今回のゴールデンのすべらない話、小藪がMVSだった。
やっぱこの人の語りはおもしろい。
前ライブで見た時もそうだけど、彼の表情とかテンポは秀逸。
あまりテレビ向きの人ではないと思うけど、ぜひ頑張ってほしい。
↓以前書いた小藪のお笑いライブの感想↓
http://blog.goo.ne.jp/dassou-net/e/f4c81e26558004cc87f1a12e954f91b5
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最近また村上春樹を読み直して思った事を書く。
珍しく春樹批判みたいなものになるかも。
ご存じかどうかは知らないけど、僕は村上春樹の作品が好きだ。
フリークではないが、ファンではある。
出た作品はだいたい買うし、そのおかげで村上春樹の著作は大体持っている。
僕という人間が村上春樹から受けた影響というものも結構大きいと思ってる。
世の中的にも、今や村上春樹ほど影響力のある作家はいない。
本は出せば売れるし、世界中で読まれている。
売れるだけではなく文学的な評価も高く、たぶん日本でノーベル賞に一番近い人物だろう。
でも僕には村上春樹がなぜここまで売れるのかが分からない。
なぜ出す本出す本ベストセラーになるのか、すごく不思議だ。
だって村上春樹の小説って難しい。
これは本人もよく言ってることだけど、文章自体は簡単だけど、ストーリーはあまりにも難解。
難解な物語が果たして売れますか?
ここでちょっと視点を変える。
たとえば他に日本で「本を出せば売れる」レベルの作家は誰がいるんだろう。
石田衣良
宮部みゆき
重松清
この辺かな。
オーケー。もっといるかもしれないけど、少なくとも彼らは出せば売れる。
いわば日本の小説界の頂点、モンスターみたいな人たちだ。
さて彼らがなぜ売れるのか。
それは、分かりやすくておもしろいからである。
ストーリーが明解で、その面白さが読み手をがっちりと掴んで離さない。
ハラハラドキドキ。
そんな彼らの作品が売れるのは、至極当然のことのように思います。
さて、これって何か変だ。
果たして村上春樹が売れるのは、わかりやすくておもしろいからなんでしょうか。
いや、っていうか村上春樹の作品をわかりやすいと感じる人なんているんでしょうか。
僕の周りにも村上春樹ファンはたくさんいます。
彼らに春樹のどこがいいのかを問うと、ほとんどの人が「あの独特の掴みどころがない雰囲気」的な曖昧な返事がかえってくる。
これってすごくおかしい。
売れる本の条件である「わかりやすいおもしろさ」とは全く逆の理由でウケているのだ。
「雰囲気」や、挙句の果てには「掴みどころのなさ」がウケて売れているのだ。
春樹の作品に、ベストセラーのわかりやすさなんてない。
ということは、春樹がベストセラー作家になり得ているのは、ほかの作家とは全く別の要素が読者に受け入れられているからだと考えられる。
そこまで受け入れられる要素とは一体なんだ。
そのことを考える際、僕は春樹の小説の立ち位置に注目する。
面倒なので結論から書いてしまうが、春樹の小説は「弱者の文学」あるいは「マイノリティの文学」である。
春樹の小説が売れるのは「弱者」の視点で書かれた「弱者の文学」だからではないだろうか。
村上春樹はいわゆる団塊の世代に属している作家で、彼の最初の読者となったのも団塊の世代と呼ばれる人々だ。
この世代というのは学生時代に安保闘争などを通じて権力に抗った人々だ。
春樹の作品中にも学生運動のモチーフが描かれる場面があるが、主人公はそういった学生運動に非常に冷めたまなざしを向ける。
その冷めたまなざしには、「弱者のままでいいのだ」というイデオロギーが存在している。
「弱者のままでいい」「このままでいいんだ」
春樹がここまで受け入れられるのは、この弱者肯定のイデオロギーが支持されているからではないだろうか。
団塊の世代が繰り広げた安保闘争/学生運動はやがて敗北し、強者の論理に組み込まれていった。
そんな彼らが春樹の最初の読者層になったことは偶然ではあるまい。
最初に言ったように、僕は村上春樹が好きだ。
でも、「弱いままでいい」というメッセージを発する村上春樹が一般レベルで広く人々に受け入れられ、何百万部も売れてしまう世の中ってなんか変だなって感じる。
純粋に雰囲気がウケただけで売れたのなら心配無用で大変おっぱっぴーなんですが、そんなわけはないでしょう。
本というのは雰囲気だけで何百万部も売れはしないものだ、jk。
歴史的に見て、「弱者のままでいい」に類するメッセージというのは、いろんな人たちが発してきた。
でもそういったメッセージの受け手というのは、大抵が反抗期真っ盛り、権力大嫌いの一部のティーン・エイジャー達だった。
ここまで国民的な人気を博するようなイデオロギーではなかったはずなんだ。
しかも「権力大嫌いティーン・エイジャー」が求めたのは「代弁」あるいは「弱者であることからの脱出」だったが、春樹の読者が求めているのは単に「弱い自分の追認」あるいは「安堵」である気がしてならない。
何度も言うけど、僕は村上春樹の作品は素晴らしいと思う。
明治の文豪たちに引けを取ってないと思う。
でもそれはあくまで作品に対する評価である。
はっきり言おう。
僕は、村上春樹が売れることは世の中にとってあまり良いことではないと思う。
やっぱり人間は強くならなきゃいけないし、俺はそっちのイデオロギーの方が共感できる。
Bob Dylan - Blowin' in the wind
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の最後の章で、カーラジオのボブ・ディランはこの「風に吹かれて」を唄う。
この曲聞くと俺はだめだ。いろんな思い出が蘇ってきて参る。
『世界の終り』を黙々と読んでた中3の春休みとか、この曲を繰り返し聞いてた旅行の思い出とか。