木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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ロイヤリティ契約の運用

2006年03月21日 | デザイン契約など(相談室)
<写真>初代マツダコスモスポーツ


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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ロイヤリティ契約の運用
24:【デザイン相談室】運用14

 前回はロイヤリティ契約の利点のお話をしました。今回は、その続きでロイヤリティ契約の運用についての話をしましょう。

 前回の話では、ロイヤリティ契約は、初期費用を抑え、デザイナーのやる気を向上させ、うまくいけば、売上も倍増する一石三鳥の、日本の製造業にぴったりの契約方式だとお話しました。


ロイヤリティ金額の設定

 ロイヤリティ契約の利点はわかったが、では、実際にどのような契約金額を設定すれば、いいのでしょう?

 そのとき、基準になるのが、デザインコンサルタントの費用の項でお話した、デザインコンサルタント費用1回10万円という金額です。

 たとえば、ある商品の開発をテーマに打合せ週1回で年間契約とロイヤリティ契約を結んだとします。

 デザイナーからすれば、週1回の打合せですから、年間52週で、520万円回収が目標になります。

 メーカー側は、初期経費を抑えたいため、年間契約では、月20万円の契約をしたとします。年間で240万円です。

 デザイナーとすれば、契約後1年以内にロイヤリティで、最低(520-240=)280万円回収できれば、いいわけです。また、月10万円の年間契約であれば、ロイヤリティで年間(520-120=)400万円の回収が目標となります。

 回収目標金額が決まれば、後は、商品の年間売上計画の売上額で割れば、ロイヤリティの比率が決まります。年間計画が売上1億円であれば、280万円回収するには、ロイヤリティ2.8%、400万円なら4.0%になるわけです。

 業種は違いますが、映画などの版権ビジネスの場合も、ロイヤリティは市場販売価格の4%前後ですので、大体世間の相場といえると思います。


最低金額と最高金額

 上記が、基本的なコンサルティング契約とロイヤリティ契約の金額設定ですが、場合によっては、これにロイヤリティの最低保障額と最高支払限度額を設定する場合もあります。

 最低保障額は、コンサルティング年間契約の金額が少ない場合に、デザイナーからお願いするものです。

 例えば、開発費が極端に少なく、月5万円の年間契約しかできない場合、年間で60万円にしかなりません。これでは、モチベーションもあがりません。その場合、年間目標520万円の半額260万円程度は最低保証してほしい。従って、ロイヤリティ契約の最低保障額を(260-60=)200万円に設定していただくわけです。(できれば、最低保障額を(520-60=)460万円に設定していただけると、大変うれしいわけです。)

 また、最高支払限度額は、メーカーからデザイナーに要求するものです。このような設定が必要なのは、やはり、開発費が少なく、ロイヤリティの比率が大きくなってしまうような場合です。

 上の例と同じく、月5万円の年間契約で、年間売上が1億円とします。すると、デザイナーのロイヤリティでの回収目標は(520-60)460万円。ロイヤリティ4.6%です。しかし、これではロイヤリティが高すぎる。販売成績が好調で、売上2億円だと、920万円、3億円売れれば1,380万円をロイヤリティとして支払うことになってしまいます。

 デザイナーとしてはホクホクですが、それでは、メーカーが契約を続行することに躊躇してしまうでしょう。そこで、最高支払限度額を設定するわけです。大体、当初の回収目標の3倍~5倍程度が相場なのではないでしょうか?

 上の例でいけば、年間回収目標は460万円ですので、最高支払限度額は1,380~2,300万円程度ということになります。

 一般的に、最低保障額と最高支払限度額は、お互いのリスク回避のためですから、設定する場合は、セットになります。最低額を補償する代わりに、最高支払額を決めるというわけです。

 書籍の印税は、最低保障額と最高支払限度額もなく、一律だと聞いています。デザインのロイヤリティ契約も著作権という括りでは同じものですから、本来は上限も下限も設定するものではないと考えています。


ロイヤリティ契約は紳士協定

 基本的なコンサルティング契約とロイヤリティ契約の金額設定は、大体上記のような考え方でいいと思います。

 しかし、これはほんの参考程度にしかなりません。実際の契約内容は千差万別で、これ以上の金額設定も、これ以下の場合もあると思います。

 一番大切なのは、メーカーとデザイナーの信頼関係です。

実際の話、デザイナーは、その商品がどれだけ売れたか正確に調べる術を持っていません。メーカーからの売上情報を鵜呑みにする以外方法がありません。

 デザイナーからすれば、コンサルティング契約で毎月ちゃんと回収できるほうが安心です。メーカーの商品開発と同じようにロイヤリティ契約は、先行投資の大きな「掛け」になります。

 ロイヤリティ契約は紳士協定であり、メーカーとデザイナーの信頼関係だけが命です。

 ロイヤリティ契約を結ぶ場合は、お互いにその部分を、十分に理解しておく必要があります。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2012-04-25 21:40:09
とても分かりやすく、勉強になりました。
ロイヤリティ契約書を作成する際の留意点を教えていただけますでしょうか?
返信する
ロイヤリティ契約書の件 (木全)
2012-04-26 00:15:46
Unknown様
コメントありがとうございました。
一般的なデザイナーとの契約書のひな形が、
東京都中小企業振興公社のサイトにあります。
以下の「デザイン活用ガイド」をご参照ください。
http://goo.gl/SDn6k
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