通夜に行くまでオレは血も涙もない人間だと思っていた。
寂しさや悲しみよりも悔しさが先立っていたから
お別れの気分になれなかった。
ただそれだけだった。
通夜会場に入り、東の空を見たら
かすかに虹がかかっていた。
なんと皮肉な・・・・・・
読経が始まるとオレの心は壊れた。
実感がわくというのはこういうことを言うのかとも思った。
もう言い合いもできない、会話もできない
笑顔も見れない。
通夜が終わり、お顔を拝見することができた。
優しい顔で眠っていた。
今にも「ドッキリだ」と言って起き上がるんじゃないかと思うぐらい。
でも、動かなかった。
「何のうのうと寝てんだよ」
そう言ってやりたかった。
安らかに、ゆっくりお休みくださいと祈った。
参列者がほとんど知り合いということもあって
いろいろと話をしたかったが
さらに心が壊れてしまうと思い
申し訳なくも早々に失礼させてもらった。
帰りの車の中で回想に浸っていた。
あの笑顔、怒った顔、考える顔、疲れた顔、笑い声・・・・・
思い出をありがとうございます。