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Mr.マトリョーシカの脱走

マトリョーシカ(Матрёшка)式世界からの大脱走。脱兎のごとく。

(生)林檎博 ライブレポ

2008-12-01 01:29:17 | 全曲レビュー


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セットリスト

01 ハツコイ娼女
02 シドと白昼夢
03 ここでキスして。
04 本能
05 ギャンブル
 ※林檎の筋:十周年の軌跡(デビューからの流れを映像で振り返る)
  BGMネコさんのオーケストラによる宗教インスト  
06 ギブス
07 闇に降る雨
08 すべりだい
09 浴室
10 錯乱
11 罪と罰
12 歌舞伎町の女王
13 ブラックアウト
 ※林檎の芯:林檎の生い立ち(息子のナレーション)
  BGMネコさんのオーケストラによるやつつけ仕事インスト
14 STEM
15 この世の限り (+椎名純平)
16 オニオンソング (+椎名純平)
17 夢のあと
18 積木遊び
19 御祭騒ぎ
20 カリソメ乙女

~アンコール壱~
EN1 正しい街
EN2 幸福論 -悦楽編-
~アンコール弍~
EN3 みかんの皮
EN4 新曲

EN5 丸の内サディスティック(エンドロール)

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29日、(生)林檎博に行ってきた。

くほー。がるるるる。
いやーほんとよかったぜ。

今回は林檎さんのデビュー10周年ってことで、久々の、そして俺にとっては初めての「椎名林檎」ソロのライブになる。

しかも会場はさいたまスーパーアリーナというでかさ。

客席に入った時のスケールのでかさには不覚にも感動を覚えた。

いやーこんなでかいとこを3日連続で満席にできるんだから林檎さんはやっぱりすごい。


こんなでかいとね、不安なのは座席です。

俺の座席はS席。D5ブロック。

アリーナって規模感がよく分からなかったので、ステージ上の林檎さんは米粒に見えるのかなと最悪の場合も覚悟していた。

でもそんなことはなく、しかも通路側だったこともあってかなり良いアングルからステージを拝めた。




さて開演時間。

照明が落ちて、林檎不在のステージから「ハツコイ娼女」が流れる。

モニターに映し出される歌詞と相まって、期待は急上昇。

で、いよいよ林檎さん登場。


なんと奇抜な格好。

頭に鹿の角をあしらったその姿はまさにリアルせんとくん。

いやーしかしなんと神々しい登場なんだ。

去年の東京事変の「スパトリ」では林檎さんがとても近い存在に感じたんだけど、この林檎博では林檎さんが随分遠い存在に感じた。

もうほんとに「愚衆ですみません」って気分になった。



そうそう。

今回のライブでは、観客全員に「お土産」と称して小旗が配られた。

もちろんライブ中にそれ振れよっていうことなんだけど、その旗が旭日旗をモチーフにしたデザインなのね。

だから絵的には天皇謁見。




そんなせんとくん似の天皇の登場で会場全体に緊張感が満ちる。

で、そんな雰囲気を一気に溶かすように次の曲「シドの白昼夢」のラッパの音が。

まさにキターーーーーーって文字が観客の頭上にフォント50000くらいで現れた。

僕の顔も自然とほころぶ。

そびえ立つ鳥肌。緩む涙腺。

「10年…ずいぶん経ったんだなあ」って感慨深くなる。

どうせ俺はデビュー当時からのファンではないけど!



