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【書評】中間階級の蜂起 (ジョナサン・H・ターナー著)

2022年11月04日 | 書評



本書は、社会には感情を充足させる制度と回路がいくつも張り巡らされており、それらが機能している限り幾ら経済的に困窮しようとも中産階級は決起しようとはせず、むしろ旧体制を保守する側につくことを論じている。肯定的感情を発現させるものとして、民族、性別、親族関係、宗教、、教育、スポーツ、芸術等々挙げられており詳細にそのメカニズムを説明している。個人的に、近年ではインターネットが感情を生みだす小社会として、その機能を受け持っているのだろうなと感じた。いわゆる芸能界も、応援を通じた慰撫感情や一体感の供給源となっている。人間にとって経済的困窮も行動の動機として重要だが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に肯定的感情を供給されることに意義を感じていることを、本書から理解できる。中産階級にそれは特に当てはまり、社会変革期は、労働者階級が経済的困窮を理由に起ち上がるより前に、感情の欠損感からくる中産階級の怒りによって始まるだろうという指摘に納得させられた。そこで、中産階級の要求する社会は修正資本主義的なものにとどまるというのが、著者の見立てである。ヴィルムヘルム・ライヒの「ファシズムの大衆心理」を合わせて読まれると、“社会変革期における中産階級の行動とその動機”というテーマがより深掘り出来る。

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