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douce vie

現代アートを中心に、色々と考えた事とかを日々綴っています。主に関西の展覧会の感想なども書いております。

最近読んだ本(建築関係で)

2008-11-10 | 
■『にほんの建築家 伊東豊雄・観察記』 瀧口範子 TOTO出版

2004年から2006年まで1年半ほど、伊東豊雄のまさしく観察記。
本当に観察しているかのように、行動や発言を記している。
途中、今までの経歴とか、所員についてとか、も織り交ぜてあって、とても面白かった。
フランスだのスペインだのチリだの、世界中を飛び回り、
コンペで戦う建築家の姿はかっこ良くて、まいりました。



これは、2007年にベルギーのブルージュに行ったときに撮ったもの。
その時は、面白いデザインだなー、としか思わなかった。
そして、銀座のミキモトや青山のトッズも、変わったデザインだ…と思っていたのだけど、
ただ、ああいうデザインにしたかったんじゃなくて、
構造と深く関わっている、というか構造そのものだっていうところが、面白かった。
あとは素材かな。
今まで、知っていたのは表現ありきの建築だった気がするので、
こういう構造や素材ありきの建築というものに、惹かれますな。最近では。

■『読んで旅する 世界の名建築』五十嵐太郎 光文社新書

建築と切り離せない旅。
建築好きは旅好き。きっと。
世界の名建築を訪ねて旅をした著者の、建築紹介かつ旅行エッセイ、みたいな。
読んで旅した気分にでもなろう、と思ったが、ただただ旅に出たくなっただけだった。
書かれている中で、行ったことがあったのは、ウィーンの「ウィーン郵便貯金局」と
ブリュッセルの「アール・ヌーヴォーの館(オルタ美術館)」。
行ったことがあると、「ああ、そうそう!」ってすごく納得できる。
やはり、建築は写真だけだとな、スケール感とか、色々…


ウィ-ン郵便貯金局。内部もモダンでした。


オルタ美術館。の一部をアップで。なんでかな、上手く撮れた写真がない。ここは。

■『新・都市論TOKYO』隈研吾・清野由美 集英社新書

汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田の5カ所の開発と現状についての、お話。
丸の内と六本木ヒルズしか、行ったことないわ…
行きたいような美術館やギャラリーがないから。
関西に住んでいると、東京の開発の数々が、なんだか遠い世界のことのようで、
「だから、何…?」みたいな気もする。
それが成功であれ、失敗であれ、対岸の火事かも。

内容はシニカルな隈節全開。
でも、清野さんはもっと批判してほしかったのか、
意外と隈さんが高評価を下すと、とまどっているような感じがおかしかった。
隈さんの文章はあいかわらず、曖昧でぼんやりしていたことを、
びしっとカタチにしてくれて、かつ問題点を教えてくれる、心地いいものでした。
こんなに、納得させられると、逆に、本当…?って疑いが生じるぐらいです。

■『建築探偵桜井京介 館を行く』篠田真由美 講談社

建築ミステリー桜井京介シリーズの作者による建築探訪エッセイ。
べつに桜井京介が行かなくても、普通にエッセイで良かったんだけど…
小説の架空の人物と著者の会話って、あまり好きじゃない。
とか言いつつも、近代日本の洋風建築が好きなので、さらっと楽しく読みました。
元祖建築探偵(ミステリーとかじゃなく)藤森照信さんのエッセイに近いかな。
桜井京介たちさえ出て来なければ。

バラガキ

2005-10-02 | 
バラガキ  中場利一著 講談社文庫

新選組、土方歳三の話。
茨のような鋭い棘を持った悪童、触ると棘で怪我をする危ないやつ。
だからバラガキ。
池田屋事件までなので、悲劇的な部分はなくて安心して読めた。
とはいっても、この後の悲劇を知っているので、
ひりひりとした緊張感はあるのだけれども。

この作者の「岸和田少年愚連隊」は読んだ事がないので、
良く分からないのだけれども、多分岸和田の不良的な少年の話かと思われる。
トシもそんなノリで描かれている。
ケンカが強くて、女にもてて、成り上がってやろうという心意気がある。
前に読んだ「燃えよ剣」と似ているような気がしたけれど、
モデルが同じだから、どうしてもこうなるんだろうなあ。

本の表紙が面白い。
洋装の土方歳三の写真に角だの怒りの四つ角だの落書きしてあるデザイン。

今年の大河ドラマも終わろうとしているのに、未だに去年の大河ドラマをひきずっている。
来年、土方歳三のその後のドラマを「新選組!」とほぼ同じキャストでNHKがやるらしい。
これが今から何よりも楽しみで楽しみで。
とはいえ、土方歳三以外で好きだった人ももうあんまり生きてないもんなあ。
生きてる中では斎藤一(オダギリジョー)ぐらいだ。
でも会津がどれくらいストーリーに絡むかによるだろうな。
生きてても永倉新八や原田左之助はもうストーリー的に出ないだろうし。
後は島田魁と榎本武揚がわりと主要人物になると予想されるけど...
回想シーンに期待。
ああ、でも草ナギ剛は榎本武揚がはまるような気もする。
早く見たい。ていうか新選組!を再放送してほしい。

