知識は永遠の輝き

学問全般について語ります

SFにおける超能力

2017-10-24 06:45:57 | 架空世界
 SFには超能力ものという一大テーマがありますが、伝統的な?超能力と言えば下記のように分類される能力です。
 1a) テレパシー(Telepathy)
 1b) サイコメトリー(Psychometry)
 2) 透視千里眼(Clairvoyance)
 3) 予知(Precognition)
 4) 念動力、テレキネシス、サイコキネシス(Psychokinesis)
 5) 瞬間移動、テレポーテーション(Teleportation)

 1,2は心に働きかける力という点では似たようなもので、まとめることもできるでしょう。これら5大超能力は19世紀以来に盛んになった心霊術や超心理学から生まれた概念です。もちろん類似の力は昔から神々など超自然的存在の力として伝説にうたわれてはいました。しかし神や悪魔や妖精ではなく人間が持つ力として、伝説にうたわれた力とは別の起源のものとして超能力というものが提唱されたのは、比較的新しい時代のことと言えるでしょう。そしてそれはSF小説に取り入れられることになります。

 SF的設定やファンタジー的設定では超自然的能力を持つ者が登場するのはよくありますが、それを超能力と呼ぼうが魔法と呼ぼうが作者の自由なわけですが、まあ語感としてというのか慣用的にというのか、超能力と言えば上記のような力であり、魔法と言えば西洋の古くからの伝説に出てくる超自然的力を連想させます。ではそれには当てはまらない力が存在する世界を創り出そうとすれば、何か新しい言葉を創ることになります。直近の例だと、『ワンピース』の"悪魔の実の能力"とか『僕のヒーローアカデミア』の"個性"などですね。逆に言えば、"超能力"や"魔法"という言葉を使えば、その力の性質をあまり説明しなくても読者の共通センスに任せることもできるわけです。特に西洋文化で育った人達は妖精やら魔法やらの伝説が子供の時に頭に入っているようですから、魔法というだけでどんなものかが概ね想像できるようです。

 さて最近の作品では椎名高志『絶対可憐チルドレン』が上記の伝統的超能力を扱いながらも、人狼などという伝説の存在まで無理なく登場させています。その秘密は心を扱う超能力の一種である催眠能力(ヒュプノー)の多様な応用です。本当にこの作品に登場するヒュプノーはほぼ万能という感じで、周囲の人間すべてに力を及ぼすことで大人である個人を子供にしてしまうことさえできます。実際には物理的な体の大きさは大人のままという設定だったはずなので、当人はあちこちで体をぶつけそうなんですが、うまくすり抜けるみたいです。

 さらに予知能力の扱いもおもしろい。多数の予知能力者の予知から多数決で予測をするなんて言われてみれば妥当な方法ですね。予知能力の力の差というものも描かれていておもしろいです。そしてついには未来からの精神だけの時間旅行者も登場し、果たして暗い未来を変えられるのかという、タイムパラドックス的テーマも盛り込まれます。時間旅行という超能力は心霊術では想定されたことはないようですが、SFでは"タイムリーパー(時間跳躍者)"などと名付けられて登場する作品もあります。

 まあタイムパラドックスなどお構いなしにハッピーエンドに時間変更するという作品は珍しくありませんが、実はこの作品の設定だと必ずしも時間旅行が本当には起きていなくてもいいという可能性に気付きました。

 すなわち、あの時間旅行者は実は現在の超能力者による催眠能力(ヒュプノー)が生み出した存在だ、という設定があり得ます。そして時間旅行者が語る未来というのは、実は産みの親の超能力者の未来予知による悲観的予知だったのです。むろんこの予知は無意識のもので当人は自分が予知したという自覚もなければ、自分が催眠能力により時間旅行者を生み出したという自覚もありません。自分自身も時間旅行者の実在を信じている、いわば自己暗示にかけているのですね。この設定ならタイムパラドックスも多世界モデルも必要ありません。えっ、その催眠能力者は誰かって。やっぱりそれは・・・。

 まあ、このような設定が不自然に思えないくらいに、この作品での催眠能力(ヒュプノー)の可能性というのはものすごいものなのです。この作品が時間旅行者の語った未来と異なる結末に至ったとして、それが実際に未来を変えたのか、単に幻の未来を実現させなかっただけなのか、区別は付けられないでしょうね。





コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 史上最初のSF:ヨハネス・... | トップ | 史上最初のSF:ヨハネス・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

架空世界」カテゴリの最新記事