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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

既存のITシステムを社会保障番号に対応させる方法 その2

2009年11月25日 10時15分28秒 | 情報化・IT化
納税者番号について「長期的な課題だが、そろそろ導入の検討に入るべきだ」などと、今日も発言があった。
税と社会保障の共通番号制度の導入と並行して、国税庁と社会保険庁(1月から日本年金機構)を統合する「歳入庁」の創設も合わせて検討していく必要性も指摘されている。

納税番号と歳入庁セットで検討=菅副総理
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091124-00000078-jij-pol

これだけの大きな制度となると、どの省庁が中心となって検討することになるのだろうか。

このブログでは、昨日に続いて、社会保障番号について考えていきたい(納税者番号までは、なかなか追いかけられない)。
社会保障番号を現在の「保険者番号と被保険者番号の組」の代わりに使おうとすると、かなりやっかいな問題に直面する。社会保障番号は、国民一人ひとりに割り当てられる番号で、資格の異動があったとしても番号もカードも変わらない。例えば、今日付け(11月25日)で勤めていた会社を退職して無職になる、国民健康保険の加入手続きをした場合、どうなるだろうか。番号もカードも変わっていないから、医療機関は、資格が異動していることに気づかない。そのため、昨日までと同じように受診できる。医療機関は、そうと知らずに、被用者保険の被保険者のままだと思って支払基金にレセプトを提出することになる。これで間違いなく審査支払の事務ができるだろうか、という問題である。

社会保障番号だけでは、どの保険者の被保険者かわからないため、保険者は審査支払機関に「保険者番号と社会保障番号の組」と「資格を取得した日・喪失した日」をあらかじめ登録しておくことになる。この2つの情報があれば、社会保障番号が記載されたレセプトを医療保険者におくることができる。
わかりやすくするため、被用者保険の保険者をA、国民健康保険の保険者をBとすると、11月24日までの請求は保険者Aに、25日から30日までの請求は保険者Bにおくられるようにしなければならない。大きな問題は、レセプトのデータには、請求明細=医療行為の年月日データがない、ということである。医療機関からは1枚のレセプト(1つのファイル)で請求を出してくるので、資格異動の情報が登録されていたとしても、保険者AとBに請求分を切り分けておくることができないのである。
しかも、保険者Aは支払基金に資格喪失の情報を、保険者Bは国保連合会に資格取得の情報を登録することになるので、支払基金と国保連合会の間でそれらの情報を交換したり、相互に照会をかけられるようにしておかないと、切り分け先がわからなくなる(導入される頃には、審査支払機関は1つに統合されているかもしれない)。

さらにやっかいなのは、国民健康保険の加入手続きをせずに「無保険」となってしまう場合である。支払基金が国保連合会に問い合わせてはじめて無保険になっていることがわかる。医療機関は、社会保障番号が印字されたカードからは資格を喪失していることに気づかない。つまり、何かをするたびに支払基金と国保連合会を通して、資格を確認しなければならないということである(休日明けの午前中にアクセスが集中するので、それなりの仕組みが必要になるらしい)。

保険者間の異動は、1年間で全被保険者の3分の1程度にも及ぶらしい。これは例外的な場合に起こりうる問題ではない(ただし、導入される頃には、保険者が統合・再編されて数が少なくなり、比例して異動も少なくなっているかもしれない)。

解決する方法は、レセプトのデータフォーマットを変更して請求明細の年月日をわかるようにすること、レセプトオンラインネットワークを使って資格を確認できるようにすること、である。医療保険の被保険者番号、介護保険の被保険者番号、基礎年金番号などを社会保障番号に統合していくことになれば、様々なところに影響が出る。やっかいな問題も出てくるし、医療機関のレセコンや介護保険の事業者の請求システムなど、ITシステムの入れ替えも必要になる。運用も変えなければならない。それならば、それらの番号を残してこれまでどおりの運用を続け、社会保障番号と紐づけるようにする方法が現実的かもしれない(それならば、何のために社会保障番号を導入するのか?)。

大きなテーマになりそうなので、引き続き、検討していきたい。