文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

フジオ・プロを自虐的に戯画化した『われら8プロ』

2020-09-09 20:24:33 | 第4章

「週刊少年キング」掲載作品で、最も異色にして、エクスぺリメンタルな一作が、赤塚自身の姿を投影して描いた人気漫画家と、そのプロダクションのアシスタント達の喧騒に満ちた漫画制作の裏側を過激にカリカチュアライズした連作『われら8プロ』(68年43号~44号)ではなかろうか。

人気漫画家のハチャメチャな日常を自虐的な内輪ネタも盛り込み、一見荒唐無稽に演出しているが、彼らの穉気満々たるその有り様には、藤子スタジオ、つのだプロ、フジオ・プロと机を並べ、お祭り騒ぎのような雰囲気で漫画を描くことをエンジョイしていたという、当時のスタジオ・ゼロの漫画家達の若き日の勇姿が、そのまま写し出されているかのようで感慨深い。

また、作中に描かれた彼らの作品も、ギャグ、劇画、少女漫画とバラエティーに富み、あらゆるジャンルの漫画の画風、スタイルを赤塚の独断的な解釈により、解体、パロディー化を試みているのも痛快だ。

特に、主人公・バカ谷大先生のライバルであり、藤子不二雄を思わせる超売れっ子のフニャコフニャオが描く漫画の絵柄が、『ルパン三世』のモンキーパンチ風であったり、はたまた『若者たち』の永島慎二風であったりと、当時の人気漫画家の作風をそのまま拝借するなど、良い意味での、その開き直りと節操のなさには、思わず拍手を送りたくなる。

現代劇でありながら、侍風の刺客に奇襲を受け、拳銃をぶっ放す永島慎二風漫画は、主人公の顔付きが突然園田光慶(代表作『アイアンマッスル』、『ターゲット』)調に変貌するなど、読む者に脱力的気分をもたらすこと請け合いだが、背景に永島ファンにはお馴染みの喫茶店「国分寺ほら貝」を然り気なく忍ばせるなど、全編に渡り、遊び心に満ちた心憎い演出が仕込まれている。

尚、フニャコ先生版『ルパン三世』は、一部の漫画マニアの間で物議を醸し出した初期「週刊少年ジャンプ」連載作品『ヌスット』(叶バンチョウ)よりも更に露骨なイミテーションとして、滑稽の対象となって然るべき珍品と言えよう。