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深度1400mのタコの抱卵

2014年08月04日 16時38分43秒 | Weblog

ナショナルジオグラフィック ニュース

4年5カ月、卵を抱き続けた深海のタコ
2014年7月31日18時41分

深海に生息するタコの一種、グラネレドネ・ボレオパシフィカ(Graneledone boreopacifica)が、53カ月という抱卵期間の新記録をつくった。卵の発育期間としては、あらゆる生物のなかで最も長い。
この記録は、タコの最高記録である14カ月を打ち破り、さらにはアルプス・サラマンダー(alpine salamander)の推定48カ月の妊娠期間を超えるものだ。ちなみに、浅瀬に生息するタコは2~3カ月卵を抱くことが知られている。
イカ、オウムガイ、タコ、コウイカなど頭足類の寿命は、通常1~2年と短い。今回発見されたG・ボレオパシフィカは、抱卵期間だけでもその平均寿命をはるかに上回る。

◆「まだそこにいる」
2007年、モントレー湾水族館研究所(MBARI)の深海生態学者で研究リーダーのブルース・ロビソン(Bruce Robison)氏は、カリフォルニア中部の近海、およそ1400メートルの深さでロボット潜水艇を動かしていた。そこで岩壁に向かって泳ぐ紫色のタコの姿をビデオカメラが捉えた。
1カ月後、ロビソン氏の研究チームは、特徴のある傷を持った同一のタコが岩にしがみつき、繊細で透明な卵を守っていることに気が付いた。
チームの潜水艇は53カ月の間に18回、同じ場所に戻っては、摂氏3度の水中で驚くほどゆっくり成長する卵と、動かないまま徐々に衰弱してゆく母ダコを記録した。
記録開始から2年が経った頃、母ダコの命はもう長くないだろうと研究者らは考えた。しかし、潜水艇が戻るたび、「何てことだ。まだそこにいるぞ!」とロビソン氏は声を上げた。
2011年10月、母ダコはついに姿を消し、150個ほどの空になった卵が残されていた。

「これは、深海に生息するタコが抱卵する姿を捕えた唯一の記録だ」とロビソン氏は言う。「最初から最後まで目が離せなかった」。

◆行け、子タコ!
タコの長期間にわたる成長は、低温度下での遅い新陳代謝が起因していると研究者らは推測する。
G・ボレオパシフィカの幼生は孵化したタコの中では最も成長した個体であると、シカゴにあるフィールド博物館のキュレーター、ジャネット・ボイト(Janet Voight)氏は語る。同氏はこの研究に参加していない。
プランクトンのような成長段階で孵化する浅瀬のタコと違い、G・ボレオパシフィカは小さくとも完全なタコの形で卵から孵る。その分、暗く深い海の中で生き延びるチャンスが大きくなるのだろう。
母ダコの方は、数は少ないが大きな卵を産むことでより多くの子孫を残そうとするのだろう。
今回の研究は、たった1例を記録したにすぎない。したがって、長期間にわたって卵を抱く行動は異例ではないかという疑問がわく。ボイト氏はG・ボレオパシフィカ特有の行動であると推測している。

◆親の犠牲
この母ダコは、5年近く何も食べなかったのだろうか?「タコの多くは卵から離れることはない」とロビソン氏は言う。また、温暖な海で抱卵する母ダコは何も食べないとボイト氏は付け加えている。
研究チームは、母親が食べているところを目撃していない。しかし、観察時間は53カ月中、たったの18時間である。チームは観察中、カニを母親に与えているが、口にはしなかった。小さなカニの残骸が近くにあったことから、卵を守るために時折食べていたのではないかとロビソン氏は推測している。

一つだけ確かなことは、子どもを守るために無脊椎動物が究極の犠牲を払ったという事実である。

この研究結果は、科学誌「PLOS ONE」に7月30日付で掲載された。


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