受け手、掛け手、店長、首魁。人を使って詐欺を働くのに、仲間同士は横も、上下の者についても何も知らない。研修時に、「富の再分配」と白板に書き、貯蓄のあるものは70代以上の老人たちばかりで若い者は貧しく大きな希望も持てない。老後も不安ばかりである、われわれは善いことをしているのだと説く。ここくれば毎日の交通費は2万円。仕事ができれば月に100万円、200万円稼げる。
鬼平犯科帳に出てくる義賊は「弱いものから盗らず、殺さず、犯さず」という掟を持っていた。
現代の詐欺師集団も案外義賊と本気で思っている者がいるかもしれないが、かれらは悪巧みで儲けた大金持ちだけを狙っているわけではない。老人を無差別に狙っているのだ。
NHK総合、金曜日夜9時から「サギデカ」というドラマが始まった。相当な取材を重ねて練った作品になっている。
今の時代の犯罪の社会背景もわかるようになっている。また掛け人の生い立ちも調査されることになる。ある日、一斉にあるグループの仕掛人たちが捕まった。警察は仕掛人個人の情報がないため、その男は誰か、から調べなければならない。
調べると、その仕掛人の生い立ちがわかった。悲惨であった。父親は蒸発し、その後母親ひとりで育てるが結局逃げてしまう。残された兄弟はなんとかして暮らしていくが、弟が衰弱死する。兄の方は保護され18歳、高校を卒業するまで施設で育てるられる。
ここ30年の犯罪の背景にある家族の崩壊である。詐欺被害額をみても東京23区の一区だけで月に3億、4億となっている。
格差社会が進行している。正規社員、非正規社員との差。大企業中小零細企業との差、年金の不確かさ。人材派遣会と法務省の間で口利き料を掠めとる政治家。詐欺集団の倫理はすでに壊れているが、政治家にも忖たくから始まった事件がいくつもあった。倫理が壊れてようとしている社会をぼくらは作ってはならない。
電話で騙すのも面倒だと、直接老人の家に行き、盗む者まで出てきた。
「サギデカ」で、集団のあり方、詐欺するもの、されるもの、が描かれるのだろう。人間はどこまで狡くなれるのか。それは何なのか。この詐欺師たちは大悪なのか小悪なのか。社会を崩す反社会勢力の現実をこのドラマで少々でもわかるのではないか、と期待している。