嫁だけを挟んで逢うのを照れ臭く感じた志村から、この衝撃的な場所に奇しくも呼ばれていたのである。また、志村の関係で加藤とも非常に懇意にしており、数度、自宅に招かれたこともあった。「…うわ、ななななななんんすか?師匠ォォェォォォォ~!!!!!」「バカ、声が大きい!」動転しながらも事の経緯を話すと、テレビで見せる表情とはまったく違うシリアスMODE全開、真剣な顔つきで上島、「事情は総て呑み込めました。ここは、ひとつ、ボクに任せて下さい。決して、悪いようはしません。」。
そして、屍体の隠避方法などを事細かに指示しだす上島。感心した加藤、「上島くん、キミはあれだね?なんかいつもぼうっとしているようで、あれはキャラクターだったんだ?実際ちゃんとしてるんだね?」上島、「はい、あれはキャラなんすよ、キャラ。本当は賢いんですよ、ボク。(笑)」本当は怖い上島*兵の顔をのぞかせ、肝心の屍骸は如何するか?と云うと、ガレージが加藤の自宅敷地内にあったのをさいわい、車で犯行現場を離れたのが午前零時、郊外に在る上島の自宅へ向かい、到着するとすぐに床を引っぺがし、穴をせっせと三人で掘り、屍骸を埋め込んだ。上島の嫁は、折り良く実家へ帰省中だった。「まぁ、多分、大丈夫だと思いますけど、あ、で、実は、うちの経済状況が困窮しておりまして…。」と、不敵な笑みを浮かべて相談を持ち掛ける上島。
そして、嫁が席を外した隙に、「…七人の子はなすとも肌を許すなって諺がありましてね? (… 中略 … )加藤さんはこのこと、絶対、誰にも言やァしないと思います。ボクもこのことは、墓まで持って行くつもりです。しかし、もしも、ないとは思いますが、万が一、本当に万が一ですが、何かありましたら、知れるようなことがありましたら、万事このことについては後輩の上島に任せておりますからと、証言して下さい。」そう落ち着いて話し、安心した加藤だったが、しかし、その後、度重なる無心により財産の殆どを上島に毟り取られてしまった加藤。そこへ持って来て、嫁の止まらない浪費癖。自ずと夫婦喧嘩は日常となっていった…。
大物芸人の失踪劇は一大センセーションを巻き起こし、加藤も事情聴取を受けたが警察官は勿論、全員***世代、まさか志村が加藤に殺されるなど、夢にも思わず、「何か、変わったことはありませんでしたか?」程度の質問ですぐに解放された。偶然に、目撃者もおらず、また、時の流れは妙におかしなもので、さいわいなことに     が大スキャンダルを直後に起こして、もみ消されるように      となり、すぐに     となって、大衆の関心は薄れ、話題は忘却の彼方に追い遣られてしまったが、戦後最大級の迷宮入り組曲となったのは事実である。
そして、何を隠そう、ポスト志村の座の椅子取りGAMEを制したのは、他でもない上島であり、芸能界の帝王として君臨している現在状況は周知の通りである。
志村とはまったく毛色の違う芸人の代打登場に、初めはみなしらけムードだったが、次第次第に能力を発揮し、後輩の後ろ盾もありつつ、生来の憎めなさも相まって今ではレギュラー 本。
一方、加藤の方は?と云うと、家庭の経済状況が逼迫しているのにも拘わらず、相変わらずの綾菜の浪費癖。酒好きの加藤は嫁より更に若い女のところでもたもた。家には帰らない。泊まって帰って来る。不愉快なのは綾菜。ジャンジャン焼き餅を焼きまくり、金切り声を上げて、「グウグズしてんなら出てけ!!!!!!」「テメエの方こそ今すぐに出てけ!!!!!!!!」「あたしが一言言えば、お前なんか、首なくなって歩くのに見当がつかなくなるんだ!志村さんをぶち殺したんじゃないか!みなさーん、この人は、志村さんを殺しましたよォォォォォォォ!!!!!!!!この人殺しィィィィィィィ!!!!!!!!」ってんで、如何にも始末がつかない。
近所の住民に通報され、如何やら単なる夫婦喧嘩ではなさそうだとしょっ引かれ、「神妙にしなさい!」。数年前のコールドケース事件が風雲急を告げる新展開。綾菜の方は何の躊躇いもなく自供。屍骸の遺棄場所も供述し、「志村さんを殺したのに相違ありません。」。しかし、加藤は、「知りません。存じ知上げません。このことに関しては上島に委ねております。」。参考人招致された上島、「加藤さんは、決して人を殺めるような悪人ではありません。気の小さい、度胸のない、単なる、ヤクザみたいな格好が好きな、若い女好きのチャチな野郎です。実は、飼い犬が死んだものの、       と云うような複雑な理由から、私の家に埋葬しただけで、人殺しだなんて滅相も御座いません。」警察が取り調べてみると本当に犬の骨しかない。「女房が焼餅を焼いてあらぬ妄言を申し世間を混乱させるとはけしからん!不届き者めが!これからは、夫がよく監督するように!許してつかわす。以後はよく気をつけるように!」ってんで、いい塩梅にカタがつく。
「…いやァ、本当にありがとう。命拾いしたよ。しかし、考えてみたが、如何して犬の骨になってたんだい?」「いや、あれね?あの女の性格からして、いつかあのことを言い出すんじゃないか?って、判ってたから、いっぺん埋めたけどこれはやべえな?ってんで、時機を見て掘り出し、特殊な   で    したんです。気がついて、本当に良かった。今回の件で、あの時、事件の後に話した、“七人の子はなすとも女に肌を許すな!”って、よく判りました?」「…うあぁ、でも、やっぱ、あんま気持ちのいい話じゃねぇなァ…。」

※ 著者註;クドカンの金字塔があるからこんなことやっても意味がない。あと、平易な文章が、如何しても書けない…。

※ 下敷き:落語 骨違い@Wiki

【腐った世の中@名作FICTION劇場より...】

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