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douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

七月大歌舞伎 夜の部 @松竹座

2008-08-12 | 歌舞伎
七月大歌舞伎 夜の部 @松竹座

<熊谷陣屋 くまがいじんや>
後白河院のご落胤、平敦盛を助けるために
自らの子供を討った熊谷次郎直実。
歌舞伎でよくある忠義と人情にゆれる話だ。
仁左衛門の重々しい直実は見応えがあった。
他はまあまあ。

<黒手組曲輪達引 くろてぐみくるわのたてひき>
歌舞伎十八番の「助六」のパロディとも言える狂言。
助六大好きな私はもう、最高に楽しかった。
序幕から菊五郎の振り切った三枚目ぶりに笑い、
二幕目からの助六としての男振りに見蕩れ、
大詰の立ち回りに圧倒された。
助六にくらべて揚巻の出番が少なかった気もするけど。
助六も見たくなったなあ。

<羽衣 はごろも>
羽衣伝説を題材にした舞踊。
動きが能にわりと似ている気が。
菊之助と松録による江戸コンビで。
幻想的で美しい舞いだった。

<団子売 だんごうり>
こちらは孝太郎と愛之助という上方コンビで。
団子売りの夫婦が団子を作る様子の軽妙で賑やかな様子が良かった。

七月大歌舞伎 昼の部 @松竹座

2008-08-05 | 歌舞伎
七月大歌舞伎 昼の部 @松竹座

《春調娘七種 はるのしらべむすめななくさ》
春の七種の行事を題材とした舞踊。
登場人物は孝太郎による静御前と、松録と菊之助による曽我兄弟。
出たな、曽我兄弟。どんだけ愛されてるんだ曽我兄弟。
なぜこの夏の盛りに正月狂言を? という疑問もあるけれど、
めでたく綺麗だったので、まあいいか。

《木村長門守 きむらながとのかみ》
「血判取」と呼ばれる場。豊臣秀頼の名代として木村重成が、
徳川家康の本陣へ和睦の神文をもらいにいくという話。

我當による木村重成と左團次による徳川家康。
「颯爽とした若き武将としての矜持を保つ重成が、老獪な家康を相手に、
一歩も引けを取らずに対峙し、神文への血判を受け取るまでが最大の見どころ。」
と書いてあるんだけど、木村重成若い、だろうか……ちょっと…
家康は老獪ぶりはなかなか面白かった。

《伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ》
「花水橋」「御殿」「床下」「対決」「刃傷」の通しで。
「御殿」での政岡の印象しかなかった伽羅先代萩だったんだけれども、
こうして通しで見ると、前半の女たちの大奥の世界と、後半の男たちの裁判の世界と
二種類の対決を描いているのがわかる。

前半は女たちの大奥でのどろどろと屈折したやり取り。
陰険というか陰湿というか、もうどれだけの闇を抱えてるのかっていう恐ろしさ。
それに比べれば、後半での裁判は最終的に全ての悪事が露見するし、単純で良い。
そして悪役だって美学のようなものが感じられる。

しかし、殺された我が子を褒めつつ悲しむ政岡に思わず涙が…
最近、ほんとに涙腺が弱くて。

七月大歌舞伎 夜の部 @松竹座 その2

2007-07-25 | 歌舞伎
<女殺油地獄>
油屋の息子・与兵衛が金欲しさに知り合いの人妻を殺すという、
基本的には陰惨、としか言えないような話。

歌舞伎の事を書く時って、
演目について書いているのか、役者について書いているのか、
わからなくなってきて、いつも中途半端になってしまうのだけど、
この芝居は特に難しいなあ。
話自体にすごく力があるし、前半で一度、海老蔵の与兵衛を見た後に、
もう一度、仁左衛門の与兵衛を見に行ったし。

海老蔵は海老蔵で若さで押し切る感じが悪くなかったけれど、
関西弁が不安定で、何を言っているのか良くわからなかったのが残念。
仁左衛門はもう言うことありません。見ることが出来て良かった。
役者が違うと、こうも違うのだな、と思いました。

海老蔵で見た時は、与兵衛がとてもアウトローに感じた。
それはまわりのほとんどが上方の役者の中、一人江戸の役者で、
関西弁もままならない海老蔵がアウェイな立場であった事も関係してるはず。
そしてそのアウェイな感じが最終的には人殺しをしてしまう与兵衛の
常にぴりぴりとした苛立ち、もどかしさなのかなあ、と思った。
最後の殺しの場面もキレた若者の衝動殺人でしかない。

