泰西古典絵画紀行

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ニュルンベルク紀行(6)~国立ゲルマン民族博物館(iv)~ドイツ・ルネサンス絵画

2011-02-02 20:52:48 | 海外の美術館
 続いて油彩画の部屋へ.始めはやはりドイツ・ルネサンス絵画,アルブレヒト・デューラーから.


左:師である画家Michael Wolgemutの肖像 1516年 29x27cm 板に油彩 右上にはデューラー自身による書込み.右目にはデューラーに特徴的な窓枠の輝点が認められる.こめかみにかけての怒張した静脈などはリアリズムの極致であろう.
右:カール大帝の肖像と皇帝ジギスムントの肖像 1511年 各215x115cm 菩提樹の板に油彩 市議会の発注で中央広場に面するHeiltumskammerの扉絵として制作された.両帝とも左手にはキリスト教世界を表わす帝国宝珠(皇帝のリンゴともいうらしい)を持つが,右手にはカール大帝は剣を持ち,ジギスムントは王錫を持つ.紋章の描込みにも影響されるが大帝の方が大きく描かれている.

左:上記両帝の肖像画の裏面 実際にはこのように空間を挟んで並べられている
右:怪鳥ステュムパリデスを退治するヘラクレス 1500年 画布 この作品は保存の関係から色あせてしまっているが,ヘラクレスを背面から描く構図は古代ギリシアの画家アペレス[当時デューラーはアペレスに准えられていた]の作品に基づき,自身の顔をヘラクレスに重ねているらしい.

 次に重要な画家はルーカス・クラーナハ.父子ともに画家であるが,父(1472-1553)のほうが重要.以下,父の作品.

肖像画を多く残していて,同様の工房作品も多い.右から友人のルター,Gregor Bruck博士,宮廷画家として三人のザクセン選帝侯の連作(1532年)  人相の悪い面々が多いのは・・・


左:一見,ドイツ美人の肖像画であるが,じつは「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」だった作品.あまりに生々しいので首の描かれていた下半分が後世切り落とされた.
中:蜂蜜をとろうとして刺されるキューピッドを嗜めるヴィーナス(1537年頃) このような細身の女性像が特徴的.
右:クラーナハ子による「サウロの改心」


参考
左:ブダペスト国立美術館所蔵の87x58cmのポプラ材に描かれた同題作品(1530年頃)のほうがクウォリティは高い.ゲルマン博物館の所蔵品は工房作かもしれない.
右:「ヴィーナスに不平を言うキューピッド」順に1530年 ロンドン・ナショナルギャラリー81x55cm,1531年 ブリュッセル王立美術館176x80cm,1531年頃 ローマ・ボルゲーゼ美術館 ヴァリエーションとして様式の変化を見ていただきたい.しかし,10頭身である.

 このほかの画家,例えばヴォルゲムートの作品なども展示されているが,面白かったのはドナウ派の代表であるアルブレヒト・アルトドルファーの1518年の戦争画.槍衾や主役の描き方など,後年(1529年)の「アレクサンドロス大王の戦い」の雛形のようである.

「レーゲンスブルク近くでのカール大帝の勝利」 1514年,同市の市議会・司教・皇帝の間の紛争の際に市議会などの依頼で描かれたもの.8世紀末,三日二晩続いた戦いで天使がカール大帝を助けるという伝説に基づいているが,画面には16世紀当時の殺戮を盛り込んでいる.天使に先導されて,カール大帝は中央下に黄金の甲冑に浮かびあがって描かれている.中央奥の城塞都市がレーゲンスブルクであろう.


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