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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

既存のITシステムを社会保障番号に対応させる方法 その1

2009年11月24日 10時08分31秒 | 情報化・IT化
納税者番号と社会保障番号の「共通番号制度」の導入に向けて、本格的に動き出しそうである。
日本証券協会が個人投資家に対して行った意識調査では、節税への期待感などから「導入すべき(36.6%)」が「導入すべきでない(19.5%)」を上回る結果が出た。しかしながら、「分からない(42.5%)」と答えた人も多く、株式の売却損益や配当などの管理に加えて会社からの給与なども一つの番号で管理されることになると、答えも変わってくるかもしれない。

納税番号、導入支持が過去最高に=節税に期待感-日証協調査
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009112200059

納税者番号と社会保障番号の制度・運用がどのようになるかはまだ明らかになっていないが、今回は、社会保障番号について考えてみたい。
このブログで書けそうなのは、社会保障番号から各保険者が管理に用いている被保険者番号のあたりが中心で、納税者番号から住民基本台帳番号へ、住民基本台帳番号から社会保障番号へ、社会保障番号から各保険者の番号へといった一連の流れの一部に過ぎない。逆にいえば、複数の分野の専門家を集めて検討を深めていかないと、制度・運用に必要な議論が満足にできないということである。

さて、社会保障番号を導入するためにはどうすればよいのだろうか。

医療保険制度や介護保険制度の保険者が導入しているITシステムの基本的な機能は次のようなものである。
基本となるのは、被保険者を管理するシステムである。被保険者の基本情報と資格情報からなり、資格の取得・喪失などを主に管理する。保険者としての業務を円滑にサポートするために、保険料の管理システムと給付実績の管理システムがある。この2つのシステムは、被保険者の管理システムと密接につながっており、キーとなる番号は、被保険者番号である。さらに、これらのシステムに必要なデータを外部のITシステムとやりとりするインタフェースがある。例えば、市町村国保のITシステムは、住民基本台帳システムなどの異動データを取り込んで被保険者資格の管理をしている。このように保険者が管理しているデータを最新の状態にし、事務処理のきっかけとするためのインタフェースシステムが必要となる。
医療保険制度においては、個人は、「保険者番号と被保険者番号の組」で特定することができる。新たに個人を特定する番号として「社会保障番号」が導入されると、その2つの番号をどのように紐づければよいかが問題になる。簡単に思いつく方法は次の2つ。保険者が一意の番号として振り出している被保険者番号の使用を止めて、社会保障番号に切り替える第1の方法。現在のITシステムをそのまま使い、管理するデータの一つとして社会保障番号を位置づける。社会保障番号は別の機関が振り出し、管理する第2の方法である。

社会保障番号の導入が決まったとしても、移行にはそれなりの時間を要する。現在の被保険者証に記載された「保険者番号と被保険者番号」を使って出されるレセプトと、新たな被保険者証に記載された「社会保障番号」を使って出されるレセプトが混在する可能性があるということである。そのような場合でも問題なく運用できるようにするためには、いずれのデータでも取り込める第2の方法が適切。しかし、パッチをあてて何とか動かしているようなものなので、社会保障番号に完全に切り替わってから更改するITシステムは、第1の方法が適切だろう(一番の問題は、社会保障番号への対応が求められる時期と、医療保険者の統合・再編の時期が重なりそうなことである。うまく計画しないと、多くのIT投資が無駄になる)。

社会保障カードを支える連携基盤システムを考えるにあたって、このような検討がなされたと思われる。実証実験にかける費用をこれらの検討の詳細化・具体化にまわして、早めに情報提供してほしい(このブログで書いたように、社会保障カード=ICカードはオーバースペック。カードの券面に2次元バーコードを印字しておけばよい)。