「生協だれでも9条ネットワーク」

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【参加報告】4.15小澤隆一さん講演会の報告(その2)講演

2017-05-13 23:59:31 | 参加報告
この前の記事:(その1)3人からの話題提供は、こちら

4.15小澤隆一さん講演会の報告(その2)
講演「安倍政権と憲法をめぐる情勢
   -野党+市民の力と今後の展望-」

 小澤隆一さんの講演は以下の講演レジュメに基き1時間30分に及びました。生協の九条の会関係者を中心とした41名の講演会参加者に、今後の取り組みへの確信と示唆を与えたと思います。第189回国会「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会公聴会」での公述人発言も資料提供して頂きました。
<以下、レジュメより>
はじめに
・awayな気分の中でのat-homeな話
 政治(Politics)≠(憲)法(Law) 実践(Praxis)≠理論(Theory)
 GovernanceまたはManagement≠Academia  戦略的「妥協」≠「原理」主義
・それでも…今の情勢の起点は安保法制 「2015・夏」のたたかい 憲法問題
・したがって… 憲法問題を考えることは、政治情勢を読み解くカギ


1.幻滅の安保法制と安保法制の現実
(1)2種類の幻滅-主権者(人民)と権力者
(ア)権力批判の源泉としての主権者(人民)の「幻滅」
・「民主主義って何だ」 カウンター・デモクラシーの神髄に触れるPerformance
・←「憂鬱」なAcademiaによるInspire
(とくに2015.6.4憲法審査会での3憲法学者の安保法制違憲発言、
そして「(地方国立)文系学部廃止」を示唆する6.8文科大臣通知とのSynchronizeも)
 内閣法制局の敗北(集団的自衛権容認への転換)
 →「立憲主義」(憲法=権力を縛るもの)からの批判 その「主流」Major化
 (かつてないこの言葉への社会の注目→「戦争法廃止・立憲主義回復」のスローガンに)
(イ)焦燥と意気阻喪としての権力者の「幻滅」
・2017.2.3衆院予算委員会 稲田×安倍の質疑での「9条2項改正」論
・南スーダンPKO自衛隊撤収(5月末)決定(2017.3) 「日報」・「森友」問題のさなか

(2)安保法制の現実
・4つの矛盾点 (2015.7.13衆院安保法制特別委員会小澤公述 資料参照)
①集団的自衛権「限定」行使容認 本当に「限定」か? 「言葉遊び」が過ぎる「存立危機事態」(小澤公述下線(a) 文献①99頁以下、②60頁以下参照)
②「後方支援」は「武力行使」ではない? 自衛隊員は捕虜にならない(なれない)
(公述下線(b)(c) 文献①104頁以下、③参照)
③外国軍の武器等防護のための武器使用 「平時」の活動から武力紛争への移行の危険
懸念される南シナ海 (公述下線(d) 文献①108頁以下、④参照)
④PKO法の適用対象、自衛隊の活動・業務の大幅拡大、武器使用の強化
 「PKO5原則」の重み 南スーダンでの顛末 (文献①110頁、⑤参照

(3)「幻滅」のゆくえ
・さらなる権力批判→倒閣か? 政治そのものへの幻滅(アパシー)か?
・危険な共謀罪の「萎縮効果」Chilling effect 「テロ対策」というデマ宣伝の効果
(文献⑥参照)
・「受け皿」としての野党共闘の成否


2.幻想の安全保障と安保体制の現実
(1)幻想(神話)としての安全保障
(ア)「核抑止力」論・北鮮の核武装・ミサイル開発 「核抑止力」論の現実性(reality)ゆえの非現実性
(文献⑨参照)
(イ)米軍による「尖閣安堵」
・「口先」だけの「安保5条適用」論 America Firstのトランプ政権ならなおさら…
・→「核と軍事同盟」による安全保障の幻想性
(多くの国民は「安保=米軍が平和を守る」と信じているように見えるが…
しかし、それは「原子力ムラ」ならぬ「安保ムラ」の形成と その影響 (文献⑦)