これぞ娯楽

2005-08-16 | 
きっかけは浅田寅ヲだった。
浅田寅ヲの描いたものはとりあえず買え、というきまりがあるので、
「甲賀忍法帖・改」を買って読んだ。
山田風太郎の「甲賀忍法帖」を漫画化したものだ。
山田風太郎の名前は知っているのだけれど、
小説は読んだ事がない。
なんだか面白そうなので、読んでみる事にした。
(実は漫画だと所々よくわからなかったっていうのもある)

面白い!こんな面白いの見逃してたのかー、と悔しいぐらいだ。
良い感じにバカっぽくて、なんとも好み。
出てくる伊賀と甲賀の忍者の術もアクションも
ぶっとんでいて、笑える。
でも、ロミオとジュリエット的な悲恋もある。
涙あり(泣いてないけど)、笑いあり(笑った)で
一気に読んでしまった。

続けて「魔界転生」も読了。
上下巻で長いのに、これも一気に読めた。
最初の方のぞくぞくと歴史上の剣士が
転生していく様なんて、笑えて笑えて。
そして柳生十兵衛が無敵すぎて、また笑える。

そして手元に「八犬伝」が控えている。
まだまだ著作はたくさんあるみたいだ。
この秋はこれだけで退屈せずにすみそうだ。

そうだ、そろそろ公開される「SHINOBI」の原作は「甲賀忍法帖」じゃないか。
見に行かなければ。

「薔薇幻視」

2005-08-12 | 
中井英夫全集11 薔薇幻視  中井英夫著

中井英夫がフランスで取材した「薔薇幻視」と「香りへの旅」という
薔薇と香りの虚用書。
虚用書。なんて素敵な言葉なんだろう。

綺麗なカラー写真もたくさんあって、ページをめくるだけで
美の世界に誘われているような嬉しい気持ちになる。

薔薇園で若い盲目の女性が薔薇の香りをかぐ様を見て、
ルーブル美術館でサモトラケのニケを見上げて、
調香師にジャスミンの原液をしみこませたムエットを差し出されて、
またカンヌへ向う列車の中で窓外に地中海を見て、
中井英夫は泣く。

あまりにセンシティブ過ぎやしないか、と鼻白みつつも、
その実は、けして私が持ち得ない美に対する鋭すぎる感性が
羨ましくて仕方がない。
美に選ばれた人間がいるとするならば、
それはきっと中井英夫のような人なんだろう。

美に飢えて、毎日を喘いで過ごす私は、
少しでも喉をうるおしたくて、あさましくむさぼるように
この虚用書を読んだのだった。

「黒龍の柩」

2005-04-17 | 
黒龍の柩 北方謙三著 毎日新聞社

新選組土方歳三の話。
池田屋事件から五稜郭まで。

歴史小説を読み慣れていない私には
というか歴史の知識に乏しい私には
どこまでが史実でどこからが創作なのかよくわからない...
そんな私でも、それはないだろっていう展開になっていくのだけど
いちいちそんなこと言うのって多分野暮だし、小説として考えたら、すごく面白い。

去年1年間「新選組!」を見てきて
すっかり新選組好き、いや土方歳三好きになってしまったので
土方歳三が主役ならそこそこのものは面白がってしまう気もするんだけど。
書く方も相当に難しいんだろうなあ。
実在の人物だし、すでに傑作が書かれているんだし、
それでもあえて、今までよりも面白いものが書けるというよっぽどの自信がなくちゃ
手を出せないんじゃないか、と思う。

これはフィクション色が強くて面白かったけど、
土方歳三のキャラとしては「燃えよ剣」や大河ドラマ「新選組!」の方が好みだな。
もうちょっと新選組関連の本を読みあさってみよう。

「胡蝶の鏡」

2005-04-16 | 
胡蝶の鏡 篠田真由実著 講談社

建築探偵桜井京介シリーズ。
第3部の始まりって3部構想だってこと事体に気付いてなかった...
「未明の家」から「原罪の庭」が第1部。
「美貌の帳」から「失楽の街」が第2部。
そしてこの「胡蝶の鏡」からの5冊で第3部。完結。ということらしい。
1年に1冊と決めているそうで、完結まで後4年かかるのね。

確かに1冊1冊ミステリとして完結する形をとりながらも
京介を謎めかしてひっぱっているなあ、とは思っていたのだけど。

桜井京介というキャラクタはとても魅力的で、そこにもちろん惹かれるんだけど、
このシリーズに関しては建築の方に興味がいく。
キャラ萌えならぬ建築萌えか。(「萌え」が何かよくわからないけど書いてみた)
とはいえ、「挙動不審」な京介にはしっかりと笑わせて頂きました。

今回はベトナムが舞台だったので、
日本の近代西洋建築好きな私にはイマイチ入り込めないところがあった。
いや、そもそもこのシリーズのおかげで近代西洋建築に興味を持ったんだった。
あれ?どっちが先だったかなあ。もう10年くらい前の事だから覚えてない。
ともあれ、やっぱり舞台は日本の方が良いなあ。なんとなく。

もう同じシリーズを10冊も読んでいると目新しい感想も生まれなくて
最終巻でどう思わせてくれるかだなって気がする。
すでに私の中ではほとんどミステリじゃなくなってるし。
いつも通りおもしろかった。

「探偵伯爵と僕」

2005-04-14 | 
探偵伯爵と僕  森博嗣著 講談社

「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」
というシリーズ(?)から出ているもの。
装丁に凝っていて値段が高いのが特徴か。

新太は夏休みに探偵伯爵に会った。
夏なのに背広を着て鬚をはやしたちょっと変なおじさん。
友達のハリィが行方不明になり、新太は伯爵と一緒に事件を探りはじめる...

