物欲大王

忘れないために。

新堂冬樹「炎と氷」

2006年08月28日 18時38分18秒 | 読書、書評
炎と氷

祥伝社

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~~1レース数分にして利息5割―分5と呼ばれる暴利の競馬金融を営む世羅。親友の若瀬と共に、九州から闇金融の頂点を目指し東京に進出して来た彼は、情け容赦のない追い込みで同業者からも怖れられていた。普段はギャンブル狂ばかりの顧客の中に、ある時現われたのが、堅物の銀行マン・赤星だった。行内の融資を担保に200万貸してほしいという。だが、その陰には融資強奪の計画があり、絵図を描いていた男こそ、盟友の若瀬だった。彼は風俗金融と呼ばれる風俗嬢専門の闇金融を経営し、客のキャバクラ嬢に入れ込んでいる赤星の情報を嗅ぎつけ、退職金もろとも剥ぎ取ろうとしていたのだ…。カネとプライドをめぐり、運命の歯車が軋み音をたてはじめた時、“炎と氷”二人の凄絶な闘いが幕を開けた!鬼才・新堂冬樹が満を持して贈る超絶のエンターテインメント(アマゾンより)~~。

 登場人物のキャラクター、暴力シーンなどの描写にリアリティが感じられない。
闇金から金を借りる恐ろしさや、主人公の鬼畜さで読んでいてゾッっとするような
作品にして欲しかった。
物語としては面白く、後半からはスピード感あふれる記述で一気に読んだ。
中盤の世羅と若瀬が対峙する場面での緊張感が好き。
ラストシーンでちょっと感動。
Vシネマあたりで観て見たい作品であった。評価★★★★★(5段階)

新堂冬樹「無間地獄」

2006年08月22日 17時25分59秒 | 読書、書評
無間地獄

幻冬舎

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 2000年5月に発行された闇金小説。
発行当時に読んでいれば衝撃を受けたのだろう。
闇金が社会問題化され、闇金への取り締まりも強化された現在ではありえない内容。
「昔はひどかったな~~」と回顧しながら読むと良いだろう。
文章の書き方であるが、章を跨いで同じ説明を繰り返すくだりが多かった。
著者の意図なのだろうが、後半はその記述を少なくしてスピード感を出して欲しかった。
全体的にはちょっとくどく感じたが、話の展開は良い。
ただ、闇金小説なのに最後はホモ小説になっていたのはちょっと……
「それはないだろう」と思って評価を3にしようと思っていたが
ラストのシーンが映画「レオン」の様で(つ~~~かパクリ?)格好良かったので
評価★★★★☆(5段階)

ところで、暗黒小説家の描くヤクザのほとんどが【ゲイ】なのだがこれって
なんとかならんか?

妻の……

2006年08月22日 10時21分20秒 | 日記
妻の笑い声が好きだ。
と言っても「うふふ」という上品な笑い方ではなく
「ぶわぁっはっはっは」
とか

「いぃーひっひっひ」
とか。
改めて文章にしてみると女としてありぇねぇ笑い方をしている我が妻。
でもそんな妻を見ていると「幸せだな~」と感じるのである。



ちょっとノロけてみた。
……寝る(恥)。

戸梶圭太「CHEAP TRIBE」

2006年08月19日 08時25分34秒 | 読書、書評
CHEAP TRIBE―ベイビー、日本の戦後は安かった

文藝春秋

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~~炭鉱労働、安保闘争、『ノストラダムスの大予言』や『エクソシスト』の大流行、某ヨットスクール事件に、バブル崩壊と援助交際…。戦後日本を象徴するチープな事件をモデルに、運命に翻弄され、転落の一途をたどる主人公・沼田永吉の人生を描く。日本の昭和は、これでよかったのか?霞っ子クラブと著者との座談会を収録(アマゾンより)~~

 世紀のダメ人間沼田永吉の生涯を描いた作品。
ダメ人間を描くのが得意の著者だが、今回の主人公はホントどうしようもない。
もう読んでいて
哀れ。

勝ち組セレブが書いた本を読んで夢を見るのも良いが、この本を読んで現状の幸せを感じた方が現実的だろう。
「俺よりも最低人間がいるんだ」とかなり前向きになってしまう、ある意味素晴しい自己啓発本。
でも、心して読むように。夢も希望もない小説でかなり凹む。
だって哀れなんだもん。
評価★★★★★(5段階)
※徹夜明けでかなり適当(パート2)


柳原慧「パーフェクト・プラン」

2006年08月19日 07時51分10秒 | 読書、書評
宝島社文庫「パーフェクト・プラン」

宝島社

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最近話題の新人賞「このミステリーがすごい!」第2回大賞受賞作。
新人作家の登竜門であるだけに、濃く詰まっている印象。
身代金を受け取らず、5億の金をせしめるという面白いプロット。
代理母、幼児虐待、オンライントレード、ES細胞などなど
それぞれのテーマで小説が書けそうなものだが、著者は全て約400Pの作品に詰め込んだ。
ゴチャゴチャになるのかな?と思ったが、上手く噛合っていたのが驚き。
今後が楽しみな作家で、今度は一つのテーマでじっくり書いて欲しい。
評価★★★★★(5段階)
※徹夜明けでかなり適当。

東野圭吾「レイクサイド」

2006年08月12日 07時44分13秒 | 読書、書評
レイクサイド

文藝春秋

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 妻は言った。「あたしが殺したのよ」―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこに?そして事件は思わぬ方向に動き出す。傑作ミステリー(アマゾンより)。

 サクッと読める本格ミステリー。
ラストで2回驚かされた。
登場人物も少なく、わかりやすい密室劇である。
親として何を守るか?誰を守るか?を考えされられた一冊。
予断だが、映画版はかなり評判が悪いようだ。
ま、そのうち観てみよう。
評価★★★★★(5段階)


