スポーツライター・オオツカヒデキ@laugh&rough

オオツカヒデキは栃木SCを応援しています。
『VS.』寄稿。
『栃木SCマッチデイプログラム』担当。

ユーベ戦の零封が自信に。苦手のアウェーをドローで切り抜けた~チェルシー対リヴァプール~

2005-04-28 21:24:02 | サッカー
〈チェルシー〉GKチェヒ、DFテリー、ギャラス、R・カルバーリョ、ジョンソン、MFランパード、マケレレ、チアゴ(→ロッベン)、FWドログバ、グジョンセン、ジョー・コール(→ケジュマン)

〈リヴァプール〉GKドゥデク、DFキャラガー、ヒッピア、トラオレ、フィナン、MFジェラード、ルイス・ガルシア(→スミチェル)、ビスチャン(→キューウェル)、シャビ・アロンソ、リーセ、FWバロシュ(→シセ)

リーグ戦34試合を消化した時点で、首位チェルシーに5位リヴァプールは大きく水をあけられた。勝ち点の差は、実に31も付いている。更に今シーズンの対戦成績は、全て1点差ながらも3戦して3敗。分が悪い。

下馬評では圧倒的にチェルシー有利の中、リヴァプールのラフェエル・ベニテス監督は「リーグ戦とは異なる戦い方、欧州カップ戦でのアプローチ方法で(チェルシーとの)一戦臨む」と試合前に公言した。果たしてそのアプローチの方法とは。

バレンシアを2度のリーグ優勝に導き、昨シーズンはUEFAカップを制した知将は、従来の4―4―2のシステムではなく、4―2―3―1を選択した。左からトラオレ、ヒッピア、キャラガー、フィナンのDFラインは不動だったが、中盤をいじった。中盤の底には戦線に復帰してきたシャビ・アロンソとビスチャンを並べ、ジェラードをトップ下に配置した。両サイドにはリーセ、ルイス・ガルシアが入り、トップは膝の故障から出場が危ぶまれたバロシュが務めた。ジェラード、シャビ・アロンソ、ルイス・ガルシアとパス能力に長けた3人を同時にピッチに立たせることで、精度の高い一発のパスからゴールを伺う作戦を採った。

幸運のアルマーニのコートをオークションにかけることを辞めたモウリーニョ。襟は立てていなかったものの、しっかりとグレーのコートを羽織りスタジアムに姿を現した。モウリーニョは、リヴァプールの先発を既に把握していたかのようだった。中盤の底の人数を一人増やした。マケレレがジェラードのマークに付くことは予め分かっていたことだったが、シャビ・アロンソ対策としてチアゴを加えた。もちろんランパードも先発に名を連ねた。4バックは左からギャラス、テリー、R・カルバーリョ、ジョンソン、中盤は前述の3人、3トップは左にグジョンセン、右にジョー・コール、中央にドログバを据えた。ダフはハムストリングを負傷しベンチから外れた。飛び道具ロッベンはベンチからのスタートとなった。

両者とも開始10分間は様子見だった。手の内を知り尽くした者同士の戦いの幕は、静かに切って落とされた。ホームのチェルシーはDFラインでゆっくりとボールを回しながら機を伺った。リヴァプールは守備組織を整えることにプライオリティーを置いた。共にリスクを回避した、静かな立ち上がり。

その静寂を先に破ったのは、チェルシーだった。縦パス一本が右サイドに供給された。走り込んだのはジョー・コールだった。シュートまでに至る。立て続けにチェルシーは右から攻め立てた。グジョンセンのパスを受けたジョー・コールが左足でクロスを上げた。フィナンとドログバが競る。互いにボールを見失うも、一瞬早くドログバがこぼれ球を拾いシュートを打つ。が、力んだのか、枠を反れていった。

ドログバがマイボール時に、左サイドへと大きく開きリヴァプールDFの注意を引きつける間に、ロングボールを右サイドのスペースへ。そこにジョー・コールが走り込む。この形をチェルシーは徹底した。

2度の危機を脱したリヴァプールも、サイドから活路を見出そうとした。チェルシーの唯一の穴と言っても過言ではない、ジョンソンのサイドを執拗に突いた。リーセがタッチライン沿いに張り付き、ジェラード等の質の高いサイドチェンジのボールを待ち受けた。ジョンソンは応対に向かうも、寄せが甘く、拙い守備を披露することに。

17分には、マッチアップを制していたリーセが好機を作り出す。シャビ・アロンソの浮き球に反応し、左アウトサイドでの絶妙なトラップからシュートを放った。流れるような展開にチェルシーDFは慌てふためいたものの、リーセのシュートが効き足ではない右足だったために救われた。コースを突くことが出来ず、GKチェヒに弾き返された。

それでも、守備の覚束無いジョンソンをカバーするために、キープレーヤーとなっていたジョー・コールが守備に戻らざるを得なくなり、リヴァプールとしてはチェルシーの攻撃力を減少させることに成功した。トラオレ、ヒッピアも時間が経過するに連れて、ジョー・コール、チアゴを上手く抑え込んだ。

