2日前、母親から入電。
「7月19日空いてるよね?」と母。
「いや、その日はちょっと用事が入っている」と俺。
「あら、そうなの?だってお父さんの命日なのよ」と母。
え?あら。
俺。父親の命日を忘れる。
いや、正確に言うと「命日を覚えていなかった」のです。
すいません。人として最低です。
母によると、「当日家族が集まるので来い」との事。
そりゃそうだ。親父の命日である。家族が集まるのは当然だ。
当然というより、義務である。
「あ。でも、3時位までだったら大丈夫です」と俺。
当然、「夜に大事な公演がある」とは言えませんでした。
親父ごめんなさい。もう忘れません。命日は7月19日だということを。
1日前、会社にて。
ウチの会社は土日が休みの週休2日なのだが、まれに休日出勤になる場合がある。
「物欲君。19日は出勤可能?」と上司。
「すいません。19日は無理です」と俺。
普段ならば「分かりました」で済むのだが、頭数が足りないらしい。
「何か予定入っているの?」と食い下がる上司。
「そうなんです。ごめんなさい」と俺。
さらに尋ねられれば「親父の命日がありまして……」と答えたのだが「分かりました」と諦めた上司。
ホントすいません。その日は親父の命日なのだが、夜には上野の文化会館に行かなければならないのです。
実は夜がメインでして。
バレエ観に行くんです……
仕事サボって、父親の命日に中抜けして……
はい。そうですね。人間として最低ですよね。分かっております。
でも、観に行くんですバレエ。
だって今回観に行くのは
アメリカン・バレエ・シアター
の来日公演なんです。
簡単に説明するとアメリカン・バレエ・シアター(以下ABT)とはバレエ界のメジャーリーグ。スターダンサーばっかりのバレエ団。バレエなのに何処かハリウッドの香りがするのは俺だけか?
メンバー全員がCGなのかと勘違いするほどのテクニック。
いや、実際に勘違いしたのが動画サイトで発見した
この動画。
海賊での鬼フェッテ。CGだよな?え?
演じているのはアンヘル・コレーラ。一発でファンになりました。
彼を生で観たいと思うのは人間として当然だよな。
で、タイミング良く来日公演の発表。
勿論、チケットをゲット!
チケット代金はウチの奥さん。いつもありがとう。
で、演目は「海賊」。コレーラ演じるのはアリ。
白鳥の湖を観たかったのだが、それは平日の公演。
残念だったが、アリの「海賊CGフェッテ」を生で観られるのだ!
公演前日、「楽しみだね」と妻と盛り上がる。
煙草を吸いにベランダへ。何気無くミクシィへアクセス。
トピック最新情報にこんな文字が。
アンヘルは怪我のため来日中止
おい!嘘だろ?
慌ててインターネットに繋ぎ、調査開始。
……事実らしい。
……現実らしい。
暫く凹む夫婦。
うわ。どうしよう。立ち直れねぇ。
とはいえ、ニーナ・アナニアシヴィリを観られるし、コレーラの代役はホセ・カレーニョである(これには妻が大喜び)。
コレーラの怪我は残念だが、それでもメジャー級の舞台が観られるのである。
「きっと良い舞台になるよ!」と夫婦で納得。
当日、夫婦で寝坊をしたので慌てて実家へ。
親父に線香を焚き、皆で寿司を共にし、ビールで乾杯。いや、献杯。
暫く談笑をし、実家を後にする事に。
電車に乗り、いざ東京へ。
いやぁ、酔った体に炎天下はキツイね。
酔いが醒めた頃、上野に到着。文化会館へ。
さあ、夢の始まりだ!
ヒロインのメドーラを演じるのが、ニーナ・アナニアシヴィリ。
妻の大好きなプリンシパルで、今回のツアーでABTを退団し故郷のグルジアに帰るらしい。
アリがホセ・カレーニョ。コンラッドはマルセロ・ゴメス。
演奏は東京ニューシティ管弦楽団。数多く演奏をこなしているだけに、巧い。
圧巻だったのが、ダンサー達の「ラインの美しさ」。
以前観たテレビで解説をしていたのだが、「体を美しく魅せるのに大切なのが45度のライン」だそうだ。
ダンサーを中心として手や足を伸ばす時に体のラインを「なるべく45度に近づける」とダンサーが一番美しく見えるのである。
ABTのダンサーは全員それが出来ていた。
キッチリと45度。基本が完璧なので、何をやっても美しい。
軸がブレるダンサーも少ない。
自由の国アメリカらしい派手なテクニックが目立つのだが、基本を疎かにしないのは意外だった。
さて、ニーナの感想を。
凄いね。この人。
どんなバリエーションでも「キッチリ」と決めてくる。
圧巻だったのが、ピルエット。
「止まりたくないの♪」とず~~~と回ってた。
「余裕なの♪」とクルクルと。
大神楽でいうならば「いつもより多く回しております」状態。
どちらかというと、派手なバレエを好む私。
今まであまり「グラン・パ・ド・ドゥ」で感動した事が無かった。
2幕でのマルセロ・ゴメスとニーナの演技でそれが覆された。
「静のバレエ」の美しさを感じ、本物の女性の美を魅せてもらった。
うぁ、愛人にしたいね。こんな人。
すっごく美しかったです。
一方の男性人も凄かった。みんなが「俺が凄いぞ」と。
とりあえず「アピール」。身体能力がハンパないね。
そんなこんなであっという間に終演。
カーテンコールではリフトで登場したり、ニーナが男性ダンサーに飛び乗ったりと大サービス。
どうもありがとう。
ブッシュは嫌いだけど、アンタ達は大好きだよ。
この記事を書いている現在、ロシアとグルジアが揉めて戦争になっている。
芸術を愛する人間として、とても心配である。
と、いうことで
親父の命日は7月19日。
忘れてはいけない。
※素人が書いた感想なので、ツッコミ所が満載だと思います。間違った箇所があれば、優しく指摘をしていただければ幸いです。