物欲大王

忘れないために。

馳星周「トーキョー・バビロン」

2012年09月25日 08時49分56秒 | 読書、書評
会社を乗っ取られ、莫大な借金を背負った元IT長者。
左遷され、フロント企業で働くヤクザ。
肝臓を壊したNO.1ホステス。
いわゆる「負け組」の彼らが目をつけたのが、
とある悪徳消費者金融のブラックマネー。
騙し、騙され、一体誰がその金を手にするのか?
最後に笑うのは誰か?が面白い暗黒小説だった。
著者おなじみの暴力描写がエグくて良い。
心理的に追い込んでから、執拗なまでに暴力を加える。
反撃の気持ちが起きないように打ちのめす。
それも、「諦める」まで執拗に。
実際のヤクザもこんな感じなんだろう。
奴らに関わると最後、骨までしゃぶり尽くされる。
肌寒い読後感であった。

性描写も卑猥だ。
官能小説同様、あからさまに描くので赤面してしまう。
電車の中で読んでいた所、若い女性が隣に座って来た。
ちょうどその時、エロシーンがスタート。俺超赤面。
後で思ったが、そういう時は本を閉じろよ。俺。
でも、かなり興奮した。
すいません。

三浦綾子「塩狩峠」

2012年09月18日 09時23分07秒 | 読書、書評
古本屋の100円コーナーで何気なく手に取った本書。
読了後、「やべえ。涙が止まらない」。
嘘です。泣きはしなかったが感動した。
思いがけず素晴らしい本に出会えたのは、
神様のお陰だろうか。いや、古本屋のお陰だろうか???

キリスト教信者の事を「ヤソ」と呼び、差別されていた時代。
永野信夫も最初は否定はしていたが、やがて導かれる様にキリスト教信者になる。
彼の真っ直ぐな心に惹かれ、周りに居た人たちも次々と信者になる。
そんな彼にも愛する人が居た。だが、彼女は病気を煩っていた。
医者も匙を投げ出す大病。必死に祈る信夫。
すると彼女の病気が良くなり、彼らは結婚する事になる。
幸せはそこまでだった。結納に向かう為に乗った列車が脱線。
信夫は迷わず車両の前に身を投げ出し、文字通り「体で停めた」のだった。

これが実話だという事に驚いた。
さらに、信夫の純真さに心を打たれた。
最近覚えた四字熟語「桃李成蹊」はまさに彼の事だろう。
心が本当に真っ直ぐすぎて、これが怪しい宗教だったら
見事にだまされる気がするのは俺だけか?
宗教問わず、「信じる事」とは何か?を教えてくれた1冊。
ありふれた自己啓発本より、本書を読む事をお薦めする。



城山三郎「指揮官たちの特攻―幸福は花びらのごとく」

2012年09月18日 09時00分37秒 | 読書、書評
初城山作品。
特攻隊として散っていった2人の指揮官を追ったドキュメント。
「国の為に喜んで」突っ込んだのではなく、
みな、悩んだり、苦悩しながら突っ込んでいったんだな。
敗戦間近で立案されたこの作戦は無謀で、かつ惨いものだったが、
死んでいった隊員はもちろんだが、
「突っ込んでくれ」と言った隊員も批判は出来ない。

彼らだってもの凄い悩んだだろうし、後悔しているだろう。
そんな人間に鞭を打つ事はしてはいけない。

三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

2012年09月18日 08時50分25秒 | 読書、書評
直木賞受賞作。
地元で便利屋を営む多田。仕事先で中学校の同級生の行天と再会する。
行天は「住む所」が無い身なので、多田は仕方なく同居をするハメに。
やがて、便利屋を手伝う行天。ちょっとしたトラブルメーカーでもあるが、
彼のお陰で問題が解決したりもする。
ギクシャクしながらも友人として付き合っていく距離感が楽しい、
連作短編集。

荻原浩「ひまわり事件」

2012年09月13日 09時13分33秒 | 読書、書評
老人ホーム「ひまわり苑」と隣接する幼稚園「ひまわり幼稚園」。
共に経営する理事長は現役の県会議員で、その家族が運営。
理事長の選挙対策により、隣接する老人ホームと幼稚園の壁が取り払われた。
「老人と子供達との交流」という名のマスコミ対策。
お互い探り探りの交流が始まる。

やがて、両施設の不正や横暴が露呈。
老人ホームには、元過激派だった老人を中心に、
抗議行動の機運が高まる。
だが、一行に改善の気配が無い。
老人達は決起し、立てこもり事件を起こす事に。
何故かそこに子供達も合流。
世代を越えた「共闘」が始まる。

