翌朝、どよんとした気分で目覚める。
昨晩は鍋の終わり際に睡魔に襲われる有様だった。
しかし今回の鍋には中華鍋奉行『ダン』の存在がなかったので、鍋の〆にしっかりと麺を投入して満足した記憶が残っている。
もっとも新鍋奉行の赤城が汗にまみれた頭を掻きあげた両手で、麺を手づかみで入れるのだけは頂けなかったが…。
「うー、マジで身体が重いぞ…」
ベッドから身体を起こすと体中の筋肉がパンパンに張っていて、悲鳴を上げている。
「運動不足とか、そういうレベルじゃないなこりゃ…」
私は徐々に自分の身体の異変を認めるような気分になっていた。
朝から頻繁に表示されるNHKの画面
色々と権利の制約があるらしく、音声のみで妄想を掻きたてて視聴するしかありません。
ホテルの朝食バイキング
右の皿:ベーコン4枚と目玉焼き
左の皿:サラミハム2枚、サラミ1枚、ソーセージ2本、豚足2つ、キャベツ炒め、春巻2本、プチトマト2個、キンカン3個
左上の器:中華スープ
右上の器:お粥にピータンとザーサイを投入
中上のグラス:リンゴジュース
非常に偏っています。圧倒的に肉類が多いのですが、自分の肉体がタンパク質を求めているみたいなので、素直に従います。
「食わなきゃ動けなくなる!」
そんな言葉が頭をかすめて行きます。
今朝も発見
高速道路掃除人…。真横をアウディが時速120km以上の速度で通過します。
ゴミ焼却
他人が所有するであろう壁を、勝手に火で炙っています。
この日、残りのパネルの設置作業に入った私は、思わぬ失態を犯します。
それは天井パネルを設置していたお昼前のことでした。
「お、そろそろ昼飯か…」
佐野が呟き、私は時計を見ました。
「もう12時か…」
一瞬、集中力が切れかけます。
「よっしゃ、このパネルだけ入れるか!」
佐野が天井クレーンでパネルをさらに吊り上げます。
「まだやるの!?」
一瞬私はそう思いました。
「赤城ちゃん、コイツだけ入れちまうぞ!」
「ハイよ!」
赤城は返事をして、私と一緒に機械の上でパネルの到着を待ち構えています。
「平行にしろよ、平行にすりゃあ下には落ちないからな!」
佐野が指示を出します。
「ハイよぉ」
赤城は返事をしながらも、なぜかパネルを斜めに下ろします。
「???」
疑問に思いながらも赤城は本職なので、それに従います。
「なんでこんな危ない置き方をするんだ?佐野さんが言った平行って、俺の思ってる平行と違うのか?」
私は集中力が切れかけた頭で考えます。目の前にはすでに二枚のパネルが入っていて、最後の三枚目を真ん中に落とし込むだけです。
平行に置きさえすれば、たとえパネルが滑り落ちても、下に落下する事はあり得ません。しかし赤城は三枚目のパネルを見事に斜めに置いてしまいました。
「これって危なくない?」
一体どうやってパネルを落とし込むつもりなのか、赤城からの指示を私はじっと待っていました。
「!」
その時、いきなり赤城が無言のままパネルを動かし始めました。
「あっ!」
私は条件反射的に手が出ました。
「パネルを平行にしなければ落下する!」
そう思ったからでした。
「そっちはそのまま!」
赤城が叫びますが、すでに手はパネルを押し出しています。
「ああっ!」
「うわっ!」
現場に私と赤城の叫び声が響きます。
「ドドッ、ガガンっ!」
無情にも重さ約20kgの天井パネルは、隙間から下へ落下しました。