これが仁左衛門だと、違った印象になる。
アウトローはアウトローなんだけれども、
虚勢という仮面の下に、常に隠し持っている人恋しさ、寂しさみたいなものを感じた。
意地っ張りで甘えたでどこか憎めない。
だからこそ、最後の殺しの場面で、嗜虐性が顔をのぞかせるときの凄みが増す。
暗い店先で、油と血にまみれ、女を掴み刀を振るう与兵衛の躯を支配するのは、
人殺しの衝動。昂奮。刺戟。
ぞくぞくした。

七月大歌舞伎 夜の部 @松竹座

2007-07-24 | 歌舞伎
<鳥辺山心中>
旗本の菊池半九郎と祇園の遊女のお染の心中話。
半九郎を愛之助、お染を孝太郎。

この半九郎という男がとても良かった。
なんだかとっても普通。普通のかっこよさがある。
誠実で武骨なんだけど、それをつまらなく見せないのがすごい。
役者の力なのかな。

半九郎が酒の席上の口論から手をかけてしまう
同僚の弟の役を薪車という役者がやっている。
よく知らない役者さんなのだけど、なんかすごく初々しい…
精一杯頑張っております! みたいな気合いがひしひしと
感じられてですね、それがからっからと空回ってる感じ。
この一直線な感じが役の性根なのか、役者の気合いなのか、
ちょっと判断つかないですが、とても面白かった。
役自体にも若さ故の青臭さ、潔癖さがあるので、
うまくはまっているのだと思います。
また愛之助演じる半九郎がその青臭さを、うまく受けて立つんだなー。

しかし、この遊女がですね、どうにも気に食わん。
座敷に出た日から、半九郎が通い詰めているから、
他の客を知らん、汚れを知らぬ純粋な女、みたいな設定。
なんなんだ? それは。
で、そんな半九郎がいなければ、この先勤めも出来ないから、
一緒に死にたい、だと?
半九郎が家宝の刀を売ってまで、助けてやりたいと思える女だろうか。
純真というよりはただのカマトトに見えるしさー。
いや、自分でも何に怒っているのかはよくわからないのだけど。

<身替座禅>
恐妻家の男が妻の眼を盗んで何とか浮気をしようとするけど、
バレて怒られる、という話。
なんか、もう微笑ましいとしか言い様のない話だけれども…

恐妻家の男、山蔭右京に片岡仁左衛門。
以前は遊び人でならしたけど、今は恐い妻に頭が上がらない、
といった感じがなんとも可愛らしい。
色っぽさも残しつつ、所帯も感じさせる絶妙の雰囲気が素敵。
この妻、玉ノ井も見た目恐いのに激しく嫉妬して可愛いんだよなあ。
大体、立役の役者がやる役だから、余計に面白い。
しょっちゅう演じられる理由がわかる。

長くなったので、分けます。

七月大歌舞伎 昼の部 @松竹座

2007-07-23 | 歌舞伎
<鳴神>
数ヶ月前から、鳴神上人を海老蔵がやると聞いて私は、楽しみにしていたわけですよ。
……そりゃあ、鳴神自体、見てみたい演目だったし、
代役の愛之助も好きですけれどもさ。ああ。

朝廷に約束を反古にされ怨んだ鳴神上人が京都北山の滝壺に竜神を封じ込めたため、
雨が降らず日照り続き。
そんな中、鳴神上人のもとに訪れたのが雲の絶え間姫という美女。
そして姫の誘惑にあっさりと堕ちる鳴神上人。
しかし、実は雲の絶え間姫は朝廷が送り込んだ女で、
女の色香で惑わし、鳴神上人の神通力をなくしてしまおうという作戦。
それを知って鳴神上人は大激怒、というお話。

ちょっと歌舞伎以外じゃありえんってくらい都合良くあっさりと堕ちますね。
鳴神上人ってのは良い男の役だと思うのですが、
初めて女を触ったとかいう、冗談でしょっていう設定。
まあ、女人禁制のお坊さんですからね。
でもあっさり色香に迷うのだけど。
この鳴神上人と雲の絶え間姫とのやりとりはあからさますぎて
私は若干ひき気味でした。

前半のゆったりとした感じから一転、後半は雲の絶え間姫に騙されたと知った
鳴神上人が怒り狂って、暴れ回る。
前半との艶事めいたところと後半の荒々しい立ち回りとみどころが多い演目。
真面目なのか冗談なのか。男が初心すぎるのか女が手練なのか。
そんなすべてを、歌舞伎だもんね、の一言で片付けたくなるような、
面白いお話でした。
ただ、残念ながら、雲の絶え間姫にそこまであっさりと男を落とす程の
魅力を私は感じなかったかな。

