douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

パコと魔法の絵本

2008-09-29 | 映画
パコと魔法の絵本 中島哲也監督 2008 日本

数ヶ月前にテレビで「MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人」
(今年の再演の方)を見て、なかなかおもしろかったので、
映画館まで見に行ってしまった。わりと原作に忠実で、良かったな。

初めて見たこの監督の作品が「Beautiful Sunday」だったもんだから、
下妻や松子のテイストにびっくりしたけど、
もう今となっては、ポップでビビッドなイメージだわ。
セットや衣装も派手でなかなかよろしかったのですが、
キャラ設定が舞台以上にぶっとんでて、ちょっとやり過ぎ感が…
もうちょっと普通な感じの人もいないと、カオス。
そして本筋自体に遊びの部分が多いのに、
さらに遊びのネタを入れてくるので、くどい気も。
誰なんだ。ガンオタは。映画では片桐仁も戸次重幸もいないのに。

サイトウ・マコト展

2008-09-28 | 美術
サイトウ・マコト展:SCENE[0]  @金沢21世紀美術館

デザイナーであるサイトウマコトの新作50点からなる絵画展。
ハッキンカイロだと言われながらも、私がとてもとても気に入って
使っていたケータイ、PENCKをデザインした人だ。

PENCKが本当にすばらしかったので、見ておこうと思ったんだけれど、
まあ、プロダクツとは違いますわな。絵画は。
そして、デザインとアートは似ている気がするけど、やっぱり違うものだからね…

映画から切り取ったシーンを、なんらかの画像処理して出力してる(のだと思うんだが…)
作品なので、なんかこう、血が通ってないっていうか、作品を前にしても来るものがない…
絵そのものはわりとかっこいいと思うのだけれど、絵画といわれるとね。
デジタルが悪いというよりも、表現方法として違う気がするの。
だけど、もし、この表面的で伝わるものがない薄さっていうのが、現代を映し出す表現なんだ、
っていうんだとしたら、そこそこ成功していると思う。

(2008.08.02-2008.11.03)

ロン・ミュエック展

2008-09-28 | 美術
ロン・ミュエック展 @金沢21世紀美術館

シリコンやファイバーグラスといった素材を使って、
それはもうリアルな人間の彫刻をつくりあげる作家。
造形はこのうえなくリアルで精緻なものなのに
サイズはすごく大きかったり、小さかったりして。
見ているとそれがすごく不思議な感覚。

ミュエックを知ったのは2001年のヴェネツィアビエンナーレで。
展示会場に入ってすぐのところにしゃがみ込む、ちょーでかい少年に本気でびびった。
もともとは倉庫だったという会場の、高い天井ギリギリまである大作を
今でもはっきり覚えてる。(もう7年前かってことに軽いめまいが…)

で、金沢での展覧会。
作品数は7点と少なく感じるけれど、この人の制作ペースを考えるとかなりの充実。
全ての工程を自分で行い、今までに制作した数は数十点らしいので。
男の顔や新生児など、どれも微に入り細を穿ち、リアルを追求している。

大体、人間を模した芸術作品っていうのは、理想型に向かう。
そもそも人間自体が自らの身体を理想型に近づけようと努力している。
アニメやフィギュアだって理想型だし、生身でいうならアイドルとかがそう。
そういう指向と全く逆に、人間をどこまでもリアルに表現する。ただしサイズを除いて。
一見、滑らかに見える皮膚には美しさすら感じたりするものなのに、
そこに青く透ける静脈や、ぶつぶつとくぼんだ毛穴や、毛穴から生えるムダ毛の存在を
認めた時点で、なんだかグロテスクに見えるっていうのはどういうことなんだろな…

(2008.04.26-2008.08.31)

シャガール展 色彩の詩人

2008-09-28 | 美術
シャガール展 色彩の詩人 @兵庫県立美術館

20世紀の巨匠の一人、マルク・シャガールの展覧会。
美しい色彩で描かれた幻想的な絵で、好きな画家の一人だ。
約150点の展示とのことだけど、銅版画やリトグラフが多めで、
思ったほど、油彩は見られなくて残念。
おお、これは…! と思うようなのは、数点といったところ。
総作品数が多い画家だし、わりとモチーフが一貫しているから、
初めて見た絵なのか、どこかで見たことがある絵なのか、区別がつきにくかったりして…
とはいえ、長い画業の流れを見るにはなかなか良かったな。

ユダヤ劇場の壁画は見どころ。良かった。
何を描いているか、というより、何を描かないかってところに
シャガールの凄さがあるように思った。
白い空白部分や、線だけで簡略化された部分っていうのが、逆に本質かも。
それにしても、中途半端な「劇場空間の再現」みたいなのが余計だった。

やはり、どんなに幸せな場面を描いていても、
戦時中に描かれた絵は、時代の不穏な空気、生死をも脅かす不安が画面から漂っている。
見ているとこちらにまで不安が伝染しそうなくらい。
とくに、ユダヤ人という出自が、私には想像もできないぐらいに、
この人の内面に大きな影響を与えているのだな、と。

晩年は幻想的な中にも明るい色彩で、安定感のある作品が多かったのだけど、
そうなると、ちょっと物足りなさも感じるという…
制作環境と表現のかねあいの難しいところ…

(2008.09.06-2008.10.15)

