今回は、「染付 四方襷文 四角小皿」の紹介です。
これは、平成2年に、田舎の骨董屋から買ってきたものです。もっとも、そこは、骨董屋というよりは、リサイクルショップのような店で、その一角に骨董品も陳列されていたというような状態の店でした。
その店は今でも健在ですが、この四角小皿を買ったのが最初で最後になってしまい、その後、一度も立ち寄ったことがありません。なぜか、その店には、骨董屋としての魅力を感じないからなのでしょう、、、(~_~;)
そのようなことで、その店にも、そこから買ってきたこの小皿にも、それほどの魅力を感じなかったわけですが、そこから買ってきたという小皿は、次のようなものです。
染付 四方襷文 四角小皿
表面
右側の四方襷文にニジミが見られます(~_~;)
外周部に陽刻が施されています。
裏面
なお、この小皿の紹介を、ここで終わりにしてしまったのでは、この小皿に、あまりにも失礼なものですから、もう少し、紹介を続けたいと思います(^_^)
かと言って、この小皿については、取り立てて取り上げるべき事柄もないのですが、高台内に描かれた「銘款」が比較的に丁寧に描かれていますので、それについて取り上げてみたいと思います。
「銘款」に関しましては、しばしば登場してもらっている「柴田コレクションⅣ」に、また登場してもらいます(^-^*)
「柴田コレクションⅣ」(佐賀県立九州陶磁文化館 1995年発行)の巻末に、鈴田由紀夫氏(現:佐賀県立九州陶磁文化館館長)が、「17世紀末から19世紀中葉の銘款と見込み文様」という論文を載せていますので、今回も、そこから引用させていただきます。
以下は、この論文の、この小皿に関係する部分の抜粋です。
「 銘款について
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1670年代から80年代には、草書体の「福」字銘が現われる。古窯跡の出土例では、長吉谷窯の陶片にある。草書体の特殊な事例はそれ以前にもあるが、このころから福の「田」の部分が渦を巻き始める。当初は渦が一重か二重であるが、①になると三重」となり、典型的な通称「渦福」が出来上がる。柿右衛門窯や南川原窯ノ辻窯で①のような銘の作品が作られるが、その後肥前各地の窯で用いられる銘である。②から④は、①が流行するにつれて変容してゆく過程を示している。描き方は粗雑になり、渦が四重にまで増える。また④になると福の書体が崩れ過ぎて、原字が判断しにくくなっている。
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①から④の変容は、書体の変化だけではない。線の細さや描き方の特質、釉薬や呉須の変化まで読み取ることができる。銘の線描は、面の文様の線描と対応しており、銘款が丁寧な描き方であれば、面の絵付けも銘の筆致を彷彿とさせる描き方である。①のレベルにある銘款としては、⑦や同年代の「金」字銘があげられる。これらの銘を持つ作品は、一様にレベルの高い作品である。 」 (上掲書P.272から抜粋)
ところで、この小皿の「銘款」は次のようになっています。
上掲書に掲載されている四つの銘款とこの小皿の銘款とを対比して見てみますと、この小皿の「銘款」は、上掲書に掲載されている四つの銘款のうちの①に似ていることが分かります。
ということは、上の論文にもありますように、この小皿は、1690~1710年代に作られたもので、レベルの高い作品ということになります。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期(1690~1710年代)
サ イ ズ: 口径;11.3cm 高さ;3.5cm 底径;8.3cm
何が彫られているのでしょうか。壮大な景色?
全面陽刻なら、渦福にたがわないレアな上手ということになりますね(^.^)
陽刻は、周辺だけでした。また、周りの陽刻の文様は、草花のようです。
確かに、この小皿は、上手の窯で焼かれたのでしょうけれど、この小皿に限ってみれば、染付の文様にニジミ出てしまっていますし、その辺の火の周りが悪かったのか、ジカンが出てしまったりと、出来が悪かったようですね。
この窯の2級品、3級品として販売されたのかもしれません(~_~;)