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太平洋横断

2017年11月23日 | 日記
小学生のころ、講談社の「ふくろうの本」で勝海舟の伝記を読みました。いきなり犬にき〇〇まをかまれて死にかけるシーンで始まるので度肝を抜かれましたが、それはともかく、一編のクライマックスは、もちろん咸臨丸での太平洋横断。黒船来航からほんの数年後、日本人は太平洋を渡った!

・・・で、これが(ジョン万次郎みたいな漂流の場合は除くとして)日本人の初めての太平洋横断だとその時は思ったのです。ところが、日本史をちょっと学んでみると、海舟のはるか以前に伊達政宗の家臣で支倉という人が、太平洋を越えてメキシコに渡り、さらにヨーロッパまで行っているというではありませんか。さらに、それより少し前に、田中勝介という町人が日本とメキシコとを往復したというではありませんか。どうもこの二人の航海が、私の「日本史」のなかで収まりがわるい。「鎖国」以前に西洋と交流があったのは分かるけれど、それが「太平洋横断」とうまく結びつきませんでした。

最近になって、杉浦昭典『海賊たちの太平洋』(ちくまプリマーブックス)を読んで知ったのですが、マゼランの世界周航からしばらく後、ガレオン船によるメキシコ⇔フィリピン往復航路というのが開けたのだそうです。メキシコのアカプルコを出た船が、南米のポトシ鉱山から出た銀を積み、フィリピンのマニラに着く。そこで東南アジアの香料や中国の物産を入手して、またメキシコへ戻って行く。思うに、スペインがこの航路を確立していたから、田中も支倉も太平洋を渡れたのでしょうな。ああ知らなんだ。

英米というフィルターを通した世界しか見ていなかったということでしょうかね。あるいは単なる無知。

上に挙げた『海賊たちの太平洋』、ジュニア向けではありますが大人が読んでも良い本です。著者は1928年生まれで執筆当時は神戸商船大学教授。航海についての豊富な専門知識と、戦前の人らしいたしかな日本語力とで、読みごたえのある一冊になっています。