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津波の避難情報「災害弱者」に伝わらず 課題が改めて明らかに

2010年03月01日 20時18分52秒 | 情報化・IT化
南米チリ沿岸の大地震による津波が日本を襲った。最悪の事態を考えて三陸沿岸一体に「大津波警報」が出されたが、人的な被害を出すことなく、1日の午前中にすべて解除された。青森県・岩手県・宮城県の36市町村のうち、34市町村が「避難勧告」よりも強く避難を促す「避難指示」を出したものの、指定の避難所などに避難してきた住民は6%に留まったとのこと。指定の避難所でなくても、高台に避難するなどの何らかの行動をとった住民も多くいると思われるため、6%の是非を問うことはできないが、災害時の情報提供の難しさが改めて浮き彫りになった。

避難所利用は6% 津波到達予想時刻にサーフィンも
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100301-OYO1T00591.htm?from=top

最悪の事態を考えて強めの情報提供をすると、住民は「この前は3メートルの津波が来るといっていたが、1メートルぐらいで被害も出なかった。今回も避難しなくても大丈夫」と判断して避難しなくなってしまう。「狼が来た」と叫び続けると、本当に狼が来たときに逃げ遅れてしまうようなものである。かといって、弱めの情報提供を続けると、本当に3メートルの津波が来たときに大きな被害を出してしまう。

避難住民「すごく怖い」=50年前思い出す-津波観測で宮城、岩手
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010022800312

被害にあった記憶があると、受け取る情報は同じであっても行動は異なる。50年前のチリ地震の津波で41人が亡くなった宮城県南三陸町では、防災行政無線で大津波警報のアナウンスが響き、町内の志津川漁港近くでは、避難所へ向かう人や車が慌ただしく行き来したとのこと。

このようななか、避難情報が届かない「災害弱者」の課題も明らかになった。今回は人的な被害が出なかったとはいえ、避難情報が届かない人たちが逃げ遅れるおそれがあった。これらの課題は、以前から指摘されてきたことであり、国としてもITを活用するなどの対策を講じてきたことである。報じられているのは、次の2つのニュースである。

1つめは、宮城県が外国人向けにメールで地震や津波などの情報を伝える「県災害時外国人サポート・ウェブ・システム」の英語版で、「A tunami will not occur after this earthquake(津波は起こらない)」と配信していたことを伝えるニュース。英語版の登録者数は92人。原因は、システム管理者がメッセージ(文章)の選択を誤ったためという。

【津波警報】「津波は起こらない」 宮城県が外国人向けメールで誤配信
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/100228/dst1002282331062-n1.htm

「津波の心配ない」と誤配信 宮城県の外国人向け情報
http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY201002280310.html

2つめのニュースは、1日の「障がい者制度改革推進会議」で聴覚障害者の委員らが「テレビの定時ニュース以外はまったく字幕がない。不安といらだちの一日で、一体どうなっているか全くわからなかった」と訴えたことを伝えるニュース。厚生労働省と総務省、NHKあてに手話通訳や字幕放送の拡充を求める要望書が出されたとのことだが、今回が初めてではないだろう。例えば、10年ほど前の「東海村JCO臨界事故」においても、東海村がサイレンを使って事故を知らせ、防災無線を使って屋内退避などを呼びかけたが、聴覚障害者に対する誘導などが行われなかったことが大きな問題となった。それから何も変わっていないということである。

津波避難「聴覚障害者への情報不十分」 政府が対策検討
http://www.asahi.com/national/update/0301/TKY201003010338.html

なお、情報が届かずに「災害弱者」となりうる者は、聴覚障害者のみではない。字幕や文字放送があれば解決できる課題でないことは言うまでもない。