あーなるほどね。

今回のステージは、下にオーケストラ、上に林檎さんとバンドっていう二段構えなんだな。

ってこのあたり(かな?)でわかった。



「シドと白昼夢」からは、「ここキス」「本能」「ギャンブル」「ギブス」…という攻めのラインナップ。

いやー、客が何を求めてるかっていうのをすごく良く分かってるなって思った。

一つ一つの曲が涙腺を激しく刺激する。

特に「ギブス」は日本の宝だ。



どれも原曲に忠実で、しかしオーケストラが入ってるので明らかにゴージャスで壮大で。

このツボをグイグイ突いてくる感じがたまらない。




で、たぶんファンの間で話題沸騰であろう今回の「浴室」。

モノホンの包丁を片手に、りんご(果物)を切り刻んだり、首筋にあてたりしながら歌ってた。

モニターに皮膚スレスレを動く包丁が大きく映し出され、気が気でなかった。

恐怖の4分間クッキング。

洗って切った後はスタッフがおいしく頂いたわけはなく、もちろん水に流しました。

でもこのイタい演出、このナメた感じがとてもいい。

旭日旗といい、包丁といい、今日の林檎さんはほんとナメきってる。

大好きだよ林檎さん。



歌唱力もすばらしい。

年々迫力が増してる。

「罪と罰」なんか発表当時の歌声だって随分迫力あると思ったけど、これは20そこらの女子と三十路の女の力の差だろう。

ずっしり腰に来る感じだ。


一方、「歌舞伎町の女王」で顕著だった、ひばり声はあまり好きじゃない。

これはものまねの域を超えていない気がするからやめてほしい。


でもこの曲って面白いね。

20代の林檎さんが歌うと少女の戯言っぽいイメージの曲だけど、三十路林檎さんが歌うとニュアンスが変わってくる。

40代、50代と歌っていったらどんな変化が起きるのだろうか。



今回はサプライズ演出がいくつかあって、最大と言っていいのが、お兄さんである椎名純平さんの登場。

めちゃくちゃでかいインディアンのかぶり物を被っての登場。

僕は最初このかぶり物を髪だと勘違いして、兄貴半端ねえ!って声に出しそうになった。


「この世の限り」と「オニオンソング」をデュエット。

「この世の限り」はやると予想してたが、まさか純平さんが来るとは予想してなかった。

で、この2曲がとても良かった。

ほんとこの兄妹は揃って歌が上手い。

俺の鳥肌も終始スタンディング・オベーションでした。



「積木遊び」は当時はライブでの振り付けが定番ってことだったらしいので、もうその定番は知られてないから今回は敬遠するんじゃないかなーって予想してた。

でも、やった。

やっぱり、2番から振付を真似する人が多かったので、新しいファンがたくさんいるんだなって思った。

新しいファンが増えていくってことは単純に喜ばしいことだと思う、っていう上目線の感想を持った。

許して。


そして「御祭騒ぎ」「カリソメ乙女」と賑やかに幕を閉じる。


しかし照明は落ちたままで、お決まりのアンコール。

客に媚び過ぎだって?

ノンノン。

林檎さんとファンの信頼関係の証です。



そして印象的なドラムが鳴り響く。

アンコール一曲目は「正しい街」。

「うおー」って叫んだ。

このライブで一番気分が高まった瞬間。



「正しい街」はライブでは必ずやる曲。

もう椎名林檎はこの曲を自身の十字架ソングとして、一生歌い続けていく覚悟なんだろう。かっこいい。

僕は生の「正しい街」を20年後も30年後も聴いていたい。



2度目のアンコールがあり、締めはこのライブで初公開の新曲。

林檎の声が聞き取りづらく、この曲のタイトルについては諸説ある。


「墓標」「お経」「余興」「東京」「土俵」「玉露」「予兆」「初潮」「所長」

どれがほんとだろう。

ネット上では「余興」が一応の第一候補となっている。



新曲がラストっていうのはちょっとあっけに取られたけど、現在進行形の椎名林檎で幕が閉じるっていうのもなかなか粋だったなと思う。

林檎さんがいなくなって、モニターには「丸サディ」をバックにエンドロールが流れる。

浮かび上がる「RingoEXPO08」の文字。



うーん、最後まで良い演出でした。







今回のライブで印象的だったのが、MCが少なかったということ。

その少ないMCも、黒猫道の若旦那が声の出演をしたりと、林檎さんがしゃべることはほとんどなかった。

僕はこのやり方にとても好感をもった。


あくまで自分は音楽のプロだ。音楽で魅せるんだっていう意地すら感じた。

事実、音楽は素晴らしく、一級品のショウだった。

甘えのない、良い意味で緊張感の途切れないライブだった。

僕はこういう林檎さんのまじめで誠実な姿勢が大好きだ。


林檎さんがこういう性格でよかったって思う。

才能っていうのは真面目さの上に花開くんだなって思うから。(例えば僕はピート・ドハーティも好きだけど、彼がもっと真面目なら、今以上に良い曲を量産できて、ロック史に燦然と輝ける人物になれたんじゃないかと思い、真剣に惜しいと感じる)


これからもジャンジャン稼いで、素晴らしい音楽を届けてください(頻繁にオーケストラを引き連れることができるのは資金力があってこそ)。



ライブ後の安いワインの美味いこと!

