douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌

2007-06-29 | 美術
彼はいったい何者だ?

フランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンの展覧会。
世界各国を旅して、撮り続けられた写真は、
歴史的な記録としての価値もあるのだろうけれども、
カルティエ=ブレッソンの表現として鮮烈な印象を与える。

「決定的瞬間」とはこういうことなんだな。
本当に偶然? と眼を疑いたくなるような、
まさに奇跡的な一瞬一瞬が映し出されている。
写真の一枚一枚にストーリーがあり、リズムがある。

この人は一体、どんな眼を持っていたのか。
流れていく日常をこんな風に見逃さずに切り取るなんて。
そして、どんな存在だったんだろうか。
こんなに被写体である人々が自然に振る舞っているなんて。

白黒の写真なのに、その中で色鮮やかに、確かに
人間が生きていたんだなあ、なんて思わされてしまう。

ル・コルビュジエ展

2007-06-28 | 美術
ル・コルビュジエ展 @森美術館

20世紀を代表する建築家。ル・コルビュジエの建築、家具、絵画の展覧会。
まず入ってすぐのところにル・コルビュジエのパリのアトリエを再現した空間がある。
広い天井を持ち、日当りの良い居心地の良い場所だ。
ここで、必ず絵を描き、それから事務所にでかけたらしい。

ル・コルビュジエの描いた絵画も展示されていたけれど、
あまり時間がなかったこともあって、ほとんどスルー。
今回、一番の目当てであった、ユニテ・ダビタシオンの再現を見に行く。
これはル・コルビュジエの設計した集合住宅。
メゾネットタイプの住宅の内部を再現しているため、実際にスケールが体感できる。

何度か、写真で見てはいたけどこれは日本人からすればかなり広い。
日本人っていうより私にとっては、だろうか。
大体、ル・コルビュジエの提唱していた、モデュロールは
私にとってはまったく合わない寸法なわけだし。

それでも、なんか人が心豊かに住まうには、これくらいの広さが必要な気がした。
そしてそんな事を考えさせられるのが、
この東京を眼下に一望できる森ビルの最上階って事が、
なんだかすごく可笑しかった。

実際のユニテ・ダビタシオンは居住空間だけではなく、
一つの都市のように色んな施設が含まれているらしい。
ル・コルビュジエは多くの都市計画を提出し、
そして、その一部はインドなどで実現している。
都市を設計する。それは人々の生活を、人生を設計することにもなりかねない。
1枚の絵を描く手が多くの人々の未来図を描いているような気がして、
なんだか、少し怖かった。

Chocolate

2007-06-26 | 美術
深沢直人ディレクション Chocolate @21_21 DESIGN SIGHT

チョコレート。思えば不思議な食べ物。

このチョコレートについて色々なクリエイターが考えてみた、ていう企画展。
アーティストじゃなくて「クリエイター」なのね。
ここになんだかすごい主張を感じるのだけれど。

ちょっとでもチョコレートっぽかったらOKという作品たちが面白い。
どれも微笑ましくって、くすっと笑えたりして、なごむ。
ただ、チョコレートって甘いだけじゃないぞっていうとこも見せていて、
それは、カカオの原産地の現状だったりする。
カカオ99%のチョコレートが食べられたもんじゃないように。

チョコレートってイライラしている時に食べると落ち着く気がするけど、
そんな感じの企画展。
入り口でチョコレートを一切れもらえます。

スキン+ボーンズ展

2007-06-26 | 美術
スキン+ボーンズ展 @国立新美術館

副題に「1980年代以降の建築とファッション」とあるように、
建築とファッションの共通点を探った展覧会。
どちらもスキン(表面)とボーンズ(構造)から成り立ち、
人間を保護するシェルタの役割を果たす。

展示は最近のデザイナのコレクションから選ばれた服と、
建築の模型や設計図、写真などで構成されていた。
建築とファッションの構造やフォルムがどのように絡み合っているか、
ということが、とてもわかりやすく説明されていた。
確かに、そうやって説明されると両者には共通点があって、
接点があるのだなあ、と納得させられる。

ファッションは人間の第二の皮膚だと思う。
現在、服を着ない人間などいないのだから。
何を着るかによって、その人間性までもある程度判断されてしまう。
建築もしかり。第三の皮膚だろうか。
住宅にしてもオフィスにしても、
その環境で、建物で、判断されることは多いと思う。
そもそも人間を保護するものであった服と建物が、
いつのまにか人間を縛り付けるものになったのかな、と感じた。

人を構成する最も基本的なものであるスキン(皮膚)とボーンズ(骨)が
それだけでは人を支えられなくなってしまった。
だから、服や建築がそれを補っている。そういう風にも思えた。

展覧会自体、凝ったデザインの服や建築は見ていて楽しかった。
とても面白い展覧会だったと思う。
でも一方で、なんか違和感もあった。
冒頭で「国立新美術館は絵画、彫刻といった従来の美術作品だけでなく、
私たちに身近なアートの展示にもチャレンジします」とあるんだけど、
この建築やファッションが本当に身近かな、と。

好きなんだけど、アートと絡むと必ず名前が出てくるデザイナばっかり。
コムデギャルソンとかヨージヤマモトとかヴィクター&ロルフとか。
フセイン・チャラヤンやマルタン・マルジェラもアート寄りだし。
建築もフランク・ゲーリーとか伊東豊雄とかアートと結びつけやすい感じ。
こういうものを身近に感じて、暮らしている人がどれだけいるっていうの。
っていう、皮肉な気持ちにならずにいられなかった。