今回は、「色絵 朝顔文 茄子形変形小皿」の紹介です。
表面
表面の左半分
ヘタの部分が凸になっています。
表面の右半分
裏面
高台内の銘款
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代前期
サ イ ズ: 最大長さ;15.7cm 最大幅;11.3cm 高台径;8.3×5.9cm
なお、この茄子形変形小皿につきましては、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介しておりますので、次に、その紹介文を転載し、この茄子形変形小皿の紹介に代えさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー123 古九谷様式色絵朝顔文茄子形小皿(平成20年7月1日登載)
表 | 裏 |
これはなかなか古い手である。伊万里の最初期頃の色絵とまではいかないが、かなり古い手ではある。
茄子には、「秋ナス嫁に食わせるな」とか「親の意見とナスビの花は千に一つの無駄もない」とかのいろいろなことわざもあるくらいで、茄子は、古くから日本人に親しまれてきた野菜だからだろうか、茄子形に成形された皿は時折見かける。でも、この小皿のように、茄子のヘタの部分まで丁寧に文様化されて描かれているものは珍しいと思う。
茄子の実に当たる部分には朝顔と蜂が描かれている。
南京赤絵には、牡丹や菊の花に蜂などの昆虫を添えることが多い。この小皿も、花に昆虫が添えられているところから、南京赤絵の影響を強く受けているのだろう。しかし、この小皿では、花が牡丹や菊ではなく、朝顔になっている。
朝顔については、千利休が、満開の花の一輪のみを残して全部を摘み取り、残したその一輪を切り取って茶席に活け、豊臣秀吉を迎えたとの話も伝わるほどで、「茶」にも関係しているところであり、花を朝顔に代えているところに、和様化を図っていることを感じさせる。
高台内には「太明」の銘がある。「太明」は初期伊万里などによく登場する銘で、この小皿がかなり古いことを証明している。
江戸時代前期 最大長さ:15.7cm 最大幅:11.3cm 高台径:8.3×5.9cm
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*古伊万里バカ日誌61 古伊万里との対話(朝顔文の小皿) (平成20年6月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
朝 顔 (古九谷様式色絵朝顔文茄子形小皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、前回、安易に、ごく手近にあるものと対話をしたことに若干の後ろめたさを感じているようである。
そこで、今回は、ちゃんと季節に合ったものと対話すべく、押入れの中をひっかきまわしていたようであるが、どうやら満足すべきものを見つけ出したらしい。
主人: 盛夏になった! 盛夏には盛夏にふさわしいものと対話しようと思って、お前に出てもらった。
お前は、形が茄子形だものな。茄子は夏野菜の代表的なものの一つだし、器面には朝顔まで描いてある。これほど夏にふさわしいものはないだろう。(自己満足)
朝顔: そうですね。ちょうどこの時分にお話が出来て嬉しいです((*^_^*)
さわやかなお話がしたいですね。
主人: うん、うん。
我が家の家庭菜園の茄子も実り出してきた。
ところで、最近、食の安全が取りざたされているが、我が家の茄子は、安全、安心なんだよ。
最近ではタネまで自分で作って、春、そのタネをポットに播いて苗を作り、その苗を畑に移植しているんだ。その間、全く農薬は使っていない。100パーセント無農薬なんだ。市販されているタネだって、消毒用の農薬に一度や二度は浸されているかもしれないものね。そのタネを使って苗を作ったのでは100パーセント無農薬とは言えなくなってしまうものな!
朝顔: ご主人は、無農薬にこだわっているのですか。
主人: こだわるほどではないけれど、なるべく安全なものを安心して食べたいからね。
以前は、なるべく沢山良い物を作りたいから、消毒薬とか殺虫剤などを買い込んで使用していたけれどね。最近では、そんな物は全く買わないし、使用もしなくなった。その代わり、収穫量も少ないし、形が悪かったりと出来も悪いな。それにお天気にも左右されるね。その年によって、長雨になったりすると病気が発生したり、また、害虫が多く発生したりする年もある。妻なんか、以前は虫なんか大嫌いだったんだけれど、最近では食い意地がはってきてか、害虫を手で潰して駆除するようになった。勿論手袋はしているけどね。「オノレ~、私の食べ物を! 虫なんかに食べられてたまるか!」という感じだ。その姿には鬼気迫るものがあるな。以前は、虫なんか、見ただけで、キャーキャー言って逃げまわっていたんだけどね! 女は長じるに従って激変するものだね。
朝顔: 奥様のことをそんな風に言ってもいいんですか!