アートでかけ橋

2008-09-08 | 美術
アートでかけ橋 @アサヒビール大山崎山荘美術館 大山崎町内各所

京都府、大山崎町にある美術館と町内に作品があり、
期間中には関連イベントも行われていたらしい。
「アートフェスタin大山崎町2008」とあるので、美術館だけでなく町全体で
この企画が行われていたみたい。
3組のアーティスト、小沢剛、セリーナ・オウ、パラモデルが大山崎に滞在し制作。
こういう現代アートと地域が結びついているというのがすごく大事な気がする。

まず最初に向かったのが離宮八幡宮。
小沢剛の「ベジタブル・ウェポンー筑前煮/京都」。
ベジタブル・ウェポンとは
「町でモデルを探す→モデルと料理を決める→その材料を買う
→銃の形に組み立てる→撮影する→料理する→みんなで食べる」
というプロセスすべてが作品、というもの。
展示してあるのは撮影された写真作品なのだけど、
その向こうには料理を通じて色んな文化の人とコミュニケートした事実がある。
この作品のある石は、1864年禁門の変で焼かれた多宝塔の礎石だとのこと。
かつて争いのあった痕跡の残る場所にベジタブル・ウェポンを展示してあるのだ。

次にパラモデルの作品のある集会所へ。
プラレールを使って作り出されたインスタレーション。
張り巡らされたパイプ、クレーンやトラック、動物や木。
空想的で可愛いいんだけれど、ちょっと毒もある。
例えばガントリークレーンが地球をつり上げていたりする。
地球の至る所に建設を続けていったらどうなるんだろ? って考えさせたりもする。

セリーナ・オウの作品があった区民会館は、ちっちゃくてびっくり。
入ってすぐの一室に、大山崎で撮ったという人々の写真が。
もしかしたら、こうやって身近な人たちの写真が展示されるのは、
街の人たちにとって現代アートが身近に感じられて良いのかも。

美術館では、この3人の作品が集合していた。
もともと美術館として作られたわけじゃない建物での展示は
とてもおもしろい。
マントルピースに何気なく作品があったり。
パラモデルの作品はなんだかドバイを思い起こさせる。
どんどん建設していくところに、以前は夢や希望があったけど、
今はどうなんだろう。不安の方が強いんじゃないだろうか。
新館にあった小沢剛のベジタブル・ウェポン。
国が違えば食材も料理も違う。
それでも一緒に食事して仲良くなれたら良いね。
セリーナ・オウの働く人たち。
どこで何をして働くかってことが、その人の本質につながっているのかもしれない。

街を歩きながら、色々と考えることの多かった企画だった。
あと2ヶ月後ろ倒しでやってくれれば、もっと涼しい中で街を歩けたのに。
暑すぎて、街をぶらぶらできなかった。

(2008.07.10-2008.09.07)

アートでかけ橋(写真編)

2008-09-08 | 美術
アートでかけ橋 @アサヒビール大山崎山荘美術館 大山崎町内各所

7月から行われていたこの企画展にこの夏ずっと行きたいと思いながらも、
明らかに街中を歩くと思われる企画なので、涼しくなるのを待っていた。
そしたら、うっかり今日(9月7日)が最終日。今日は全然っ!涼しくない!

参加アーティストは小沢剛、セリーナ・オウ、パラモデル。
まずはこのブログ初の試み。写真を。


小沢剛の作品がある離宮八幡宮。
途中、場所が分からなくて、民家に入りそうになった私。



手水を使うところにあった水の出てるやつ。(名称がわからない)
とても姿よろしき竜だったので、思わず写真をとってしまった。



少し奥に見切れてるのが小沢剛の作品。
この石を前にこの作品があるってことが、意味がある。



パラモデルの作品がある大山崎集会所。
これが思っていた以上におもしろかった。



ここはセリーナ・オウの作品がある大山崎区民会館。
ちっちゃくてびっくり。ホールのようなものを想像してたので。



大山崎山荘美術館の庭。奥にギョッとするぐらいでかい鯉が泳いでた。
建物も庭も雰囲気があって良い美術館。



美術館の新館。安藤忠雄設計。モネの睡蓮がある。
地中美術館と同じ組み合わせだな。



美術館から駅へ向かう途中で見つけた。
竹が倒れないように支えているのだろうけど、なんとなく川俣正っぽくておもしろかったので。

まずは写真編でした。

ひとり芝居

2008-09-01 | 雑記
イッセー尾形のこれからの生活 2008 in ひょうご @兵庫県立芸術文化センター

とにかく楽しく笑って、笑って、気がついたら終わってしまった。
最小限の小物と衣装だけで、何人もの人を演じ分けてるんだから凄い。
セリフも全然説明的じゃないのに、情景が浮かぶし、
その人のそれまでの人生まで想像できる。

どれも新作のネタということで、詳細は書かないけれど、
どの人も「あーいそう、こんな人」って思わせてしまう。
細かい仕草とかセリフとかにリアリティがあって。すごい人間観察力。

年齢も性別も違う800人もの人が同じところで笑っているってことが
なんだか不思議で、安心感があった。
にんげんっていいなって柄にもなく思ったりして…