<橋弁慶>
京の五条橋で武蔵坊弁慶と牛若丸が出会うエピソードの舞踊。
残念ながら、ああ踊っているなあ、とぼーっと眺めていただけなので、
それほどの印象はないのですが…

<義経千本桜・渡海屋 大物浦>
義経千本桜のうちのこれは二段目。
義経千本桜というと狐のイメージが強いんだけど、
それは長い演目のうちの一部なのね。

平家と源氏の歴史的な人間関係が今ひとつ掴めていないので、
ぴんとこないのだけど。
船頭に身をやつし、平家再興のチャンスをうかがう平知盛が
源義経を打ち取ろうとしたが、返り討ちにあう、という話…?

しかし何で義経を? 義経ってこの時はすでに源頼朝と対立していて、
九州を目指そうとしていたのに、討ち取ったところで、
平家再興にはつながらない気がするんだよね。
まあ、戦でさんざんやられた仇って事なんだろうか。
しかも義経は安徳帝を守るとか、言ってるけど、
自分がまず追われている身じゃん、という疑問が…
義経千本桜の長い話の中ではうまく繋がっているのかもしれん。

前半で見せるいなせな船頭さんから一転、重厚な武将に変わる平知盛を片岡仁左衛門。
最後、満身創痍で碇の綱を身体に巻き付け、碇ごと海中へと身を投げる場面は
本当にもう圧巻。鬼気迫る様子に引き込まれる引き込まれる。
実は途中の典侍の局と安徳帝の場面はうとうとしてしまったのだけど、
知盛の最期の場面だけでも見る価値がある気がする。

染模様恩愛御書 @松竹座

2006-10-10 | 歌舞伎
染模様恩愛御書 @松竹座

染模様恩愛御書(そめもようちゅうぎのごしゅいん)という歌舞伎を観た。
これは主題が衆道(男色)を扱っているということもあって、長らく上演されていなかったのだとか。
普通の歌舞伎でも男が女役を演じているのだし
男同士で恋愛のお芝居しているようなものじゃん、と思うのだけど、
やっぱりストーリー上で男同士の恋愛となると問題があるものなんだろうか。

市川染五郎と片岡愛之助主演。
愛之助演じる印南数馬は、年の頃は15、6。女と見紛う容姿の美童。
いと美し。
最後の大火事の演出もなかなか凝っていて、迫力があった。

ただ、なんとなく男同士の恋愛というのを茶化している雰囲気はあった。
正面から取り組み過ぎると受け入れられにくい、と判断したのか、
もともとそういう話、演出の芝居なのかわからないが、
演技を過剰にして、わざと笑いを誘っているように見受けられた。
まあ、これはこれで良いんだろうけどね。
ちょっと引っかかりを感じたのも確か。

それと「肝臓、腎臓、大腸、三つ揃って勧進帳」はないわ…
小梅太夫とかハンカチ王子とかはともかくとして。

十六夜清心

2006-01-04 | 歌舞伎
十六夜清心  @松竹座

新年早々、寝坊をした。
起きたら、開演時間だった。
一瞬、軽いパニックに陥って、ああ、もう行くのやめようか、なんて血迷ったりもした。
結局、1幕目の源平布引滝はあきらめたけど、
十六夜清心には間に合ったので良かった。

新春から本当にめでたいというか、もう、寿!と叫びたくなるというか。
美しい=良いという図式しかない私にとっては最高。
仁左衛門の清心も玉三郎の十六夜も。
しかも、幾重にも絡み合った因縁も面白い。
前半の美しい心中の場面と後半の悪人になった強請の場面の差も面白い。
正月から今年一年のテンションを上げてくれる芝居だった。

やっぱり源平布引滝も観たかったなあ...
愛之助が大活躍だったみたい...

文楽を観に行く

2005-11-16 | 歌舞伎
国立文楽劇場に「本朝廿四孝」を観に行った。
この劇場は黒川紀章の設計。
モダンなんだけれど、伝統も感じる建物。

「本朝廿四孝」は武田信玄と長尾(上杉)謙信の勢力争いを
題材にした時代物の演目。
午前、午後の通し狂言なのだけど、午後の部だけを観た。
午後の部は二段目と四段目が演じられる。
これは八重垣姫と武田勝頼と腰元濡衣の恋愛的な要素が多い。
四段目の十種香の段と狐火の段は歌舞伎でも観た事がある。

