物欲大王

忘れないために。

辻仁成「マダムと奥様」

2010年01月24日 15時02分23秒 | 読書、書評
 中山美穂を妻に持つ、著者のフランスでの生活を記したエッセー集。
軽く読め、ファン以外の方にもオススメ。
中山美穂がちゃんと「主婦業」をやっているのが驚き。
いやいや、失礼。なんか仲良さそうで安心しました。
評価4★★★★☆(5段階)

山本兼一「火天の城」

2010年01月24日 14時44分02秒 | 読書、書評
 伝説の城、安土城を造った男達のお話。
プロジェクトXの戦国時代版といったところか。
歴史小説は「梟の城」以来、10年位手をださなかった。
当時は若かったのか、歴史小説は読み辛いという印象があったが、
本書を手にして考えが一変した。実に読みやすい。
もちろん、知らない言葉も出てくるが、それを辞書で調べ、理解することにより
物語の情景がさらに広がるのが楽しい。

後半で主人公が孫に職人とは何かを教える場面がある。
小説なのだが、名言である。座右の銘にしたい言葉である。
評価5★★★★★(5段階)

荻原浩「誘拐ラプソディー」

2010年01月23日 12時42分18秒 | 読書、書評
 史上最低のヘタレ男が主人公。
借金を抱え、しかも前科持ち。
自殺をするのに21ページも費やす男はいまだかつて見たことが無い。
腹を決め、車の排気ガスで自殺を図ろうとしたが、車の中に家出少年がいたので中断。
「おうちはどこかな?」と訊くと「あそこ」と教えてくれた家は大豪邸。
チャンス!とばかりに身代金目的の誘拐をすることに決める。
だが、その少年の父親はヤクザの大親分だった。
というストーリー。

大笑いできて最後に感動が待っている著者の作風が大好きである。
映画版の撮影も決まったので、面白さは折り紙付きだろう。
評価6★★★★★★(5段階)

東野圭吾「さまよう刃」

2010年01月19日 00時14分46秒 | 読書、書評
 ブックオフにて購入。読みたかったのでとても嬉しい。

花火大会に出掛けたきり、行方不明になった一人娘・絵摩。
やがて荒川から本人の死体が発見される。
悲観に暮れていると、犯人の名とアパートの住所を告げる密告電話が入る。
真相を確かめに父親がそのアパートに忍び込むと謎のビデオテープが散乱していた。
再生すると娘がレイプされている様子が撮られていた。しかも2人がかりで。
そこに犯人の一人が帰ってきた。迷わず犯人に襲いかかる父親。
その瞬間から彼は「被害者の父親」から「容疑者」に替わってしまう。
もう一人は何処だ?彼の復讐は続く。

重いテーマで色々考えさせられながら読んだ。
更正させる事は大事だけど、同じ立場ならどうだろう?
復讐は正義なのだろうか?正しい事なのだろうか?
裁くのは裁判だけで良いのだろうか?
う~~ん。悩んじゃうよなぁ。難しい問題だよなぁ。

と、思っていたら終盤になると急展開。
そこから著者の本領発揮。意外性の連続。
誰が奴を殺すのか?ああ!こいつか?と目星を付けたら違っていたり。
最後の場面でもう一つの謎が明らかになるのだが、はっきり言ってやられました。
「お!お前かぁ!!」って…

考えさせてから楽しませる。なかなかやるじゃん、東野圭吾。
評価6★★★★★★(5段階)


佐々木譲「笑う警官」

2010年01月18日 14時32分10秒 | 読書、書評
 アパートで女性警官の変死体が発見される。
容疑者として浮かび挙がったのが、かつて交際していた元同僚。
やがて、彼には射殺命令まで出されてしまうが、それは濡れ衣である。
彼は翌日に迫った百条委員会で警察の腐敗を洗いざらい「うたう」のだ。
そう。口封じの為に容疑者にされ、そして殺される運命なのである。
彼の潔白を証明するために、有志のメンバーが集まり、極秘で捜査が進む。
期限は翌日。無事に委員会で「うたう」事が出来るのか?
それとも殺されるのが、先か?

部署や性格が違うメンバーが集まり一つの目標を成し遂げる、いわゆる「チーム物」は
日本人にとって一番好感が持てるテーマなのかもしれない。
妻が読了後、「和製24だね」と言っていたが、まさにそうだな。
ハラハラドキドキがたまらなかった作品。
評価5★★★★★(5段階)

この文庫本は近所の古本屋で購入。
この古本屋がまた曲者で、本に栞代わりとして色々な物が挟まっている。
「笑う警官」にはシール付きのフィルムの様なものが挟んであった。
普段なら気に留めないのだが、なんとそのシールが溶け出しており、
ページ同士がくっついてしまっているのではないか!
落胆する俺。
頑張って剥がしたが、多少読めなくなってしまった。
そんなに重要なシーンでなかったのがせめてもの救い。
ちゃんと仕事をしてくれ。○○○オフ。

たまたまなのかなと思ったが、この店の本は物が挟まっているのがデフォルトの様だ。
レシートはもちろんのこと、先日は記念撮影の写真が挟まっていた。
おいおい。検品してるのか?と小一時間問いつめたい。
なので購入する前には必ず「ちゃんと読めるだろうか?」「何か挟まってないだろうか?」と
かなり入念にセルフ検品をするようになったのは言うまでもない。
物を買う側も注意しなければいけない時代が来てしまったのか。

佐々木譲「ユニット」

2010年01月18日 13時18分57秒 | 読書、書評
 最近は少年犯罪をテーマにした作品が多く見受けられるが、本書もその一つ。
冒頭で少年が強姦殺人を犯すのだが、そのモチーフはどうみても「あの事件」。
その少年が出所したのを知り、復讐を誓う被害者の男、真鍋。
一方、DV夫に悩み、ついに家を飛び出す決意をした主婦、祐子。
だが、その夫は現役の警察官。怒りにまかせてやりたい放題だから、
そう簡単には逃げられないのが怖い。
ひょんな事から真鍋と祐子は一緒の職場で働くことになる。
目的が違う2人だが、やがて心を通わせるようになる。
復讐は成し遂げるだろうか?DV夫から逃げられるだろうか?