(2)日米安保体制という現実
(ア)2015.4日米ガイドライン→安保法制のライン
 日米安保(60年安保条約)は本格的な軍事同盟ではないところから出発
 今日ではグローバル安保、「日米同盟」が定着 そのための国内法整備としての安保法制
 そのことに私たちはどこまで自覚的か?(文献①95頁以下)
(イ)アメリカにとっての日本駐留の意味
・ジョン・F・ダレス「我々が望むだけの軍隊を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利の獲得が目標だ」=(「日本防衛のため」ではない)
・高野雄一「安保条約は憲章51条(集団的自衛権)の外でoperateする場合があることを予定している」(文献⑧238頁) 「極東の平和と安全の維持」というMagic Word
 外征軍的・侵略的軍隊としての在日米軍 今では中東までカヴァー 

(3)抑止力論を超えて
・東アジア(中東も)における危険な「夢遊病者たち」(文献⑨参照)
・「北朝鮮問題」解決の鍵としての 核兵器禁止条約締結 日米安保体制からの脱却
 もう一つのOptionとしての米朝直接交渉による「北体制安堵」
 それは果たして可能か? 将来展望のある策か?(文献⑩⑪参照)


3.日本国憲法の理想とその実現
(1)廃墟(瓦礫)の上の平和理念
・国連憲章と日本国憲法の「共時性」
・「平和の実現」というAgenda Setting
・映画「この世界の片隅に」の世界 生きている(生き残った)→平和のうちに生きる

(2)国連憲章と日本国憲法
・国際連盟(規約)と国際連合(憲章) 継続と断絶(飛躍) (文献⑬参照)
・武力制裁(国連)と非武装と(憲法9条)の「間」 矛盾?or対立(=相互補完)?
・「法と(国内外の)世論による平和の実現」という共通(共同)目標
・戦後平和理念と戦後秩序を壊すもの 守り活かすもの=市民連合+野党の結集軸
 (文献⑩⑪⑫参照)


むすびにかえて いま私たちがなすべきこと-対話と研鑽
・今日、私が示したのは 憲法「学者」による「原理」主義的情勢把握
・「本当にこんな形でしか解決(打開)の道がないのか」と思うと茫然かつ憂鬱…
・しかし希望を捨てずに努力することが大事


参考文献
①渡辺治・福祉国家構想研究会編『日米安保と戦争法に代わる選択肢』(大月書店・2016)
 (添付の藤岡惇氏の書評も乞参照)
②阪田雅裕編著『憲法9条と安保法制』(有斐閣・2016)
③柳澤協二『自衛隊の転機 政治と軍事の矛盾を問う』(NHK出版・2015)
④同『新安保法制は日本をどこに導くか』(かもがわ出版・2015)
⑤自衛隊を活かす会編『南スーダン、南シナ海、北朝鮮 新安保法制発動の焦点』(かもがわ出版・2016)
⑥鈴木亜英・山田敬男編著『共謀罪vs国民の自由』(学習の友社・2017年) 本日特価扱
⑦白井聡『永続敗戦論』(講談社・2016)
⑧高野雄一『集団安保と自衛権』(東信堂・1999)
⑨クリストファー・クラーク(小原淳訳)『夢遊病者たち 第一次世界大戦はいかにして始まったか』(上・下巻 みすず書房・2016)
⑩小沢隆一「岐路に立つ戦後世界と日本国憲法の平和主義」経済261号(2017.6近刊)
⑪同「日本国憲法施行70年-その平和主義の理念の実現に向けて」平和運動541号(2017.5近刊)
⑫同「憲法施行70年 岐路に立つ9条 トランプ政権と共謀罪を見すえて」
季論21 2017年春号(2017.4)  本日特価扱
⑬ハリー・ヒンズリー(佐藤恭三訳)『権力と平和の模索 国際関係史の理論と現実』(勁草書房・2015)


<資料>
第189回国会 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会公聴会 第1号(平成27年7月13日(月))の衆議院ホームページでの掲載は、こちら。スクロールしていくと小澤隆一さんの公述人発言があります。
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