主人: いや、いや。それは、ここだけの話だ。妻にそんなことが知れたら大変だ! 今日の晩飯は抜きにされちゃうよ。たのむ、朝顔。今の話は妻には言わないでくれ・・・・・。
朝顔: ハイ、ハイ。わかりました。ご主人が夕食抜きにされて、ひもじい顔をされているところを見たくはないですから・・・・・。
主人: そう、そう。「朝顔」といえば、昨年10月の「古伊万里バカ日誌52」に、別な「朝顔」に登場してもらっているな。季節はずれの時期だった。それに、「源氏物語」などほとんど読んだことがないくせに、その「源氏物語」に出てくる「朝顔」に由来させて命名させてしまった。悪いことをしたなぁと思っている。
それで、その時、罪滅ぼしの意味で、「源氏物語」を読むことを約束したんだ。特に、「朝顔」の巻には念を入れて読むことをね。
朝顔: それで、その後、本当に読まれたんですか?
主人: 読んだとも、読んだとも。私は嘘はつかないんだ。約束は守るほうなんだ。もっとも、読んだといっても、勿論、原文で読んだわけじゃない。現代語訳でもない。田辺聖子さんの「新源氏物語」という意訳小説で読んだわけなんだがね。でもね~、「源氏物語」というのは長編小説なんでね、全部を一気に読み終えるには少々根気が必要だったね。長編だし、記憶力も弱いもんだから、読み進むうちに前の方に出てきた登場人物のストーリーなどを忘れてしまったりしてね。それで、また前の方を読み直したりしなければならないから、結構時間がかかったんだよ。それに、田辺聖子さんの「新源氏物語」は「源氏物語」の全部を網羅してるわけじゃないんだよね。原作には、この後に、光源氏の次の世代の物語の宇治十帖等があるんだけど、それは含まれてないんだ。それで、その部分は、他の人が書いたダイジェスト版を読むことでお茶を濁してしまった。少々疲れてしまったせいもあるけど・・・・・。
朝顔: 「源氏物語」は読破するのが大変なんですね。
主人: まぁ、読破とまではいかなくとも、一応、ざっと読み終えるだけでも大変だね。意訳小説で、ざっと一応読み終えるだけでも大変だよ。人によっては、何年もかけて、少しずつ読み進んでいって読み終えるという人もいるようだね。このような読み方の場合は、登場人物関連表みたいなメモを作っておくとか、前の部分をザーッともう一度読み直すとかするんだろうかね。もっとも、現在では、ネットに「源氏物語」のダイジェスト版などが載っているから、それを活用すると、粗筋や登場人物の関連などがわかるから、通読し易いかな。
朝顔: ご主人は、前に登場された「朝顔」さんと約束したので「源氏物語」を読む気になったんですか。
主人: うん。第一の動機はそうかな。
「源氏物語」は我が国を代表する文学作品だろう。長編だからといって敬遠していたわけだけれど、「源氏物語」を一度も通読したことがないなんていうのは自慢にもなんにもならないし、むしろ、教養がないと軽蔑されるのがオチだろう。人との対話の際、相手が「源氏物語」の内容を引用してきたりした場合、適当に相槌を打って、わかっているようなふりをしなければならないのはつらいよね。教養の無さを晒け出したくないからそんな行動に駆られるわけだけどね。でもね、現実には、世間では、意外と「源氏物語」を読んでいる人は多くはないようだね。長いこと人生やっていて、そんな場面に出くわすことは少なかったもの・・・・・。
まっ、最も大きな動機は、我が国に生まれてきて、我が国を代表するような文学作品を一度も読まないでこのままあの世に旅立ってしまっては、この世に悔いを残すことになるな~と思ったからかな。
朝顔: 「源氏物語」を読んだ感じはどうですか?
主人: よかったな~と思っているよ。ず~っと、一度は読んでみたいと思っていたからね。長年の懸案事項だったからね。我が国で千年もの長い間、読み親しまれてきた小説なんだもの・・・・・。それだけの価値は十分にあると思う。今年は、「源氏物語」が作られてからちょうど千年だとか。「源氏物語千年紀」なんだね。ちょうど良いタイミングで読んだと思っている。これで安心してあの世に旅立てるかな。
茄子のヘタの部分が凸になっているように見えるのですが、そこまでの細工をしているのでしょうか。
ヘタの部分もさることながら、その先を抜いて茎まで表していることに驚きました。
対照的に、ふわふわっと描かれた朝顔と蜂も面白いですね。
それから、この皿、立てて見ると、ヘタが生垣で、その向こうに朝顔と蜂がいるように見えますね(^.^)
なろほど、ヘタの部分を下にして立ててみますと、ヘタが生垣のようになり、その先に朝顔と蜂がいるように見えますね!
そこまでは気付きませんでした。
この器は、そのように、ヘタの部分を下にして使うのかもしれませんね(^_^;