goo blog サービス終了のお知らせ 

文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

赤塚不二夫レア作品レビュー その12『用心棒』(「週刊漫画サンデー」96年11月5日号)

2025-05-05 01:53:38 | 論考

『用心棒』というタイトルから、赤塚が私淑する映画界の巨匠、黒澤明の同名タイトルをパロディー化したエピソードだと思われがちだが、実はタイトルだけを拝借した通常の赤塚時事ナンセンスの延長線上に位置する一編。

ドラマは、何の変哲もない彼氏と彼女が喫茶店で対峙しているという、特に変わり映えのないシーンから始まる。

アイスクリーム二つをオーダーした彼氏は、そのアイスクリームをよく沸騰させてくれと注文する。

この頃、猛威を振るっていたO157∶H7対策の一環だ。

差し出されたホットアイスクリームに辟易する彼女。だが、彼氏の拘りはこんなレベルではなく、野菜サラダも煮サラダに、スイカも煮スイカにして彼女に振る舞い、彼女をすっかり呆れさせてしまう

そんな中、彼氏は険悪なムードを変えようと、彼女をホテルに誘う

喜び勇む彼氏は、ベッドインする前に、彼女に風呂に入るよう促すが、何とそのお風呂が熱湯風呂で……。

O157∶H7は、腸管出血性大腸菌に分類される血清型の一種であり、非加熱食品の摂取による食中毒のみならず、出血性下痢や腎不全を引き起こすなど、免疫不全患者の死亡リスクが高く、本作が発表された1996年当時は、社会に齎す影響もより深刻な時期であった。

そんなO157∶H7をテーマとして取り上げるに至っては、常に時事性の高い話題をライヴ感覚たっぷりにカリカチュアライズしてきた赤塚の面目躍如そのものと言えようが、『用心棒』というタイトルがそもそも本編の落ちとなっており、O157を用心するあまり、彼女を棒に振ってしまったというもので、ダジャレに特化した凡庸な展開ながらも、成る程、辻褄は合っている。

本作『用心棒』は、「週刊漫画サンデー」創刊2000号を記念し、「漫サン」ゆかりの漫画家がスペシャルゲストとして執筆した企画物の一環で、かつて『天才バカボンのおやじ』(69年〜9月3日号〜71年11月27日号ほか)を連載していた関係から、赤塚にも読み切りの依頼があったものと思われる。

因みに、この時期、藤子不二雄Aも、『笑ゥせぇるすまん』の続編的作品『帰ッテキタせぇるすまん』を連載しており、2000号記念として、その一編を寄稿していた。

かつて『黒ィせぇるすまん』(初連載時のタイトル)同様、同誌の看板作品であった『天才バカボンのおやじ』をリメイク執筆し、誌面を飾っていたなら、2000号記念の盛り上がりも一入だったことは想像に難くなく、何故、赤塚に限っては、単発読み切りのオファーだったのか、赤塚不二夫ディレッタントとしては、そこが謎であり、また悔やまれるところでもある。

『夜の赤塚不二夫』収録作品。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。