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税と社会保障の共通番号制度の検討開始 5月までに複数案を整理

2010年02月10日 10時05分18秒 | 情報化・IT化
8日のことになるが、政府が「税と社会保障の共通番号制度の導入に向けた検討会」の初会合を開催し、検討を本格化した。
明らかになったスケジュールに関しては、菅副総理・大臣のインタビューから推測したものよりも、さらに前倒しの印象がある。試案の作成に2~3ヶ月、年内に方向性を出し、複数の試案作成が5月。来年度の通常国会での法案提出。導入と利用開始は早ければ2013年度から(前年度の1月からの利用開始)となっている。

政府、納税者番号制度の検討開始 5月めどに試案
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020801000880.html

「社会保障番号」議論を本格化…検討会が初会合
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20100208-567-OYT1T01109.html

共通番号制度、11年に法案 政府検討会、5月メドに複数案
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100209ATFS0803G08022010.html

あくまで「目標」としているが、明らかになったスケジュールを整理すると、

2009年度
・「番号制度に関する検討会」などの検討体制を立ち上げ
・基本的な方向性を議論
2010年度
・5月までに、基本的な考え方(3類型、利用範囲など)を整理。年末までに絞り込み
・年内に基本的な方向性を出す(基本的な方針の策定)
・1月に関連法案の提出
2011年度
・関連法案の成立
・共通番号の付与やITシステムの改修などの準備
2012年度
・共通番号の付与やITシステムの改修などの準備(継続)
・制度の導入
・2013年1月から利用開始
2013年度
・制度の本格利用

となる。自民党政権下でも検討を続けてきたが、結論を出すに至っていない。現政権でも簡単に結論を出せるとは思えない。検討が長引いたり、共通番号の付与などに時間を要したりということなら、1年間の後倒しとすればよい(それでも当初の計画どおり)との計算だろう。
検討会は、国家戦略室を中心とした省庁横断型。メンバーは、平野官房長官、仙谷国家戦略大臣、原口総務大臣、長妻大臣と関係各省の副大臣らで、菅副総理・大臣が会長を務める。社会保障カードや電子私書箱のような「学識経験者(各省庁の御用学者)」を座長に据えて役人が仕切る検討会ではなく、「政治主導」といえるもの。これまでとは違う結論が出そうとの期待感が高まる一方で、この分野に知見のあるメンバーが入っていないことには不安を感じる。「障がい者制度改革推進本部」の下に「障がい者制度改革推進会議」があるように、この検討会の下か各省庁の下に、実務面の検討を担当する委員会を設置することになるだろう。そうしないと、新聞各紙が報じている「プライバシー面の不安(社会的なベネフィットとのバランス)」などの難問を整理できない。政治主導で大きな方針が固めておき、その方針に基づいて、プライバシーなどの難問の解決と制度運用などの詳細化・具体化を進める。このような「トップダウン」の進め方を描いているのではないだろうか。

初会合で、菅副総理・大臣は、「色々なサービスを公平に効率よく受けるための基礎的なインフラだ」と説明。所得が捕捉できれば、手当に所得制限を設けたり、所得ごとに給付額を変えることができる。給付つき税額控除や最低保障年金の実現には欠かせない社会インフラだとのメリットを前面に出していくことが明らかになった。この社会インフラがないと、消費税の引き上げができない。公にはあまり出ていないが、民主党はそのように考えているのではないだろうか。

このブログでも何度かに分けて、これらの考え方を取り上げている。合わせてご覧いただければ幸いである。