とまあ、こんな感じ。
著者ならではのハートウオーミングストーリー。
温かい気持ちで読了。

つか、老人ホームってこんなにヤバい所なのか?
金だけ取って……やめておこう。


佐々木譲「巡査の休日」

2012年09月12日 09時07分17秒 | 読書、書評
道警シリーズ第4弾。
前作(だったと思う)で、発砲され現行犯逮捕されたストーカー犯「鎌田光也」が病院を脱走。
が、捜査空しく1年が経ってしまった。
やがて、その鎌田が起こしたと思われる強盗事件が神奈川で発生。
一方、札幌ではストーカーの被害者に鎌田からと思われる脅迫メールが届く。
よって、鎌田に発砲した女性巡査が再び被害者の護衛に付く事になった。
だが、被害者はよさこいソーランで踊る事が決まっていたので、
女性巡査も同じ舞台に立ちながら、被害者を守る事になった。

前作に比べ、緊迫感があって良かった。
犯人はどこから現れるのだろうか?
ドキドキしながら読了。


麻生太郎「自由と繁栄の弧」

2012年09月11日 09時05分25秒 | 読書、書評
様々な会合で発表されたスピーチをまとめた1冊。
これを読んで、「我が国に誇りを持って良いのだ」と思った。
「バラまき」と批判されているODAだけではなく、
技術や知識を惜しげも無く提供し、諸外国の発展を手助けしている。
カンボジアではポルポトによる知識人の虐殺により、
法律が未整備状態であった。
それを我が国の法律家が指導し、それが着実に実を結んでいるそうだ。

国内のみならず、海外での自衛隊の活躍も素晴らしい。
技術力は勿論のこと、特に隊員達のマナーが凄い。
隊員が現地で起こした事件はゼロ。
我々日本人には当たり前だが、世界的には衝撃だそうだ。

自衛隊で頑張っている後輩が居る。
我が国、そして世界で頑張ってほしい。
俺の誇りだ。

批判だらけであった元首相。
在任中に国民が本書を読めば、少しは日本が変わっていたのかもしれない。
読了後、そう感じた1冊。

最後に「麻生太郎の家系ってヤバい(凄すぎて)」


今野敏「罪責~潜入捜査~」

2012年09月01日 13時19分07秒 | 読書、書評
元マル暴刑事が環境犯罪に立ち向かう「潜入捜査」シリーズ第4弾。
まぁ、「隠蔽捜査シリーズ」と間違って買ったのだが。

描かれるヤクザの暴力が「酷い」。
心まで容赦無く痛めつける描写がリアルで良かった。

そんなヤクザを「バタバタ」と倒すのが元マル暴刑事の佐伯。
古式泳法もとい古式拳法の遣い手で、その描写がとても巧い。
調べると、著者は空手家でもあり道場を開く程の腕前の様だ。
納得。


後藤忠政「憚りながら」

2012年09月01日 12時55分47秒 | 読書、書評
「昔の俺は本当に悪かった」と、武勇伝を語る男ほどみっともないものは無い。
けれど、著者の武勇伝は許されるだろう。
だってこの人「あの後藤組の組長」だったから。
伊丹十三襲撃事件などしょっちゅう新聞紙面を賑わした当事者。
引退したからこそ語れる話が盛りだくさんでした。

万城目学「プリンセス・トヨトミ」

2012年09月01日 07時42分19秒 | 読書、書評
映画原作本。

大阪に東京から会計検査院の調査で3人の役人がやって来た。
淡々と仕事をこなす彼ら。
だが、ある団体だけ連絡をしていたにも関わらず不在だった。
その名は「OJO」。活動内容も良く分からない。
後日、連絡が取れ、再度訪問する調査員。
そこで、彼は驚愕の事実を聞かされる。
大阪中の男達が、豊臣家の末裔を護っているというのだ。

とまあ、こんなお話。

大阪では秀吉の事を「太閤さん」と呼び、
とても親しまれているそうだ。
その末裔(女子中学生)が「危機」に陥った時の、
男達が格好良い。侍魂とはこういう事なのか。

物語のベースには、豊臣対徳川の戦いがあるので、
歴史が詳しい人なら楽しく読めるのではないだろうか?

調査員の一人「旭ゲーンズブール」という名前と、
「大阪国首相」の息子に女装癖があるという設定。
この2つだけ気に食わなかったが、後は楽しめた。
読了後、映画版も鑑賞。
原作の世界観を巧く再現していて、こちらも面白かった。

ちなみに著者は「まきめまなぶ」って読むそうだ。