本書に登場する四人の論者が共通して重要なテーマとしているのが、デジタルテクノロジーをいかにコントロールしていくのかという問題だ。今のところデジタルテクノロジーは、GAFAに代表される巨大独占企業に管理運営されており、デジタルテクノロジーが本来持つはずのネットワークと民主的機能を疎外している。これが資本主義に根底的変革をもたらす、ポストキャピタリズム到来の妨げとなっている。
しかし、対抗する四人の解決策はその未来像に比較すると、相当遠慮したものになっている。曰く、選挙、啓蒙、教育、法規制、新省庁建設…。彼らもこれでGAFAに勝てるとは本気で思っていないだろう。思想界も今だに、分業とそれを中央で束ねる19世紀型産業社会の残滓と、ソ連崩壊ショックに足を絡め取られているように思われる。盛んに資本主義崩壊の危機を煽るが、本当に足元を浸食する危機を具体的イメージとして捉えられているのか疑問。
とはいえ、本書の中で新時代を迎えるための標的は明確化されている。それは情報と所有だ。情報と所有を奪い返し我々自身で創造し運営するポストキャピタリズムへ。そのためにはどのような行動が必要なのか、トライ&エラーで確かめることが読者に与えられた宿題のようだ。