椎名林檎全曲レビュー その2

2008-11-26 02:39:18 | 全曲レビュー
レビュー書いてみたら、どうも音の面にばかり着目してしまう傾向がありますね。
歌詞に着目してもいいんですが、そうすると僕の個人的な体験などを引き合いに出さなきゃなりそうだと気づいたので、自重します。イタいわ長いわで悲惨なことになりそうなのでね。
てか、誰も興味持てない話だろう。


そもそも俺の林檎さんとの歩みは、「勝訴ストリップ」を発売日に買った時から始まる。
当時は「椎名林檎」っていうのは一時代を築いたわけだけれど、ある種キワモノだった。
地域差はあるかもしれないけど、男子中学生が椎名林檎を聴くなんて頭がおかしいと思われそうだった。
ラルクとかドラゴンアッシュとかを聴くのが男子中学生としての在るべき姿だったのだ(どっちも聴いてたけど)。
椎名林檎が好きなんて、ましてや発売日にCD屋に走ったなんて恥ずかしくて誰にも言えず、気分はもう隠れキリシタン。


ってことで、つまり、こっからがリアルタイムで接してきた曲になります。
そのせいか自然と「その1」より長めになった。



●ギブス(00.1.26)

①ギブス
これは言うまでもなく、とんでもない名曲。

まず。
イントロが無くてボーカルの息を吸う音で突然曲が始まるのがかっこいい。
この息を吸う音によって、独特の緊張感が生み出されてる様な気がする。
あと、アルバム「勝訴ストリップ」の中の一曲として聴くとき、この曲の始まりはより衝撃的。

サビまではピアノが静かに美しく曲を進めていくんだけど、この時バックで流れる打ち込みの音が、単なるバラード調ではなく、より鋭さのある楽曲にしてる。


で、サビについて書く前に歌詞について。

歌詞。
字面だけ読むと、女の子のキュートな恋心。超可愛い。
しかーしメロディにのると、何だこの貫禄は。
なかなかこういう可愛い歌詞にこういう迫力を持たせて歌える歌手というのはいないだろう。
きゃー、かわいい!で終わりでしょ、普通。

サビ。
サビでは迫力ある歌唱が一気に高まり、悲痛とも言える熱唱に変わる。
ギターも
熱唱と熱演が一気に爆発する様は心に響く。



前も書いたけど、歌詞に実在の人名入れるのは嫌いだし、「i 罠~」っていう当て字もイタいと思う。
でもそんなのこの曲においては瑣末なことに過ぎない。
細かいことばっか言ってんじゃないよ、この唐変木、或いは馬鹿。
本当に素晴らしい曲。


②東京の女
カバー。
「歌舞伎町の女王2」みたいな位置づけでしょうか。


③Σ
これは最強にかっこいい曲。
ライブで聴きたい。

あ、このサビって「積木遊び」と同じメロディね。
このレベルまで来ると、手抜きだなんて言うのは下らない。



●罪と罰(00.1.26)

①罪と罰
こういうスローな重いロックを歌い上げることができるんだからかっこいい。

不協和音っぽいオルガンから始まるイントロがいいね。
掠れ声で悲痛な熱唱をするボーカルもとても良い。

ちなみにギターはベンジーが弾いてるんだけど、あまりフィーチャーされてないし意義を感じられない。
もうちょっとベンジーらしさのある演奏はできなかったのだろうか。


②君ノ瞳ニ恋シテル
スタンダードナンバーのカバー。
聴いていて楽しく気持ちいい。

ただ、「アンコンディショナル・ラブ」などの様な、椎名林檎的世界観は作れていない。
もっと言ってしまえばカラオケっぽい。

ベースが単調だなあ。亀田さんっぽさが全くない。


③17
美しいメロディ。
周囲に馴染めない高校生の鬱屈した心情を感動的に熱唱する曲。
郊外の退屈だが美しい風景が思い浮かぶ。

聴くと一日だけ中高生に戻りたくなる。



●勝訴ストリップ(00.3.31)


