文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

魔女っ子路線のルーツ『ひみつのアッコちゃん』の連載開始

2020-04-16 13:09:56 | 第3章

『ひみつのアッコちゃん』は、『おそ松くん』の連載開始から遅れること約二ヶ月、1962年5月発売の「りぼん」6月号から65年9月号まで三年余りもの間、長期連載された赤塚少女漫画の総決算的作品であり、人気度、一般認知度の高さのみならず、そのSF的設定、良質のユーモア、ポップな軽快感、テンポの良いストーリー展開等、表現のバリエーションを更に細分化させたターニングポイントとも言うべきシリーズである。

有名作品でありながらも、アニメ版とは異なり、その魅力を掘り下げて語られることが殆どなかった原作版『ひみつのアッコちゃん』であるが、先にも述べたように、そこには、後の赤塚漫画の系統樹を司る種の起源を見て取れる点からも、初期赤塚作品では、『おそ松くん』と双璧を成す程の深い意義の備わったリプレゼンタティブワークと位置付けても良いだろう。

読者層の少女達の身近に存在するような、爽やかで気立ての良い、ちょっぴり空想癖のあるお転婆な女の子が、鏡の国からやって来たという謎の男から、呪文を唱えれば、何にでも願うものに一瞬のうちに姿を変えられてしまう魔法の鏡を譲り受け、その鏡の不思議な力と持ち前の強い正義感によって、友達や困っている人を助けてゆくというのが、『ひみつのアッコちゃん』の大まかなストーリーだ。

多種多様なエピソードの中で繰り広げられるアッコの八面六臂の活躍は、夢見る少女達の変身願望を存分に満たすとともに、読む者をファンタジックな寓話の世界へと誘い、連載第一回目から大好評を得るに至った。

因みに、連載第一回目「かがみの国のおつかい」(62年6月号)の粗筋はこうだ。

ある昼下がり、留守番をしていた主人公の少女・アッコが、退屈凌ぎに縁側で鏡を見ながら、勝手に持ち出したお母さんの化粧品を顔に塗って遊んでいるところ、突然ボールが飛んできて、大切な鏡を割られてしまう。

宝物の鏡を割られ、悲しみにうちひしがれているアッコの前に、サングラスを掛け、黒スーツとソフト帽に身を包んだ若い男が現れる。

その若い男は、鏡の国の使者を名乗り、いつも鏡を大切にしてくれていたお礼にと、割れた鏡を新しい鏡と交換してあげるという。

鏡の国の使者がくれた魔法の鏡は、なりたいものの名前を逆さまに唱えると、唱えたものの姿に変身出来るという、花柄の緑飾りをあしらったアンティークな鏡台で、早速アッコは「綺麗な服を着た可愛い女の子」に変身する。

変身した別人の女の子の姿のままで、外へ飛び出したアッコは、友達のモコやチカ子、ママに声を掛けてみるものの、誰も彼女がアッコであることがわからなかった。

心浮き立ったアッコは、魔法の鏡のことを誰にも話さず、そっと自らの胸の内だけに秘めておくことにする。

それ以降、アッコは鏡による魔法のトリックで、その時の状況に応じ、自分とは違う人や動物へと変身し、身の回りで起こる様々な事件を解決してゆく中、少しずつ人間的に成長を重ねてゆく……。


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