石田衣良「娼年」

2006年08月12日 07時29分38秒 | 読書、書評
娼年

集英社

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以下、卑猥な記述が含まれているので、苦手な方はページを閉じて下さい。


 恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブ(本番あり)のオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描き出す、長編恋愛小説(本書カバー裏面より)。

 途中まで読んで一旦休憩をしたのだが、冷静になって考えてみるとこんな上手い話は無い。
主人公のリョウは昔からモテモテの超イケメン。
クラブには様々な性癖をもった会員がいるが、皆イカせてしまうという
中々のテクニシャンぶりを発揮する。
しまいにはお婆さんの手を握ってイカせちゃうんだもの。
男の願望そのままじゃん。

女性向けに書かれているようで、作品に優しさがあふれている印象はあるが、
正直31歳のおっさんにとってかなり物足りない。
ていうか、順風満帆すぎる。

と思いながらも読書を再開したのだが、あれ?何かおかしい。
真剣に読んでいる自分がいる。
最初の評価は4ぐらいかな?と思っていたが、
しっかりと入り込み、また作品から伝わってくる物も感じ取れたので高評価。
評価★★★★★(5段階)
ところで、「長編恋愛小説」って書いてあるけど、これって純文学ですよね?
どうなんだろう??

戸梶圭太「東京ライオット」

2006年08月08日 18時11分41秒 | 読書、書評
東京ライオット

徳間書店

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 やはり好きな作家の作品はあっという間に読んでしまう。
2日で読み終えた。
さて、今回は高級マンションを巡る住民騒動がテーマ。
東京のスラム街に突如出現した超高級マンション。
いわゆる「勝ち組」、「負け組」の構図である。
マンション住民は優越感に浸り、地元住民を見下す。
一方、地元住民は劣等感を感じ、マンション住民に敵意を剥き出しにする。
交差するお互いの黒い感情。
まともな作家ならオブラートに包んで描くものだが、著者はあえてそれをしない。
描かれているのは黒い本音だけ。

 俺が小学生の頃、「人類は皆平等である」と教えられたが、著者はあっさりそれを斬り、「差別は存在する」と断言する。
格差社会が広がる未来の日本を予言した作品である。

 読んでいてかなり共感できる部分があったのは俺が卑しい人間だからか?
ちょっと自分が嫌になった瞬間である。
それにしても綾瀬の事悪く書きすぎ(笑)。
評価★★★★★(5段階)


伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」

2006年08月07日 06時21分21秒 | 読書、書評
陽気なギャングの日常と襲撃

祥伝社

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 大ヒット作「陽気なギャングが地球を回す」の続編。
4人の主人公をじっくり描いているなという印象を受けたが、
なるほど短編として雑誌に収録されていた様だ。
情景や心情などの描写は少ないが、会話のやりとりが読んでいて楽しい。
和気あいあいと犯行計画を立て、ガヤガヤと銀行を襲う。
まるで舞台を観ているような小説で楽しかった。
プロット、スピード感が良い。
評価★★★★★(5段階)

石田衣良「電子の星~池袋ウエストゲートパーク4」

2006年08月02日 19時41分29秒 | 読書、書評
電子の星 池袋ウエストゲートパークIV

文藝春秋

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 おなじみのIWGPシリーズの第4弾。
スペシャルドラマになった「東口ラーメンライン」を含む4作を収録。
毎回、同じ様な内容なのについつい読んでしまう、不思議な小説である。
大体の流れは以下の通り。

・依頼人と会う。
・初めは断わろうと思っていたが、話を聞いて依頼を受ける。
・聞き込み。犯人特定。
・タカシと犯人を懲らしめる。

ミステリー小説でありながら難しいトリックは一切無い。
誰かが不幸になるわけでもないし、明るくなる様な終わり方。
登場人物に個性があり、皆カッコ良い。
ある意味パターン化されているので安心して読める。
平成の水戸黄門といった所だろうか。
作品の雰囲気が良いなと感じた一冊である。
「ワルツ・フォー・ベビー」の終わりのシーンでは、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」が頭の中で流れたのは俺だけではないはずだ。

いや、ホントですって。
評価★★★★☆(5段階)

塚田努「だから山谷はやめられねぇ」

2006年08月02日 19時15分17秒 | 読書、書評
だから山谷はやめられねぇ―「僕」が日雇い労働者だった180日

幻冬舎

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 ごく普通の大学生の「僕」は、就職活動を前にしてドロップアウト。そして始めた東京・山谷でのドヤ暮らし。宿なし・金なし・家族なしの中年男たちと寄せ場や職安に通い、スポーツ新聞に掲載された求人を頼りに飯場の世界にも飛び込んでいく。彼らは、そして就職を選べなかった僕は、ダメな人間なのか?答えは肉体労働の中にある。だからひたすら汗をかく。今日も、明日も、明後日も―。ドヤ街の男たちと寝食を共にした一人の大学生による傑作ノンフィクション。幻冬舎アウトロー大賞大賞受賞作(アマゾンより)。

 就職活動の時期になると、人は「自分探しの旅」に出たくなるものだ。
アジアへ放浪してみたり、会社という組織に疑問を持ちニートになる者も。
著者は何を思ったのか、山谷へゴー。
人生勉強なのか、あるいはただの馬鹿なのか?
様々な人間模様が窺え、労働者達が何をし、何を考えているのかが分かる内容。
彼が山谷での180日間で何を得たのかは疑問だが、
山谷ドキュメントとしては楽しめる内容だった。
評価★★★★☆(5段階)