右サイドからの攻撃を封じられたチェルシーは方向転換を図る。今度は中央でのポストプレーから打開を目論んだ。21分には中央でタメを作り、ギャラスのオーバーラップを誘発。フィナンが切り返しに引っ掛かり、ギャラスは難なくクロスをファーサイドへと上げた。ジョー・コールが落としたボールに、中央で合わせはランパードだった。ゴール前、数メートルでのボレーシュート。ところが、シュートはゴールを大きく越えていってしまった。チェルシーは絶好機を逸した。

ランパードのミスショットに助けられたリヴァプールは、愚直にリーセ勝負を試み、リーセは尽くジョンソンに勝利を収め、クロスを上げるがPエリアの枚数が不足していたためにシュートを打てない。アクセントとなる筈のルイス・ガルシアはピッチから消えていた。

なかなか攻撃の形が構築出来ずにいたリヴァプールだったが、テリー、R・カルバーリョにてこずっていたバロシュが閃光を放つ。38分にジェラードからのアーリークロスをR・カルバーリョの前に入り込み点で合わせた。クロスもヘディングシュートのも申し分なかったが、GKチェヒの瞬発力がそれらを凌駕した。ゴール左隅へと逃げていくシュートを左手一本で叩き落とした。まるでハエを軽くあしらうように。テリー、R・カルバーリョを攻略しても、GKチェヒが残っていた。

チェルシーは42分にランパードが中央でマークを引きつけ、右のジョー・コールに右足アウトサイドでパスを通すも、トラオレが間一髪のカバーリングでシュートをさせない。

譲らない、譲れない一戦は、一進一退の攻防が続き、45分間が瞬く間に過ぎていった。

エンドを変えた後半、チェルシーが猛攻を開始する。左サイドでグジョンセンがボールを誘引し、攻撃の起点となった。ジョー・コールも息を吹き返し、両サイドからリヴァプールゴールに迫る。攻勢になったところでモウリーニョ監督は、とっておきのカード、ロッベンを切った。チアゴがアウト。

15分には交代したばかりのロッペンのCKからニアサイドにテリーが飛び込むも、ヘディングは僅かに頭に触れただけだった。

ルイス・ガルシアは相変らず消えたまま。ジェラードを筆頭にリヴァプールの選手達はボールが足につかない状態に陥る。至る所でパスミスを連発した。そんな劣勢の状況、悪い流れを打破しようと、ベニテス監督はバロシュを下げてシセを投入する。

2分後、中盤でショートパスを繋ぎ、ジェラードから最後はシセへとパスが通る。右45度から果敢にシュートを打つも、枠を捉えられなかった。

切り札のロッベンをピッチに送り出したはいいが、そのロッベンをチェルシーは活かしきれない。効果はほとんどなく、集中力を切らさずに粘っこいDFを繰り返したヒッピア、キャラガーの牙城を崩せない。ビスチャン、シャビ・アロンソには、一撃必殺のカウンターの芽を潰される始末。

停滞した攻撃を活性化しようと、モウリーニョは32分にジョー・コールに代えてケジュマンを入れる。36分にはドログバが競ったロングボールのこぼれ球にケジュマンが詰めるも、キャラガーとトラオレの懸命のブロックに阻止される。デッレ・アルピでの準々決勝セカンドレグ、対ユベントスにおいての零封劇が自信をもたらしたのだろう。リヴァプールDF陣は、ボールに対して並々ならぬ執着心を見せた。

窮地を脱したリヴァプールは、後は残り時間を浪費するだけだった。敵陣でもらったセットプレーにはじっくりと時間をかけ、キューウェル、スミチェルと交代カードを使い切り時間を潰した。ショートCKから2度もオフサイドを取られたのは作戦の内だったのか・・・。ベニテス監督は首を捻っていたが。

苦手のアウェーでリヴァプールは、スコアレスドローに持ち込んだ。今シーズン4度目の対戦でチェルシーにゴールを割らせなかった。ただし、自分達もネットを揺らせなかった。ルイス・ガルシアのブレーキ、マケレレに目を光らさせ自由を失ったジェラード、幅のない攻撃。守備は及第点の内容だったが、攻撃は冴えなかった。

イスタンブールに行くには点を奪わなくてはならない。自ずとホームでは攻撃的にならざるを得なくなる。そこをチェルシーは狙ってカウンターを仕掛けてくることが予想される。イタリアで掴んだ守備組織の手応えをベースに、いかにして強固なチェルシーを崩すのか。緒戦を振り返り、流れの中での得点は難しいだろうと考える。鍵はセットプレーにある。ジェラードのキャノン砲、ヒッピアの高さ。それを繰り出せるシーンを作り出せるかが、古豪復活のキーワードになってくるような気がする。

レッズ(リヴァプールの愛称)の戴冠なるか。セカンドレグを待とう。

CL準決勝 チェルシー0―0リヴァプール スタンファード・ブリッジ

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