douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

ターナー賞の歩み展

2008-07-25 | 美術
ターナー賞の歩み展  @森美術館(六本木)

イギリスの現代美術の賞であるターナー賞。
現代美術で最も重要な賞の一つと言われているそう。
そのターナー賞の歴史を振り返り、受賞したアーティストの当時の作品を中心にした展覧会。

イギリスというと伝統的なイメージがあるけれども、
ターナー賞の作品はどれもポップで斬新。
20年以上前の作品を今見ても全然あり。

しかし、なんといってもデミアン・ハーストの
「母と子、分断されて」のインパクトが、もう。
実物の牛と子牛がまっ二つに切断されてホルマリン漬けにされた作品。
牛の内部が見れてしまう…
焼き肉を食べに行きたくなってしまう…(間違っている)
最近では頭蓋骨をダイヤモンドで覆った、なんだかよくわからない作品を
作っているデミアン・ハーストだけど、
やはりやらないことをやるっていう凄さはあるなー。

現代美術の展覧会というと世界各国のアーティストを集めたものが多いけれど、
こうやって一つの国だけのアーティストを集めたものもとても面白いと思った。

冒険王・横尾忠則

2008-07-21 | 美術
冒険王・横尾忠則 @兵庫県立美術館

デザイナーそして画家として多彩な活動をしている横尾忠則の大規模な個展。
絵画だけでも約170点、さらにグラフィック原画が数百点という充実ぶり。
全部見るのに2時間半ほどかかりました。
それでも、駆け足になってしまったところがあるぐらい。

「冒険」というスリルと期待を思わせるワードを切り口に
展開していく構成がとても良い。
少年探偵団の少年3人が大人の世界を覗いているような構図の絵なんか
まさに冒険。子供の頃の気持ちを思い出させてくれる。

自由で奔放に飛躍するイメージの絵画がある一方、
グラフィックデザイナーとしての仕事である原画の緻密さにも驚かされる。
印刷の版下(原稿)に詳細に書き込まれた色指定や印刷の指定など、
膨大な資料の一つ一つに見入ってしまいました。

この夏、冒険王はお台場ではなく、横尾忠則だ、と言っておきましょう。

寺田真由美展

2008-07-05 | 美術
寺田真由美展 @ギャラリーヤマキファインアート(兵庫・神戸元町)

自作した室内の模型を撮った写真作品。
モノクロの室内の写真は、ぱっと見るととても模型には見えない。
ただ、どこかニュアンスに違和感があって、
見ているうちになんだか不思議な気持ちになってくる。

写真に写っている以上、それが実在の空間だろうと、模型の仮想空間だろうと、
知らないどこか、であることには変わりがない。
虚構と現実の曖昧さを考えてしまう作品だった。

東學墨画展「天妖」

2008-07-05 | 美術
東學墨画展「天妖」 @HEPホール(大阪・梅田)

現代絵師、東學による4日間限定の展覧会。

一歩中に入るとそこは妖しい遊郭のようだった。
天井からつり下げられた赤い角棒がまるで格子のようで、
その格子越しに女たちを眺める。

墨で描かれた遊女たちはどれもこの世のものではないように妖しくて美しい、
と言葉にしてしまえば簡単だけど、それが絵として存在しているから、凄い。
白と黒で描かれた絵に、赤い格子、そして生けられた花。
濃密で湿度の高い空気がそこにはあった。

塩田千春 精神の呼吸

2008-07-04 | 美術
塩田千春 精神の呼吸 @国立国際美術館(大阪・中之島)

ベルリンを拠点に活動をしているアーティスト、塩田千春の展覧会。

2001年横浜トリエンナーレで、会場を見下ろすかのようにつり下げられた
巨大な泥のついたドレス。あの作品のインパクトはちょっと忘れられない。

そしてまた、今回も深く記憶に刻み付けられる展覧会だった。

たくさんの靴のインスタレーション、ベッドと糸のインスタレーション、
鉄枠の中に糸を張り巡らせた作品、泥のついた3着のドレス。
そしていくつかの写真と映像で構成されている。

国際美術館のエスカレータを地下へ降りていくと、目に飛び込んでくる「大陸を越えて」。
去年からずっと靴の寄付を美術館で呼びかけていた。
そして全国から集まった靴が真っ赤な糸で思い出と一緒に繋がれている。

「トラウマ/日常」と名付けられた作品は、
鉄枠の中に黒い糸で服などを閉じ込めているように見える。
それは束縛なのか。包み込んでいるのか。
黒い糸は緊張感を孕み、思い出したくない嫌な記憶にどこか似ている。

いくつもの白いベッドを縛り付けるかのように
展示室全体に黒い糸を張り巡らせた「眠っている間に」。
ベッドは病院にあるような簡素なもの。まるでさっきまで誰かが眠っていたかのように、
シーツや布団がよれて、しわになっている。
私は入院したことなどないのに、なぜか、夜シンと静まった病院の
死と隣り合わせの空気を”思い出し”、怖くなった。

3着の巨大なドレス「皮膚からの記憶」。これは横浜トリエンナーレでも見たものだけれど、
今回は水を使っていなかった。(横浜ではドレスに絶え間なく水がかけられていた)
生まれたときは真っ白だったはずなのに、
段々と汚れていって、それは拭っても拭ってももう消えない。

言葉にしてしまえば、それは迫力なのかもしれない。
でも、それだけではない、もっと深い闇のような得体の知れないものを感じる。
死を連想させるような不穏な空気が漂っているのだ。
怖い。でも見たい。まるでタナトスのような。

だけど、作者本人が泥にまみれた写真作品のタイトルに
「私の死はまだ見たことがない」とあるように、
そこには生が隣り合わせになっている。

オペラ座の怪人

2008-07-03 | 雑記
オペラ座の怪人 劇団四季

「劇団四季のオペラ座の怪人は凄いらしい」
と聞いてはいたのだけれど、なかなか機会に恵まれず、見ていなかった。
ついに見ることができました。

確かに凄い。

ミュージカルが久しぶりだったので、
ちょっとテンションについていけるかどうか不安だったけれど、問題なし。
ただ最後の方は役者のテンションが上がり過ぎているのか、
何と言っているのか良くわからなかった…

このミュージカルの凄いところは、二重構造になっているところ。
観客は「オペラ座の怪人」の観客であると同時に「オペラ座」の観客でもある。
パリのオペラ座で次々と起こる事件がリアルに感じられるように、巧みに演出されている。

歌はもう文句無しに素晴らしい曲ばかりだし、
そりゃあ20年間上演されるだけのことはある。

お釈迦様の掌

2008-07-02 | 美術
お釈迦様の掌 @ARTCOURT Gallery

宮永愛子、人長果月、塩保明子の三人による展覧会。
「お釈迦様の掌」というテーマで作られた作品が一部屋毎に展示してある。
最終日ギリギリの駆け込みだったのだけれども、行って良かった。間に合って良かった。

塩保明子の「water fall」は切り絵で滝を表現。
細かく細工された長いトレーシングペーパーが高い天井から垂れ下がる様は、
影も含めてとても美しく圧巻。

宮永愛子の「域(さかい)」は塩がついたキラキラした糸を部屋に張り巡らせている。
わりと低い位置に糸があるので、緊張感があるインスタレーション。

人長果月の「ウキヨ」は蜘蛛の糸をモチーフにした映像。
人が立つとその目の前に、無数の手が吹き出すように伸ばされていく映像が現れる。
決してグロテスクではなく幻想的だ。

「お釈迦様の掌」という抽象的で哲学的なテーマから
こんな風にそれぞれ多様な表現が生まれる様がとても面白かった。