文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

『バカボン』ワールド影の主役 バカ田大学の関係者達

2021-04-24 18:32:25 | 第5章

このように、『バカボン』は、回を重ねるに従い、異形のサブキャラクター達が無尽蔵に現れては、読者を荒唐無稽なイリュージョンニズムへと誘引してゆく、不可視な概念世界を具象化した超越的構造を、次第にそのメルクマールとして定着させるようになる。

毎回一回こっきりというゲストキャラでありながらも、時としてその対立のドラマの中で、パパの際立ちをも喰ってしまう、影の主役とも言うべき八面六臂の活躍を見せるのが、パパの母校であるバカ田大学「◯◯研究会」所属のユニーク且つ軽佻浮薄な後輩諸君である。

「都の西北、早稲田の隣」のフレーズでも知られる迷門・バカ田大学は、細胞融合や遺伝子操作により、新種の生物を造り出す生物学の権威(「動物あわせでノーベル賞なのだ」/「DELUXE少年サンデー」70年3月号)や、物質電送マシンを開発する科学者(「電送マシンの先輩なのだ」/73年16号)といった大天才も輩出すれば、スケベ学部、サギ学部、自信ない学部、マージャン学部、夢学部、中立学部と、およそ勉学の対象にはなり得ないであろう学部まで存在しており、研究対象のカルト性とその範囲の広さは驚愕に値する。

因みに、パパが卒業した学部学科は、バカ田大学社会学部哲学科であるが(後述する『天才バカボンのおやじ』では、理工科、また後に、クイズ科の卒業であることも語っている。)、通常の大学では、哲学科は文学部に属する学科で、社会学部には存在しない。

人間の他にアホウドリにも学問の扉を開いていたり、本来大学では、学長と呼ばれる最高責任者が、何故か校長という肩書きであったりと、奇矯さという面においても、まさに鶏群一鶴と言えるだろう。

そういった意味でも、バカ田大学は、ありとあらゆる面において、現実感覚や共通認識といった概念を超越する特殊人材育成機関であるのだ。

また、アメリカにバーカード大学なる姉妹校も存在し、交換留学が盛んに行われるなど、広義的な解釈に依りては、グローバリゼーションの進展に根差した教育研究が行われている最高学府としても位置付けられている。

バカボンのパパは、バカ田大学を優秀な成績で卒業した天才であるが故に、多くのバカ大の先輩や同窓生、現役、OBを含めた後輩逹が、一筋縄ではいかない難問奇問を引っ提げ、会いにやって来る。

そして、バカ大関係者達とパパによる、予断を許さぬ大馬鹿と馬鹿との競い合いが、いつしか不条理な感性と世の常識との軋轢という二重構造を映し出し、 その脱論理的なドラマトゥルギーに更なる破滅と倒錯を生み出すエレメントになり得るのだ。