douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

寿初春大歌舞伎 松竹座 昼の部

2005-01-05 | 歌舞伎
<相生獅子>
1つめは舞踊物。
獅子と言うと、紅白の長い髪を振り回す連獅子や鏡獅子を思い浮かべる。
これもそういった獅子ものなのだけれど、女形が舞うというところがめずらしい。

舞台の大広間に登場したのは二人の美しいお姫様。
蝶と戯れ、牡丹のついた扇獅子を持って舞い、非常に華やか。
二人は舞いながら、ひとまず退場。
再び、牡丹の枝を手に現れた時には、獅子の精が乗り移り、おなじみの髪型となっていた。
最後は髪を振り回し、迫力もあった。

紅白のお姫様着物を着ていてきらびやかだし、花や蝶といった小物も使われていて
乙女チックな獅子で面白かった。

<天満宮菜種御供 時平の七笑>
2つめは時代物。
身に覚えのない謀反の疑いをかけられ太宰府へ流罪を言い渡される菅原道真。
それを庇い助けようとする藤原時平。
しかし、実はすべて道真を失脚させようと時平が仕組んだ事だった、という話。

一見、善人面していたが実は悪人だった時平が、最後、策略が成功し笑い続ける。
そりゃあもう、七笑と言うだけあって、しつこく様々なバリエーションで笑う。
すると何となくつられてこっちも笑ってしまう。不思議だ。

<男の花道>
3つめは、世話物(多分⋯)
戦時中に長谷川一夫が主演大ヒットとなった映画がもとらしい。
(さらにそのもととなっているのは講談らしい)
目を患った加賀屋歌右衛門という人気女形が、土生玄碩という蘭医に治療してもらう。
そして心から感謝した歌右衛門は数年後、玄碩の危急を救う為に舞台を抜け出し、玄碩を助ける、という話。
時代劇感覚で見れるので非常にわかりやすいストーリーだった。

後半、歌右衛門が観客に舞台を抜け出す了解を得るシーンは、実際に劇場にいる観客自身が
観客役、という演出で非常に面白かった。
芝居を途中で止めた歌右衛門に客席のあちこちから
「どういうことでえ」とか「役者が舞台を途中で止めるな」とかいう声がとびかう。
恩人の危急の時なのだと説明し、
最後には「行ってやんな」「待っててやるよ」という声に見送られ、
歌右衛門は客席に下りて、走っていく。

しかし、私から見るとこの玄碩の危急というのが、くだらない。
切腹だの何だの言っても、結局は酒の席で踊りを強要され、
嫌だったから歌右衛門を呼んだってだけなのでは⋯
そんなことで人気役者を呼びつけるか、普通。
もうちょっと、納得のいく理由はなかったのか。
最後、走って息も絶え絶えに駆け付けた歌右衛門に
良く来てくれた、俺の替わりに踊ってくれ、って
あんたが妙な意地を張らなければ、こんな事にはならなかっただろ。
まあ、その場の人がみんな男の友情は美しい、と納得してるから良いけど。
私にはなんかしっくりこなかった。