アリスは車に弱い。
車に乗せた途端に、キャリーバッグの隅に顔をうずめて、じーっと耐えている。
子犬の時は吐きもした。
私も子供時代はひどい車酔いで、車が大嫌いだった。条件反射的に気分が悪くなったものだ。
成人になって車を運転するようになってから、車は楽しいもの、と変化した。
なのでアリスにも慣れてもらおうと、散歩の帰りには駐車している車に乗っておやつをあげた。
初めのうちはおやつも拒否をしていたが、どんどん慣れてきた。
そして、春めいた昨日。
アリス～、お散歩に行こうか♪
今日は後部座席に座ってみようかな。
へぇ～、こんな風なんだ、後部座席って。考えてみれば、私は今まで一度も座ったことがない。
後部座席は、いつもスーパーやホームセンターの買い物がドサリと積まれるだけだった。
最後に座って、車の隅々を眺めてみる。 今までちゃんと見ていなくてごめんね。
トランクに詰め込んでいた諸々を取り出して掃除をする。
枯葉も入り込んでいたのか……。気づかなくてごめんね。
近くのガソリンスタンドできれいに洗車をしてもらう。
……まだ…まだだ！ まだ引き渡したくない！
車屋を素通りし、いつものホームセンターに連れて行ってもらおう
ジャスミンとアリスのおやつをいっぱい買って、家の前に停める……。
ごめんねベルタ、もう駐車場には戻らないんだよ。
陽が延びた夕方、ぎりぎりまで待って、車屋に引き渡す。
さようなら、ありがとう、ベルタ
今朝、カーテンを開けた窓の外の風景は、ぽっかりと穴が開いていた……。
あ、ジャスミン、おはよう～。
ジャスミンは、今、朝食を済ませてやって来たのだ。
ふ～ん、美味しかったんだね？ ん？
まぁね、キレイ好きなのはいいけどね……指の股も、ね。
私の心の穴は、ジャスミンやアリスがすぐに埋めてくれそうです。
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