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社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会、第2回検討会開催される

2010年02月23日 09時31分13秒 | 情報化・IT化
22日に、税と社会保障の共通番号制度の第2回検討会が開催された。
第2回検討会で明らかになった方針は、以下のとおり。

・既存の番号と共存させる
医療保険の被保険者番号や基礎年金番号などの既存の番号を残し、それらを束ねる「共通番号」を導入する。
既存の番号を共通番号で置き換えると、他制度の情報を紐付けてみられるようになる。メリットもあるが、情報の漏洩や他目的での使用などのデメリットのほうが大きいとの判断なのだろう。
被保険者番号を廃止して、共通番号に置き換えるとすれば、何らかのサービスを利用するたびに、その番号を他者に知らせなければならなくなる。多くの情報を引き出せる番号が流通することに国民は不安を抱くだろう。プライバシーに配慮すると、裏で束ねる番号として使ったほうがよい。
このような議論の結果、1つの番号に集約しない方向で意見が一致したとのこと。

・住民基本台帳ネットワークを活用する
検討会の終了後、古川内閣府副大臣(事務局長)は「住基ネットが一番幅広く付いている番号であることは事実」や「外国人は入っていない」と述べ、住民基本台帳ネットワークを使う方向で検討していること、検討課題が残っていることを明らかにした。
峰崎財務副大臣も個人的な意見と前置きしつつ、「住民基本台帳ネットワークが適していると思う」と述べている。財務副大臣=納税者番号として、住民票コードそのものを使うか、住民票コードと連携する新たな番号を付与するかという議論がなされたものと思われる。
このブログで何度も取り上げているが、住民票コードの利用目的の拡大(報酬を受け取る相手に知らせる、その相手が番号をデータベース化するなど)には住民基本台帳法(第四章の二 第四節 本人確認情報の保護)の改正が必要となる。
住基ネットの最高裁判決において「行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではなく、自己のプライバシーに関わる情報の取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されたとする被上告人ら(原告ら)の主張にも理由がない」とされていることからも、住民票コードを納税者番号として広く流通させることは難しいと考えられる。

住民基本台帳法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO081.html


新聞各紙の情報を総合すると、社会保障の分野においては、既存の被保険者番号をそのまま使い、保険者や市町村などの内部で共通番号を持ち、表に出ている個別の番号と裏で紐づけられるようにすること。税の分野においては、広く使われる納税者番号を国民全員と外国人に付与すること(その番号が、住民票コードと同一になる可能性も検討する)。社会保障の分野の番号と税の分野の番号は同一か簡単に紐付けられるようにすること。複数のITシステムの連携の核に住基ネットを置くことという、共通番号制度の概観がおぼろげながら見えてくる。

社会保障と税の共通番号、既存番号と併存へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100222-567-OYT1T01145.html

複数分野束ねる「基礎番号」検討=社会保障と税の共通制度で-第2回検討会
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-100222X012.html

共通番号に住基ネット最適 峰崎財務副大臣
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100222-00000583-san-bus_all

社会保障の給付や所得税の決定などの事務に住民票コード=共通番号が使われることに関して、国民の理解は得られやすい。しかし、その番号を国民全員が持ち運び、会社にも知らせ、何らかの報酬を受け取る際には、第三者にも知らせなければならないとなれば、理解は簡単に得られないだろう。住基ネットの最高裁判決もあることから、納税者番号を新たに付与し、その番号と住民票コード=共通番号と紐付けられるようにしておく、というのが現実的な「落としどころ」になると思われる。
外国人は住民票コードを持っていないため、この仕組みに乗せるならば、外国人登録制度の見直しが必要になる。外国人登録をしていない人たちが多くいるし、市町村が引越しや帰国などの異動情報を把握できていないなどの問題があり、新たな在留管理制度へと移行しないと対応できないと思われる。