①虚言症
さーて、椎名林檎のアルバムはどれも一曲目が凄いぞ。
「無罪モラトリアム」はドラムで幕を開けたが、この「勝訴ストリップ」はでかいベースの音で幕を開ける。

俺は椎名林檎の曲の評価をつけることはできない。
なぜなら、どれも素晴らしくて差をつけられないから。
でも「椎名林檎のベストソングを選ぶか、若しくは死か」と恐怖の大魔王みたいな奴に問われれば、苦し紛れにこの曲を選ぶかもしれない。
そのくらいこの曲は素晴らしい。

この曲の魅力のひとつは、メロディのドラマチックさだと思う。

イントロでドラム、フルート、ドラムと続いて投入されるが、これがもう心をつかんで離さない。
イントロで最高潮まで高まる期待。

Aメロで「ズズ、ズズ」と刻むベースが、Bメロでは解放され水を得たようにグワングワンと走り回る。それと並走するストリングスも実に美しい。


歌詞も実にいいと思うね。
「新聞で見た電車に投身自殺した女の子に向けて書いた」みたいなことをどこかで言っていた。
適度なイタさ。若い時にしか書けない詞だろうな。
そういうシンパシーが明るいメロディと迫力のある演奏に溶け込んでる様に心を揺さぶられる。

ボーカルも適度な巻き舌。高音での掠れるような声。
この歌い方が一番好きだ。


素人の俺が何言ってもどうってことないだろうが、それでも「完璧」と言わせてほしい。

しかもこの曲、16歳とかそのあたりで作った曲らしいぜ。
なにそれ。
もう訳が分からん。HAHAHA。すげーですよ。


②浴室
AメロBメロの詰まったような感じから、サビに移るところでスーッと抜ける。
これがとても気持ちいい。

FPMのおっさんが自身のCDで取り上げてた。
たしかにダンス・ミュージックっぽいね。
いわば「新宿系」と「渋谷系」の融合みたいな曲。


③弁解ドビュッシー
なんかこのAメロって「積木遊び」じゃね?分かりづらいけど。いや、分かりやすいかな。僕、耳腐ってるので(爆)
「Σ」でもつかってたし、このメロディ好きなのかな。

これはかっこいい曲。
ベースが主役だね。
全体的にやすりがかったみたいなザラザラしたところに歪んだベース音が絡んでるのがイケてる。


④ギブス


⑤闇に降る雨
ストリングスの音質がやばい。不吉だー。

「勝訴ストリップ」は前作に比べて高湿度な曲が多いと感じるが、この曲は典型的。タイトルに雨ってあるだけに、じめじめした曲。

声も「無罪モラトリアム」や「虚言症」のものとは違いますね。
全域にわたってハスキーで、曲の雰囲気に合っている。
この曲の巻き舌は若干やり過ぎかな。

俺はこの曲に、次のアルバムである「加爾基 精液 栗ノ花」の気配を感じる。


⑥アイデンティティ
激しい。
悲痛なボーカルや、バカスカやるギターやドラム。かっこいい。

あと、ちょっとこのベース、明らかにすごいんじゃない?
ずっとベースやってる友達もこりゃすごいって言ってた。


⑦罪と罰


⑧ストイシズム
お遊び曲。アルバム内の区切り。
ちょっと油断すると耳に残る(笑)

ちなみにこの歌詞は「罪と罰」の歌詞を逆から歌ったもの。


⑨月に負け犬
個人的に凄く思い入れのある曲。

まず出だしが秀逸。
ボーカルの息を吸う音から始まる。
そして、ゆるーいギターのみをバックにワンフレーズ歌い、「…しまいそうだああああ~」で盛り上がる。
なんてドラマチックなんでしょう。


この曲はこのアルバムでは唯一ギター、ベース、ドラム以外の楽器を使っていない。
それだけに、聴いていてボーカルの微かな鼓動のようなものを感じる。
「吐く息が熱くなっていく」という歌詞があるが、まさにその様子を感じる。