ネタばらし警報

途中までは子ども向けだろうと思っていたので
ハリィは無事に見つかるのだろうとタカをくくって(?)いたのだ。
そんな予想は見事に裏切られて、この結末は...そして真相はあまりにつらい。
でも、そうだよなあ。現実はこれよりもつらい事がたくさん起こっている。
不思議な事に、現実のニュースをいくら見ても感じない痛みが
この小説によって感じるのだ。

最後の伯爵の一言「その人間の醜さから目を遠ざけてはいけない」
というのが、ひどく心に残る。
途中の新太と伯爵の会話や、新太の独白にもいたるところに
このメッセージは込められている。

なにか事件が起こると、犯人の特殊性にばかり目が行き
あの人がおかしいんだ、変わっているんだ、という事で済ませがちだ。
しかし、そういう「おかしい」事を考え、実行してしまう人間が
確かにいる、という事から目を逸らせてはいけないだろう。

解説のような...「不夜城」

2005-04-12 | 
不夜城  馳星周著 角川書店

先日観た映画の原作ということで読んでみた。
ほとんど映画の解説のようになってしまったのは
順番の問題で仕方がない。
でも先にこれを読んでいたら、もっと映画の評価は低かった。
ああ、そういうことだったのね、とあちらこちらで納得。
映画よりもはるかに切れ味の良いストーリーだった。

でも、なんていうか。読んだ。面白かった。終わり。
っていうそれ以上の感想は出てこないんだよなあ。
ハードボイルドだから?(偏見)
あ、そう?大変ね。だから?みたいな冷めた感じ。
いや、面白いんだけど。ストーリーとしては。ほんとに。

住むということ

2005-03-21 | 
ル・コルビュジエの勇気ある住宅  安藤忠雄 新潮社

20世紀建築の巨匠ル・コルビュジエのどこが、なにが凄いかを
「住宅」を中心に安藤忠雄が語った本。

ル・コルビュジエ。名前は知っているのだけれど、
どんな人で、どのような建築を作った人なのかは知らなかった。

建築材料にコンクリートを使ったり、
壁に頼らない構造にして窓を大きくとったり、
とかいう手法は現在からしてみれば、見慣れてしまっていて、驚きは感じない。
それは当たり前で仕方の無い事なのだけど、
それでも、住んでみたいなあ、と思わせる魅力的な住宅だ。
とくに集合住宅であるユニテ・ダビタシオンは良いなあ。

安藤忠雄の仕事がル・コルビュジエにかなり影響を受けている、
という事が、よくわかって、そこもおもしろい。

建築というと公共施設などの大きな建築物を指す事が多いのだろうけど、
私にとっては個人住宅のイメージの方が強い。
初めに都市計画のようなものがあって、
整然と住宅が並べられたような新興住宅地にはちょっと息苦しさを感じる。
住宅が集まって、そこに自然発生的に出来ていく街の方が良い。
それはやっぱり人間の数だけ「住む」形があるからで、
一人の建築家が、その全てを網羅する事は出来ない。
じゃあ、建築家って何?
とか、そんなことをつらつらと考えた。

ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」という言葉を残している。
安藤忠雄はこの「機械」という言葉を
「あくまで人間らしく”住まう”ための機能、もっともすぐれたムダのない空間」
を意味しているのではないか、と書いてある。
私はこの「機械」という言葉は「人間の機能を補うもの」という気がした。

色んなものにありがとー!

2005-03-21 | 
『エロイカより愛をこめて』の創りかた  青池保子 マガジンハウス

私の大好きな漫画である青池保子の「エロイカより愛をこめて」が
どのようにして創られたかを、著者本人が教えてくれるという、
ファンにとってはもう、ありがとー、と言うしかない本。

ネームの創りかたや、アシスタントの話や、
デビューの話や、取材旅行の話などがつまっている。
文章も上手くて読みやすい。

「エロイカより愛をこめて」は色んなものからインスパイアされ
巧妙に組み立てられ、出来上がっている。素晴らしい。
これらがなかったらエロイカは出来なかったのかも。

007。見た事無いけどありがとー。
レッドツェッペリン。聞いた事無いけどありがとー。
オスカー・ワイルド。「ドリアン・グレイの肖像」私も好きだ。ありがとー。
スパイ映画。見た事無いけどありがとー。
ハードボイルド。よくわからないけどありがとー。

そして青池保子さんありがとー。