正直、なんで歌舞伎で十種香と狐火だけが演じられているのかわかった。
はっきり言ってしまうと、他は地味・・・
本朝廿四孝を観に行こうと決めて、一応ストーリーも頭に入れて
気合いを入れて、コーヒーを飲んで、臨んだにも関わらず、
恥ずかしながら、3分の1ぐらい眠ってしまった・・・
しかもお金がなくて2等席にしたものだから舞台が遠くて、
いまいち人形の迫力も感じる事が出来なかった。
やっぱりかぶり付きで観れば良かった。
ただ、観ているうちに人形を操っている人が気にならなくなり、
人形それ自体が動いているように見えてくるのは不思議でおもしろい。

またおもしろそうな演目があれば観に行きたい。
今度はかぶりつきで。

役者の色気

2005-04-21 | 歌舞伎
NHKの芸能花舞台で片岡仁左衛門、片岡孝太郎、片岡千之助、と親子3代の舞台をやっていた。
もう眠ろうと思っていたところだったのだけど、
好きな仁左衛門だし、と思って最後まで見てしまった。
それに愛之助も少し出ていたので、なおさら。

演目は舞踊で「お祭り」。江戸のものだろうな、これは。
途中、孝太郎の千之助の初舞台の口上もあったりして、
なんだか微笑ましい、とか思ってしまった。

仁左衛門はやっぱりカッコ良いなあ、とほれぼれと眺めていたのだけれど、
インタビューでは、人の良さそうな、孫が可愛くてしょうがないといった
おじいちゃんなのだ。ちょっとかわいがりすぎではないか。
この人が舞台だとなんであんな色気があるかなあ、と不思議になる。

色気って何か、と考えると、それは「悪い」要素だと思う。
どこかに、こいつ悪いな、と思わせる要素がにじみ出ていないと
色気にならないような気がする。
人が善いと言われる人には色気がない。
だから、舞台以外の時の仁左衛門からは色気を感じないのだ。
それが舞台に立つともう、なんというか、こう、色気がある。
「桜姫」の釣鐘権助をやるところを見てみたいなあ...
昔、助六を見た事があるのだけど、それはもう素晴らしい男前だった。

役者によっては、舞台以外の時にも色気をにじみ出している人もいるけど。
普段、そういうのを見せていない方が、より役者として凄い気がしてしまう。
孝太郎も同じような顔をしているのに、どこか違うんだよなあ。
品よくおさまってしまって、凄みとかは感じない。
まあ、女形っていう事もあるんだろうけど。

さて、千之助くんはどうなるんだろう。

襲名って凄い事だったんだ...

2005-03-13 | 歌舞伎
BSで2週に渡って18代目中村勘三郎襲名の特別番組があった。
合わせて6時間もあって、録画はしたもののまだ全ては見れていない。
とりあえず、今歌舞伎座でやっている襲名披露公演から
3月10日のものという「口上」と「一條大蔵譚」を見た。

今までいくつかの口上を見てきたのだけれども、
まあ、あまり良く分からずに見ていた事もあって、
どうってことも思わなかったのだけれど、
口上ってこんなに良いものだったのかー。
襲名ってこんなに凄いものだったのかー。

なんというか、こう、ぐっとくるものがあった。
左団次の毎回、明らかに受けを狙ってくるものでさえ、
感慨深いと言うか...

17代目勘三郎を知らない私でも
こんなに感動しちゃってるんだから、
先代を知っている人なんか、泣いてしまうんじゃないだろうか。
ここに七之助もいられたら良かったのにねえ。
私には勘太郎はいまだに平助に見える。

「一條大蔵譚」も面白かった。
1月に鴈治郎のものも見たけど、勘三郎の方が分かりやすい感じだった。
(単に、ストーリーをすでに知っていたから、という気もするが)
阿呆ぶりがお上手で。
正気とのギャップが良いねえ。

勘三郎がやると古典歌舞伎でもなんか分かりやすい気がする、
と前から思っているのだけれど、やっぱり工夫をしているじゃないだろうか。
もちろん型は守ってて、その上で何かが、ある。

お京が玉三郎、鬼次郎が仁左衛門、っていうのも良かった。
ただ、こんな美男美女がお家復興を志している感じはしなくて
和事の道行にも見えたけど。
やっぱり歌舞伎は役者で見るものだわ、私にとっては。
好きな役者が出ていると、それだけで楽しい。

3、4、5月と歌舞伎座で、そのあと7月に大阪かー。
待ち遠しい。
その前に4月の籠釣瓶が見たいなあ。
前にも見た事あるけど、すごく好きな演目だし。
七之助も出るようだし。東京は良いなあ。

今月の南座は行けそうにない。残念。