⑩サカナ
歌詞がヒドい。正直、萎える。

あと、「へばりつける」の部分のメロディがあまり好きではない。
サビの出だしはすごく好きなんだけど。

ベースとギャンギャンいってるギターはとてもかっこいい。


⑪病床パブリック
ヤケクソ感のあるぶっつぶれた音質。これがすごくいい。

かなりキャッチーなメロディだと思うんだけど、意外とファンの間で言及されることの少ない曲だったりする。
なぜだろう。

てか、椎名林檎って音域広いなー。
Aメロをはじめて聴いた時、男が歌ってるのかと思った。



⑫本能
椎名林檎のアルバムがすごいなーって思う理由の一つは、大ヒットしたシングル曲が全く浮いてないということだ。
アルバムのバランスと世界観のブレなさ、すばらしい。

この曲はシックな曲調がグッド。
サビのあとで落ち着いたAメロが来るのもグッときます。

あと、「だいきらぁぁぁいなのぉぉぉ」の「らぁぁぁい」の発音が好きです。


⑬依存症
泡の音やエレピが演出する浮遊感が気持ちいい曲。
歌詞も、人名が出てくるのと、「病気なんでしょう」って部分以外は大好き。

そしてなんといっても、ギターソロにピアノやいろんな音が混ざり合うカオスで感動的なアウトロ。
そしてこのアウトロは徐々に小さくなり、最後はプツっと切れてしまう。
この切れた後に聴き手が噛みしめる余韻がいいね。

ほんと、ヒリヒリするくらい良いアルバムです。







ちょっと長くなったので「その2」はこの辺で終わり。

椎名林檎全曲レビュー その1

2008-11-22 01:45:52 | 全曲レビュー
そろそろ林檎さん誕生日だし、ライブもそろそろだし。ってわけではない。
このタイミングは偶然。
全曲レビュー。
椎名林檎を薦めるっていう意味合いではなく、読んで「あー、そうだよねえ」と思いながら見てくれると嬉しいです。
褒めるばっかりも気持ち悪いので、健全なファンとして文句言うところは言おうと思います。



●幸福論(98.5.27)

①幸福論
デビュー曲。
十代(!!)の新人歌手、椎名林檎の「フレッシュさ」、「可愛らしさ」を前面に出したアレンジ。
万人受けのアレンジをされたこの曲には、後にJPOP界を席巻する「椎名林檎」たる在り方や方向性を見ることはほとんどできない。

この曲、実はサビの音程が難しいんだよね。カラオケではみんな大抵外してる。
作曲能力と歌唱力の素晴らしさを密かに発揮した曲だと思う。


②すべりだい
ニコニコ可愛い「幸福論」のカップリングに「すべりだい」を持ってくるところが椎名林檎のセンスであり、戦略。
まあ本人的には「すべりだい」を表題作にしたかったらしいけど。

ベースとエレピの変わったメロディから始まるイントロは、この後にどんなメロディが展開していくのかを全然予想させない。
だから聴いててゾクゾクしたのを覚えてる。

そしてこの曲のギターソロ。これはいかにも椎名林檎的。
ニコニコ「幸福論」の裏側に自己主張の「すべりだい」。





●歌舞伎町の女王(98.9.9)

①歌舞伎町の女王
「新宿系」の看板も手伝って、おそらく椎名林檎の曲で最も有名な曲のひとつがこの「歌舞伎町の女王」。

でもこの曲は椎名林檎のなかでもかなり特殊。
歌詞が物語調で、メロディはこってりした歌謡曲調。
まあこの世界観によって表現しようとしたテーマは、今も一貫してるよね。


②アンコンディショナル・ラブ
シンディ・ローパーのカバー。
原曲はいかにも80年代なポップソングだけど、このカバーはストリングスの美しい、静寂なアレンジに仕上がっている。
そして「歌舞伎町の女王」のカップリングということもあり、歌詞に本来は無いおどろおどろしさを感じる。
きちんと椎名林檎の曲になっている。

英語が下手なのがもったいない。


③実録 -新宿にて- 丸の内サディスティック~歌舞伎町の女王
こんな路上ライブがあったら、たとえ椎名林檎を知らなかったとしても、聴き入って2000円払うね。





●ここでキスして。(99.1.20)

①ここでキスして。
福岡のバンド時代からあった曲。
この曲は売れないはずがなかっただろう。
女子高生の健気なラブソングの皮をかぶっているけど、「あたしの思想を見抜いて」ってのはなんとも椎名林檎的。



