他人の事を「お主(おぬし)」と呼ぶ珍しい上司がいた。
尊敬できる人だったが、お互いのリストラにより疎遠になってしまった。
本書で登場する刑事も「お主(おぬし)」と呼ぶ人。まさかと思った。
あの人はお元気だろうか?久しぶりにメールをしてみようかと懐かしさを覚えた一冊。
誘拐犯の娘「朝倉比呂子」が大手新聞社に内定。
それをすっぱ抜いた週刊誌の記事により20年前の誘拐事件が再び動き出す。
新聞社の社長から命を受け、再び取材を開始する窓際社員の梶。
一方、比呂子は好奇の目に晒されてしまうのを恐れ、入社を渋ってしまう。
やがて梶は、事件当時には居ないとされた首謀者の存在に気付く。
事件の真相は?比呂子は内定を受け入れるのか?
そんなストーリー。
若干ネタばれになってしまうが、ミステリー小説の「真犯人」は大体が2人目だ。
「容疑者」がいて、それを読者と共に追い詰めるのだが、大抵の小説が後半あたりで
その「容疑者」が無実だということが露呈する。
まず、そこで驚き、その後「真犯人」が登場し、さらに驚く。
「容疑者」と「真犯人」とのギャップが面白い小説の要素なのだが、
今回はそのギャップが大きすぎて、しばらく固まってしまった。
「信じられない。どういう事だ?」と。
最後は新聞社らしい終わらせ方。
「手記」で腑に落ち、「エピローグ」でほっとした。
人の就職活動を応援する気になったのは、心が豊かになったからか?
それとも、本書の読ませる力がそうさせたのか?
まぁ、両方だろうな。