出所した少年が社会復帰しようと奮闘するのだが、社会はなかなか受け入れてくれない。
やがて心が腐ってしまうのがとてもやるせない。
「私刑」は法律に反しているが、社会的には許されるのか?などと色々考えさせられた作品。
ま、深く考えずエンターテイメントとして楽しもう。
評価5★★★★★(5段階)

辻仁成「アカシアの花のさきだすころ」

2010年01月17日 16時13分09秒 | 読書、書評
 妻と一緒に通っている美容室で手に取った女性誌に著者のエッセイが載っていた。
読むと映画を撮った様で、その主役をお願いする様子が書いてあった。
よく読むとその主役はなんとアントニオ猪木。
え?まじですか?猪木さんですか?とビックリ。
で、本書はその原作。

一世風靡した元覆面レスラーと転がり込んだ孤独な少年との交流が描かれている。
心温まるストーリーで、楽しく読めた。もちろん頭の中の主役は猪木さんでね。
「だぁ~!」とかは言いません。あしからず。

表題作の他に、選挙運動中に亡くなった父の喪主を務める事になった男の話
「青春の末期」が収録されているが、そちらもオススメ。
生前、父親の様子を知る機会はあまり無い。
葬式で初めて父親の偉大さを知るんだよなぁ。
自分の時とオーバーラップしてしまい、涙が止まらなかった作品。
評価5★★★★★(5段階)

辻仁成「青空の休暇」

2010年01月17日 15時48分46秒 | 読書、書評
 妻がファンで著者の作品が大量に置いてある。
が、何故か手に取らなかった辻仁成。
「女性が読む」という固定観念なのか?

その時は読む本が無く、たまたま手に取ったのがこの作品。
読み終えたのが数年前で、記憶があやふやなのが残念。

75歳になる主人公の周作は戦友の早瀬、栗城と共に真珠湾攻撃から50年たった節目に
ハワイに旅立つ。
そこで出会う元敵兵のアメリカ人との交流。
お互いに抱えてきた心のわだかまりはあったが、やがてお互いの気持ちが一つになる。
そこに一機の零戦が発見される。もちろん動かないが、
彼らはそれを修理し再び飛ばそうと奮闘する。

映画化を期待する作品で、主役の周作役は是非「高倉健」さんで。
真面目で真っ直ぐな周作が格好いい。
戦時中だったが、一生懸命だった頃の青空が蘇ったかの様な小説だった。
評価5★★★★★(5段階)

石田衣良「下北サンデーズ」

2010年01月12日 18時00分22秒 | 読書、書評
 演劇の聖地・下北沢を舞台にした青春ストーリー。
新規入団した女性と共に劇団も成長してゆくという物語。

が、つまらない。
棘も毒もないのが不満。
階段を一つ一つ昇っていくが、たまには転ぶだろう?人間って。
「まっすぐ」過ぎて不満だけが残ってしまった。
著者の作風だが、もうちょっとなんとかならないか?
評価3★★★☆☆(5段階)

山田宗樹「嫌われ松子一生」

2010年01月12日 17時48分22秒 | 読書、書評
 哀れ。それしか思いつかなかった。
読了後、映画版も観たのだが、これもまた哀れ。
なるべく「明るく強く生きた人生」を描こうとしているのだが、
やはり哀れ。
ハッピーエンドで終わる人生なんてごく一部なんだろうな。
フィクションなのだが、そう思えない。
赤の他人(フィクション)のお話だが、実に引き込まれた松子さんの生涯であった。
評価5★★★★★(5段階)

佐々木譲「制服捜査」

2010年01月12日 17時36分34秒 | 読書、書評
 帯に「このミステリーがすごい!」第2位!と書いてあったので購入。
主人公はいわゆる「窓際に飛ばされた元刑事」。
普通の人間なら腐ってしまうが、この男は違う。
真摯に事件に立ち向かう姿が格好良い。
私としては「このミステリーがすごい!」ではなく、「この元刑事は偉い!」だった。
ぶれずに信念を持って仕事をする姿に感銘を受けた。
評価5★★★★★(5段階)

東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」

2010年01月12日 17時14分05秒 | 読書、書評
 加賀シリーズ第3弾らしい。
様子がおかしい妹の元へ駆けつける警察官の兄。
ベットの上には妹の亡骸が…
警察では自殺と判断されそうだが、妹は「殺されたんだ」と
兄は犯人を一人で追う事を誓う。
不穏な動きをする兄の前に立ちはだかるのが、加賀刑事。
復讐に燃える被害者の兄と事件を解決する刑事とのバトルが緊迫感があってたまらない。
どちらが犯人なのか?が本書のテーマだが、どちらかが犯人に辿りつくのか?も面白い。
評価4★★★★☆(5段階)