②眩暈
隠れ名曲。もはや隠れてないけど。
椎名林檎の非凡さを煮詰めたらこうなりましたって感じの曲だね、これは。

サビの重ね録りされたボーカルが幻想的でグッド。


③リモートコントローラー
イントロのハープシコードが印象的な聖飢魔Ⅱ的ノリ。
その実は「コンポのリモコンがねーよ」っていうだけの曲。





●無罪モラトリアム(99.2.24)


①正しい街
イントロのドラムがあまりに印象的で今でも鳥肌が立つ。
この曲は1曲目しかあり得ない。

「正しい街」とは即ち椎名林檎の出身地福岡のこと。
要は上京ソングですね。



②歌舞伎町の女王
③幸福論(悦楽編)
可愛らしいデビュー曲はこのアルバムで破壊されてしまう。
この自己否定によって椎名林檎の方向性は完全に固まった。

悦楽編のメロディに乗ると、歌詞の意味も変わって聞こえる。
あまのじゃくな印象になる。

しかしまあ、歌は崩さずにきちっと歌うあたり自覚的な自演家。
本当は真面目で礼儀正しいってのがこのあたりから分かる。


④茜さす 帰路照らされど…
16、7の時に作った曲。
ストリングスとピアノの美しさが土台にあり、乱暴なアコギと自由なベースが生きている。


⑤シドと白昼夢
特にベースのフレーズがかっこいい。
よって俺はベースを買った直後、この曲を練習しまくった。
カラオケで誰かがこの曲歌うと、このベースを口ずさみウザがられる。

あとね、えーと、シドとか歌詞に出てくるジャニスとか、要らない。
歌詞に実在の人名入れるのってイタいよ。


⑥積木遊び
アルバムのお遊び的位置の曲。
「勝訴ストリップ」で言えば「ストイシズム」的位置。まあもうちょっとまじめにやってるけど。

これもイントロのベースがかっこいい。
実際弾こうとすると、半拍子(って言うのか?)の部分があったりでとても難しかった。
ライブではサビの部分で振りがつく。

お遊びっぽいのにかっこいい。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
そんな感じの曲。


⑦ここでキスして。

⑧同じ夜
うーん。個人的には惜しいと感じる曲。
楽器がイントロのバイオリンと、アコギだけっていうシンプルな構成なだけに、歌詞の背伸び感が浮き出ちゃってる。
歌詞中の「自己実現」とか「根源」とかの単語がメロディーにスーッと溶けていかないで、そのまま頭の中に引っかかる感じがする。

でも歌詞が歌っている内容は涙するに十分。
心を打つ曲であることには間違いない。


⑨警告
これぞロック・バンドって感じのサウンド。
曲の最後の息を吸う音がアルバム全体にメリハリをつけてる。


⑪モルヒネ
名曲が詰まったこの怒涛のようなアルバムは、「モルヒネ」という不穏な題のほのぼのソングで静かに幕を閉じる。





●本能(99.10.27)

①本能
これは流れ的に「勝訴ストリップ」のとこで書こうと思う。

とりあえず、曲がウケたのか。看護婦がウケたのか。
誤ったイメージの流布。
村上春樹でいえば「ノルウェイの森」ベストセラーの不幸。


②あおぞら
「本能」の後に「あおぞら」。
これは「幸福論」でも使われたギャップ戦略。

とても歌詞、メロディ共に可愛い曲。

個人的にはワワワワンっていうギター(何奏法って言うんだっけ?)は邪魔。
このワワワワンには「椎名林檎は一筋縄ではいかないぜ」っていうメッセージを感じるわけだけど、他にやり方があったのでは?

この可愛い曲も、後のライブで「悦楽編」として破壊されてしまう。


③輪廻ハイライト
20歳そこそこの子がジャズを歌って様になるんだからすさまじい才能だ。
歌詞カードの「空耳歌詞」の発想も面白い。

「カクテル・バー」のCMに使われてたなー。





●幸福論(マキシ・シングル)

①幸福論
「本能」に便乗して、マキシにしてみたら売れた「幸福論」。
うーん。売れる売れないってそういうことだよなあ。

②すべりだい

③時が暴走する
17頃の曲。
割れたピアノの音が不穏。





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最近納得できないこと。

新垣結衣もでかい。