物欲大王

忘れないために。

東直己「バーにかかってきた電話」

2012年10月30日 09時10分45秒 | 読書、書評
大泉洋・松田龍平主演の映画「探偵はBARにいる」の原作本。
シリーズもので「原作を読むなら2作目から」との
評価を目にした事があるが、その通りだった。
前作よりも格段に面白くなっている。
描かれる主人公の「思っている事」がやや脱線気味で楽しい。

今野敏「疑心」

2012年10月24日 09時13分00秒 | 読書、書評
隠蔽捜査シリーズ第3弾。
妻に「あなたって唐変木ね」と言われるくらい変人の警察署長。
変人と言っても「まじめすぎる」変人なのだが。
本作では、そんな彼が若い女性キャリア官僚に恋をしてしまう。
妻子が居るのにもかかわらず、感じてしまった初めての恋心。
抗いたいけど、抗えない。苦悩する彼の心理描写が面白い。

アメリカ大統領来日の準備警戒中に、テロ情報があり、
その捜査にも当たるのだが、そんな事はもはやどうでもよい。
どのようにして「恋心」を解決するのか?
その事件の方が見逃せない。


山本周五郎「艶書」

2012年10月24日 08時54分23秒 | 読書、書評
 タイトルの漢字が美しかったので、
なんとなく買った作品。
「つやがき」だと思っていたが、
「えんしょ」の読み間違えで、ラブレターの事だそうだ。

2冊目の山本作品。
新潮文庫の今回は、文字フォントが大きめで
実に読みやすかった。
清々しい読後感に包まれる短編歴史小説だった。
「だだら団兵衛」が気に入った。

佐々木譲「廃墟に乞う」

2012年10月19日 09時11分51秒 | 読書、書評
 PTSDを煩い、休職中の刑事が事件を解決する連作短編集。
最初は「依頼者の話を聴くだけ」のつもりだったが、
「何か気になり…」独自の捜査を始める。といった内容。
興味深いのが、主人公に「やる気が見えない所」。
当初はあまり事件に関わらない様にするつもりなのだが、
やはり、刑事。本心とは裏腹に体は動いてしまう。
使命感というよりも、長年の経験で染み付いた「勘」で
行動を起こす所にリアリティがあった。

直木賞受賞作だが、エンタメ色は強くない。
じっくり読ませ、かつ心に残る小説だった。

森村誠一「人間の証明」

2012年10月15日 08時52分40秒 | 読書、書評
 CSの映画専門チャンネルにて鑑賞。
「心に残る映画だったなぁ」という強い印象。
何故だろう。そうか、エンディングに流れた主題歌のせいか。
西條八十の詩を英訳した歌。
ジョー山中の歌声が「良い映画」を「心に残る映画」に昇華させたのだろう。
終わりよければ全て良し。ちょっと違うか?

で、原作。
戦後日本の暗い過去を浮き彫りにした長編推理小説で、
実に読み応えがあった。
ネタバレになるが、母を訪ねてアメリカからやってきた息子を
その母親が殺してしまうという、考えてみればとんでもない事件なのだが、
頭の中で映画の主題歌が流れ、切ない気持ちになり、
「しょうがないよ。そんな時代だったから」と許してしまう。
音楽の力を見せつけられた作品。

一体これは映画の感想なのか、本の感想なのか???
まぁ、いいや。また聴こう。あの歌を。

荻原浩「噂」

2012年10月03日 09時09分31秒 | 読書、書評
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。
でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」
それは、香水の新ブランドを売り出す為に流した「噂」だった。
だが、その噂は本当になってしまう。
足首が無い少女の遺体が発見されたのだ。

荻原浩による警察小説。
世代間のギャップに戸惑いながらも、
それに逆らわず付き合っている描写が
優れている作家だが、
本書はそれを巧く利用した作品である。
中年刑事と渋谷のギャルのやりとりが微笑ましい。

後半に衝撃を受け、最後の台詞で愕然とした。